みなさん、こんにちは!
今日は、FIT終了後の「FIP転換+蓄電池」市場が本格化し、再エネマッチングプラットフォームが登場しているニュースを共有します。
エナリスは太陽光+蓄電池の制御・運用を一括提供するサービスを4月1日から開始し、日々の発電量予測、市場価格変動を見越した充放電計画作成、複雑な入札業務など高度な運用スキルをSaaS形式で提供します。
リミックスポイントは低圧事業用太陽光でもFIP転換+蓄電池併設の事業性検証を開始し、これまで高圧・特別高圧に限定されていたFIP転換が低圧にも広がる可能性を示しています。
東芝は再エネマッチングサイト「EneHub™」を提供開始し、FIPへの制度転換で顕在化した「発電事業者は売り先が分からない、需要家は電源がどこにあるか分からない」という情報の分断を解消します。
エナリスが提供する「FIP運用の高度化」サービス
エナリスは1月7日、太陽光発電設備と蓄電池の制御システムから運用業務までを一括で担う「再エネ併設蓄電池 制御支援サービス」を発表し、4月1日から沖縄を除く全国で提供します。
設置概要
太陽光発電所の運営事業者が、固定価格買取制度(FIT)からフィード・イン・プレミアム(FIP)に移行し蓄電池を併設するケースが増加しています。
蓄電池を最大限に活用することで、市場価格に応じた最適なタイミングで取引することが可能になる一方、再エネ併設蓄電池の制御・運用には、日々の発電量予測、市場価格の変動を見越した充放電計画の作成、複雑な入札業務など高度な運用スキルが不可欠でした。
提供するサービス内容
同社が開発した蓄電池制御・発電予測などの制御システムをSaaS(Software as a Service)の仕組みで提供します。
- 発電設備や蓄電池からの出力(kW)や電力量(kWh)、
瞬時の応答(ΔkW)の制御 - 環境価値の買い取り
- 電力広域的運営推進機関(OCCTO)への発電計画などの報告
- 系統からの充電
- 卸電力市場・需給調整市場・容量市場への参加
- 運用サポート
これらを一括で請け負います。
契約条件
| 対象 | 原則1MW以上の高圧・特別高圧太陽光発電所(分散型は対象外) |
| 契約期間 | 最低1年間の契約が必須で、最大3年間の契約が可能 |
| 対象者 | 非FIT、特にFIPの再エネ発電事業者 |
エナリスは2016年度から国のVPP(仮想発電所)実証事業に参画し、2019年に蓄電池制御・発電予測などの制御システムを開発、2022年度には特定卸供給事業者ライセンスを取得するなど、FIP運用に必要な技術とライセンスを体系的に蓄積してきました。
このサービスが示すのは、「FIP運用は専門知識がない事業者には困難」という現実と、「その困難をSaaS化することで解決できる」という可能性です。
リミックスポイントが示す「低圧太陽光FIP転換」の可能性
小売り電気事業などを展開するリミックスポイントと、同社子会社のシールエンジニアリングは、低圧事業用太陽光発電所のFIP転換+蓄電池併設の事業性を検証するプロジェクトを開始しました。
検証プロジェクトの概要
| 対象発電所 | 熊本県菊池市の「リュミエ菊池発電所」10区画と、 鹿児島県志布志市の「志布志発電所」10区画 |
| スケジュール | 2026年春頃から蓄電池の設置工事を開始し、 同年冬頃にFIP移行完了・運転開始予定 |
| 検証内容 | 蓄電池システムを併設し、 発電・蓄電・売電を含むシステム全体の運用を最適化 |
ブルースカイエナジーが両発電所設備の改修および運営・管理を担当し、リミックスポイントはアグリゲーターおよび発電事業者として、設備の運用・保守の両面から同事業における事業性を検証していきます。
低圧FIP転換の戦略的意義
これまで、FIP転換は主に高圧・特別高圧の大規模発電所を対象としてきました。エナリスのサービスも「原則1MW以上」という基準を設けています。
しかし、低圧事業用太陽光は全国に膨大な数が存在します。この市場が開拓されれば、FIP転換市場は一気に拡大します。
リミックスポイントの検証が成功すれば、「FIP転換は大規模発電所だけの選択肢」という常識が覆り、「すべての太陽光発電所の標準的な進路」へと変わる可能性があります。
