みなさん、こんにちは!
今朝は、IEA(国際エネルギー機関)が発表した最新報告書「Renewables 2025 ― Analysis and Forecasts to 2030」に関するニュースを取り上げたいと思います。
世界的な再エネ拡大のペースを見直した今回の報告では、2030年までに再エネが世界最大の電源になる一方で、成長の“量”よりも“運用の質”が問われるフェーズに入っていることが示されています。
世界の再エネ動向 ― 2030年には発電量の45%を占める見通し
IEA報告のポイント整理すると下記です。
- 2030年までに世界の再エネ発電容量は
約4,600GW増加(2022年比で2.6倍) - 再エネが世界最大の電源となり、発電量の約45%を占有
- 増加分の約8割を太陽光発電が占める(大規模・分散型の両面で拡大)
- 風力は洋上で成長加速するが、
米国の政策変更・供給網制約で27%下方修正 - COP28で掲げた「再エネ3倍化目標」には未達の見込み
- 変動型再エネ(VRE)の増加に伴い、
出力制御と需給柔軟性の確保が課題化
“出力抑制”が示す次の壁
注目すべきは、IEAの次の一節です。
変動型再生可能エネルギー(VRE)の導入拡大に伴って、多くの国で出力が抑制されており、より需要側の柔軟性を確保した施策の重要性を強調した。
つまり、
再エネの拡大フェーズが“量”から
“運用最適化”に移行している
エネルギーシステム全体での“需給調整力”が
ボトルネックになっている
この2点が、今回の報告の核心です。
「制御できる再エネ」への転換
IEAの分析が示すように、今後の焦点は“設置拡大”から“制御可能な運用”へ。
特に太陽光では、昼間の発電ピーク時に余剰電力が発生し、出力制御が頻発しています。
この課題に対して、今後重要になるのが次の3点です。
- 蓄電池による出力の時間シフト
- デマンドレスポンス(DR)による需要側調整
- VPP/EMSによる地域単位でのエネルギー統合制御
つまり、「発電所の数を増やす」から「電力の流れを制御する」へ。
技術的な進化が求められています。
サプライチェーンと制度の遅れ
COP28の「3倍化目標」に未達という現実の背景には、制度面の遅れもあります。
- 希土類など重要鉱物が特定国に偏在
- 系統接続・容量市場・需給予測などの制度的基盤の整備が遅れている
- 投資環境や許認可制度が再エネ拡大のスピードに追いついていない
IEAはこの点を踏まえ、「エネルギー供給の地産地消」と「サプライチェーン多様化」を両立させる方向性を提言しています。
地域EPCにとっての示唆 ― 現場から“柔軟性”をつくる
EPCとして現場レベルで考えると、次の3つの方向性が重要です。
ソーラーシェアリング+蓄電池の組み合わせによる
出力制御緩和
地域EMS/マイクログリッドによる
電力の地産地消モデル構築
BESS×AI制御による需給予測と
リアルタイム運転最適化
再エネ導入が「質の競争」に移る中で、地域EPCが果たす役割は“建設者”から“運用設計者”へと変化しています。
「再エネ最先端の地・福島」からの発信
福島県も「再生可能エネルギーの最先端の地」として多様な実証が進行中です。
先日も、県が支援するバイオエタノール車の公道走行(100km達成)がニュースになりました。
地域での実装力を高める取り組みが、まさにIEAの示す“柔軟性のある再エネ運用”の方向性と一致しています。
世界の潮流は「拡大」から「統合」へ
IEA報告が示す通り、再エネの主戦場は“量”から“運用の質”へシフトしています。
出力制御を減らし、地域の需要に合わせて再エネを制御する仕組み――。
それを設計できるかどうかが、これからのEPCの競争軸になるでしょう。
「発電する力」から「運用を設計する力」へ。
今、再エネの本当の進化が始まっています。
