みなさん、こんにちは!
今日は、農林水産省が2026年1月23日に公表した「望ましい営農型太陽光発電の考え方(案)」について、今後の営農型案件に大きな影響を与える基準の内容を共有します。
農林水産省は2026年1月23日、有識者会議で「望ましい営農型太陽光発電の考え方(案)」を公表しました。基本理念として、適切な営農継続を前提とした農地の一時転用であり、規定の収量減少の恐れがなく、発電設備は簡易な構造で容易に撤去できることを求めています。
「遮光率30%未満」が示す営農優先の明確化
農水省が示した基準案は、営農型太陽光における優先順位を明確に打ち出しています。
基本理念
基本的な考え方
- 営農型太陽光は適切な営農の継続を前提として特定的に農地の一次転用を認めるもの
求められる条件
- 規定の収量減少の恐れがなく発電設備は簡易な構造で容易に撤去できること
将来への要求
- 将来にわたって食料生産の基盤としての機能が維持されること
- 発電事業者だけでなく農業者の所得向上や経営に資すること
- 地域と共生し地域活性化に資すること
この基本理念が、すべての要件の根底にあります。
発電設備の要件──「遮光率30%未満」
将来の営農可能性
- 発電設備については将来にわたって一般的な農業が可能な設備であることを求める
具体的な基準
- 遮光率が30%未満であること
- 最低地上高・支柱間隔が機械作業に支障ないものであること
この「30%未満」という数字が、重要な分水嶺となります。
千葉大学研究との符合
先日共有された千葉大学 の研究では、「水稲は遮光率27%で収量が約5%減にとどまった」と報告されています。この結果は、一定程度の遮光であれば収量への影響が限定的であることを示しています。
そのため、「遮光率30%未満」という基準は、経験則ではなく科学的データに基づいた合理的な水準と評価できます。
さらに、出光興産 が千葉県で実施した営農型太陽光発電の実証でも、米の収量や品質に問題がなかったことが確認されています。
研究データと実証結果が一致している点は重要です。この整合性が、遮光基準の実現可能性と現場適用性を裏付けているといえます。
推奨品目「コメ・麦・大豆」が排除する作物
推奨品目の明示は、従来の営農型太陽光に大きな影響を与えます。
推奨品目の要件
栽培品目の条件
- 地域で栽培され販売ルートが確立しており原則的に毎年、収穫可能であること
推奨品目
- 遮光環境下で一定以上の収量確保が確認され、食料安全保障に資するコメ・麦・大豆
この「食料安全保障」という視点が、鍵を握ります。
排除される作物──観賞用・日陰好み
サカキ・シキミ等
- 現在、営農型太陽光で多く見られる観賞用で毎年の収穫に適さない作物
- 望ましいものではないとの位置づけに
ミョウガ・キノコ類等
- 日陰を好む作物
- 遮光率30%未満を求める場合、栽培しにくくなる
従来の営農型太陽光では、遮光環境に適した作物が選ばれてきました。発電設備との相性が良く、安定した栽培が可能であることが主な理由です。しかし、こうした作物の中には、新たな基準のもとでは対象から外れるものも出てきます。
その背景には、農林水産省の視点があります。営農型太陽光を単なる農地活用策ではなく、食料安全保障に資する仕組みであるかどうかという観点で評価し、「食料安全保障に資さない」と判断される作物については慎重な姿勢を取る方向へと舵を切っています。
この方向転換は、営農型太陽光を「発電と両立できる農業」から、「食料政策と整合する農業」へと位置づけ直す動きであり、その性格を大きく変えるものといえます。
営農者要件の厳格化──「地域計画への位置付け」が生む参入障壁
営農者要件の厳格化は、参入障壁を高める可能性があります。
営農者の要件
地域計画への位置付け
- 営農者は地域計画に位置付けられた者
実績の要求
- 栽培品目について一定以上の生産・販売実績などを持つ者
この要件が、新規参入を困難にします。
従来との違い