東芝「EneHub™」が解消する「情報の分断」
東芝は2025年1月、再エネマッチングサイト「EneHub™」の提供を開始しました。このサービスが解決しようとしているのは、FIP転換により顕在化した「情報の分断」です。
FIP転換がもたらした新たな課題
2012年に始まったFIT(固定価格買取制度)では、国が一定価格で電力を買い取る仕組みでした。しかし、2022年に導入されたFIPでは市場取引を前提とした運用が求められます。
| 発電事業者側 | 売り先の確保や発電量予測を自ら行う必要がある |
| 需要家側 | 多様な選択肢の中から自社に合った電源を選ぶことが可能になった |
「EneHub™」のサービス内容
| 無料で利用可能 | 登録や検索は無料 |
| 約400件の電源情報 | 全国の太陽光発電所を中心に登録 |
| 実務的な検索条件 | 容量、価格帯、エリア、契約年数、開発ステータスや運開時期、 ハザードレベル、RE100適合・不適合など |
| 人的サポート | マッチング後には東芝の営業担当による手厚いサポート |
デジタル×人的サポートのハイブリッド
重要なのは、単なるオンライン検索で終わらない点です。
電源の検索や比較といった初期段階はデジタルで効率化しつつ、マッチングが成立した後は、東芝の担当者が間に入り、契約条件の調整や交渉を行う仕組みを採っています。
再エネの取引は10年、20年と続く長期契約となる場合が多いです。契約時だけでなく、運用開始後に発生する調整や想定外のトラブルに長期的に対応できる体制が重要になります。(山本氏)
発電事業と電力事業の双方に長年関わってきた東芝が運営することで、契約締結後も継続的に伴走できる点は、需要家にとって大きな安心材料となっています。
急増する再エネ調達ニーズ
2030年の経営目標に再エネの拡大を盛り込み、あと4、5年しかないからと情報収集し、再エネを調達しようとしている企業は多いです。(高橋氏)
2030年を一つの節目として、多くの企業が再エネ調達を急いでいます。しかし、「どこから電源を探せばいいのか分からない」という課題が、企業の再エネ導入を阻んでいました。
「EneHub™」は、この課題を解消するインフラとして機能し始めています。
FIP転換市場の「高度化」と「裾野拡大」
エナリスの一括サービスとリミックスポイントの低圧検証は、FIP転換市場が二つの方向に同時進化していることを示しています。
「高度化」──専門性の外部化
エナリスが提供する発電量予測、市場価格変動を見越した充放電計画、卸電力市場・需給調整市場・容量市場への参加といった運用は、発電事業者が自力で行うには高度すぎます。
SaaS形式でこれらを提供することで、専門知識がない事業者でもFIP運用が可能になります。これは、「FIP運用は大手や専門家しかできない」という参入障壁を大幅に下げる効果があります。
「裾野拡大」──低圧市場への展開
リミックスポイントが低圧太陽光でもFIP転+蓄電池の事業性検証を開始した事実は、これまで高圧・特別高圧に限定されていたFIP転換が、低圧にも広がる可能性を示しています。
低圧太陽光は全国に膨大な数が存在し、この市場が開拓されれば、FIP転換市場は一気に拡大します。
この「高度化」と「裾野拡大」が同時進行することで、FIP転換は「一部の大規模発電所だけの選択肢」から「すべての太陽光発電所の標準的な進路」へと変わりつつあります。
「2030年再エネ拡大目標」が生む巨大な調達ニーズ
東芝の「EneHub™」が対応しようとしているのは、2030年を節目として急増する企業の再エネ調達ニーズです。
企業が直面している現実
- 2030年の経営目標に再エネ拡大を盛り込んでいる
- 「あと4、5年しかない」という時間的切迫感
- 「どこから電源を探せばいいのか分からない」という情報不足
- 従来の営業担当者による人手での情報収集では限界
FIP転換がもたらした構造変化
FIT制度では、国が一定価格で買い取るため、発電事業者は売り先を探す必要がありませんでした。しかし、FIP制度では企業が発電事業者から直接再エネを調達できるようになりました。
これは、需要家にとって選択肢が広がった一方で、「膨大な選択肢の中から自社に合った電源をどう見つけるか」という新たな課題を生み出しました。