これまでの営農型太陽光では、発電事業者が農地を借り受け、営農部分を地元農家に委託する形が一般的でした。そのため、発電と営農の役割分担を比較的柔軟に設計でき、多様な組み合わせが可能でした。
しかし新基準では、営農者が「地域計画に位置付けられた者」であることや「一定以上の生産・販売実績」を有することが求められます。この条件により、新規参入者や小規模事業者は事実上参入が難しくなる可能性があります。
こうした厳格化の背景には、「地域との共生」を重視する明確な意図があります。単なる発電事業の付随的な営農ではなく、地域に根ざし、継続性と実績を伴う持続可能な営農型モデルへと転換させることが狙いといえます。
地域共生の具体的要件
要件
- 地域の農業者や周辺住民をはじめとした地域の合意が得られていること
- 発電事業者から営農者などに対し適正に利益を還元すること
- 撤去費用の担保が確実であること
- 土地改良事業の施行や農業経営の規模拡大などの施策の妨げになる恐れがないこと
これらの要件は、営農型太陽光を単なる発電プロジェクトではなく、地域と調和した持続可能な取り組みとして成立させるための枠組みといえます。
制度見直しの方向性と業界からの懸念
農水省の案に対し、業界からは懸念の声も上がっています。
制度見直しの方向性
基本方針への明記
- 「望ましい営農型太陽光発電の考え方」を「農山漁村再生可能エネルギー法」に基づく
基本方針に明記 - 国としての考え方を明確化
自治体の判断権限
- 自治体などが国の基本方針に沿って望ましい営農型太陽光の適否を判断できるよう
関連制度を見直す
制度の目的は、営農型太陽光を適正化することにあります。発電と農業の両立をより確実なものとし、地域や農業政策との整合性を担保するために、要件や手続きを明確化したものと位置づけられています。
しかし実務の観点から見ると、この制度化は実質的な規制強化といえます。参入要件や合意形成、利益還元、撤去費用の担保などが明文化されることで、従来よりも高いハードルが課されることになります。結果として、事業スキームの設計段階から地域性や持続性を強く意識しなければ成立しない構造へと移行していきます。
ソーラーシェアリング推進連盟の指摘
黎明期への配慮
- 営農型太陽光が黎明期であることを考慮すれば、
品目、生産性、生産者、地域共生については、足切り的なものになってはならない
遮光率の一律設定への懸念
- 遮光率・日射率制限の設定は陰を好んだり、日陰を必要とする作物を除外するため
一律での設定を避けるべき
代替提案
- 優良事例の普及数値目標を設定すべき
この指摘が意味するのは、営農型太陽光の健全な発展を図るうえで、単純な規制強化よりも、優良事例の横展開を通じた質の向上を重視すべきだという視点です。成功事例を積み上げ、その実証データをもとに制度を磨き上げていくアプローチのほうが、現場の実態に即した発展につながるという考え方です。
また、作物ごとに最適な遮光率は異なります。生育特性や地域条件によって必要な日射量は変わるため、一律に30%未満とする基準は分かりやすい反面、技術的には成立し得る多様な営農型の選択肢を狭めてしまうリスクもはらんでいます。発電効率と農業収量のバランスをきめ細かく設計できる可能性を、制度が先回りして制限してしまう懸念があるのです。
この議論の行方は、営農型太陽光を「慎重に制限する制度」として運用していくのか、それとも「実証と技術革新を取り込みながら進化させる制度」として設計するのかを左右します。今後の制度設計は、リスク管理と技術的可能性のどこに重心を置くかによって、大きく方向性が分かれることになります。
EPC事業者としての4つの戦略的対応
農水省の基準案は、今後の営農型案件の設計・提案に大きな影響を与えます。
「遮光率30%未満」を前提とした設計の標準化
この標準化により、基準対応の案件を迅速に組成できます。
基準の確定を見据えて
- 遮光率30%未満という基準が正式に採用された場合、
営農型案件の設計条件はこれまで以上に明確に
設計指針の整備
- パネル配置・架台高さ・支柱間隔などを30%未満に収める設計指針
- あらかじめ整備しておく
- 案件化のスピードと安定性を高める
可動式架台の活用
- 出光興産が実証している可動式架台と両面受光パネルの組み合わせ
- 時期や日射条件に応じてパネル角度を調整
- 遮光率を動的に最適化する技術
- 有効な対応策の一つ
発電量低下への対応
- 遮光率を抑えることにより発電量が低下する可能性
- 従来以上に精緻な発電シミュレーションと収益性評価
- 農業収益とのトータルバランスで事業性を判断
推奨品目(コメ・麦・大豆)を前提とした営農計画の提案
この提案により、基準適合の営農計画を効率的に作成できます。
推奨品目の明示
- 農水省が推奨品目として「コメ・麦・大豆」を明示
- 今後の営農型案件ではこれらを前提とした営農計画が現実的な選択肢
科学的根拠の活用
- 千葉大学の研究
- 水稲は遮光率27%で収量5%減
- 大豆は31%減
- 出光興産の千葉県での実証
- 米の収量・品質に大きな問題は確認されていない
地域との整合性
- 地域で栽培されている作物
- 販売ルートが確立している作物
- これらとの整合性を確認
地域計画への位置付けと実績ある営農者の確保
この早期関係構築により、基準対応の営農者を確保できます。
営農者要件の厳格化
- 地域計画に位置付けられた者
- 一定以上の生産・販売実績
- 案件組成の初期段階から地元の実績ある農家・農業法人との連携を視野に入れる
リードタイムの長期化
- 地域計画への位置付けには自治体や農業委員会との調整が必要
- 従来よりも立ち上げまでのリードタイムが長くなる可能性
早期関係構築
- 地元JAや農業委員会との関係構築を早期に進め
「地域計画に位置付け可能な営農者候補」を事前に整理しておく - 案件化の確度を高める
連携先の候補
- 実績ある地元農家
- 農業法人
- JA営農部門
- 農地中間管理機構
「地域共生モデル」を前提とした事業スキームの構築
この地域共生モデルにより、持続可能な営農型事業を構築できます。
地域共生の必須化
- 「地域の合意形成」「営農者への利益還元」「撤去費用の担保」
- 単なる制度対応ではなく地域と共存するビジネスモデルの根幹
出光モデルの参考
- 発電収益の一部を地代として営農者へ還元
- 農業側のメリットを明確化
ストーリーの再構築
- 単なる発電事業ではなく「農業継続支援+地域GX推進」というストーリー
- 今後の展開において有効
自治体との連携
- 地域GX推進の一環として位置づけ
- 自治体の支援を得る
- 補助金活用の可能性
農林水産省が公表した「望ましい営農型太陽光発電の考え方(案)」は、遮光率30%未満、推奨品目としてコメ・麦・大豆、地域計画への位置付け、地域共生の確保などを要件として示し、営農優先の明確化と参入要件の厳格化の方向性を打ち出しています。
この基準案がそのまま制度化された場合、サカキ・シキミなどの観賞用作物や、ミョウガ・キノコ類など日陰を好む作物は「望ましい形」とは位置付けられにくくなります。遮光率30%未満という基準は、千葉大学の研究で「水稲は遮光率27%で収量5%減」という結果と符合しており、科学的根拠に基づいた基準設定と言えます。
営農者要件として「地域計画に位置付けられた者」「一定以上の生産・販売実績」が求められることで、新規参入や小規模事業者は事実上排除される可能性があり、参入障壁が大幅に高まる見込みです。
一方、一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟は、「営農型太陽光が黎明期であることを踏まえれば、足切り的な基準とすべきではない」と指摘し、「遮光率一律設定を避けるべき」とし、規制強化よりも優良事例の普及を重視すべきだと提案しています。
制度見直しとして、この考え方を「農山漁村再生可能エネルギー法」の基本方針に明記し、自治体が適否を判断できるよう関連制度を見直す方針です。