「EneHub™」は、この課題を解消するデジタルプラットフォームとして、再エネ調達の検討から実行までを支える基盤となることを目指しています。
EPC事業者が参入すべき5つの新ビジネス領域
FIP転換市場の本格化と再エネマッチングプラットフォームの登場は、EPC事業者の役割を大きく拡張します。
FIP転換+蓄電池セットの標準提案化
エナリスの一括サービスやリミックスポイントの低圧検証が示すように、今後の太陽光発電所は「FIP転換+蓄電池」がデフォルトになります。特に、低圧太陽光でも事業性が確認されれば、既設の低圧案件へのFIP転換提案が大きな市場機会となります。
EPC事業者として、新規案件の設計段階から以下を標準化する必要があります。
- FIP転換を前提とした設計
- 蓄電池併設の提案
- 制御システム導入
- アグリゲーター連携までを含めた提案
アグリゲーターとの提携・紹介
エナリスのようなアグリゲーターとの提携関係を構築し、EPC事業者が建設した発電所のFIP運用をシームレスに引き継げる体制を整えることが重要です。
- 「建設して終わり」ではなく、「建設→FIP転換→運用支援」までをワンストップで提供
- 発電所オーナーの手間を大幅に削減
- アグリゲーター紹介料というビジネスモデルも成立
既設発電所のFIP転換コンサルティング
既にFITで稼働している発電所オーナーに対して、以下のコンサルティングサービスが新たな事業機会となります。特に「FIP転して本当に得なのか」という判断は専門的な知識が必要であり、EPC事業者の技術的知見が活きる領域です。
- FIP転換の損益シミュレーション(FIT継続 vs FIP転換の比較)
- 蓄電池追加による収益最適化(投資回収期間、ROI計算)
- アグリゲーター選定支援(複数社の比較、契約条件交渉)
- 市場リスク評価(価格変動、出力制御、容量市場への参加)
再エネマッチングプラットフォームへの電源登録支援
東芝の「EneHub™」のようなプラットフォームが今後増加すれば、発電事業者はこれらに自社の電源情報を登録する必要があります。特に、複数の発電所を保有する事業者にとって、一括登録支援は大きな手間削減になります。
- 発電所の詳細データ整備(容量・価格帯・エリア・ハザードレベル・RE100適合など)
- プラットフォームへの登録代行
- 複数プラットフォームへの一括登録
- 登録情報の定期更新・メンテナンス
需要家向けの再エネ調達支援
東芝の「EneHub™」が需要家の「どこに電源があるか分からない」という課題を解決しているように、EPC事業者も需要家側に立った再エネ調達支援を提供できます。需要家側からの信頼を獲得することで、新たな顧客基盤を構築できます。特に、「2030年の経営目標に再エネ拡大を盛り込んだ企業」という巨大な潜在市場に対して、調達支援サービスを提供できれば、大きな事業機会となります。
- 地域内外の再エネ電源情報の提供
- 調達先選定支援(RE100適合、価格帯、エリア、契約年数などの条件整理)
- 契約交渉の代行・支援
- 長期運用サポート(トラブル対応、条件変更交渉)
「建設して終わり」から「電源の生涯価値最大化」へ
FIP転換市場の本格化は、EPC事業者のビジネスモデル「建設して終わり」から「電源の生涯価値最大化」へと転換させます。
従来のEPCビジネスモデル
- 発電所を建設し、引き渡す
- O&Mは別契約または他社に委託
- 発電所の売電先や運用方法は顧客任せ
新しいEPCビジネスモデル
- 発電所を建設
- FIP転換を前提とした設計・蓄電池併設
- アグリゲーターとの連携・運用支援
- 再エネマッチングプラットフォームへの登録支援
- 需要家への電源紹介・調達支援
- 電源の生涯価値を最大化するパートナーとして伴走
FIP転換市場は、本格的な立ち上がり期に入っています。
エナリスの一括サービスが示す「高度化」、リミックスポイントの低圧検証が示す「裾野拡大」、東芝の「EneHub™」が示す「情報の分断の解消」——これらは、FIP転換が「一部の先進的な事業者だけの取り組み」から「すべての太陽光発電所の標準的な進路」へと変わりつつあることを示しています。
