みなさん、こんにちは!
今日は、生成AI普及によるデータセンター(DC)急増が電力供給に与える影響について、東京電力パワーグリッドの岡本副社長へのインタビューを共有します。
2024年度末までのDCの託送申込量は約1200万kW(東京エリア最大電力需要6000万kWの約5分の1)に達し、供給まで10年待ちの案件もあります。さらに、2024年度の事前協議は1400件・容量1億7200万kW(東京エリア最大需要の約3倍)と、前年度から急増しました。
この規模のDC需要増は、基幹系統の大幅な増強を不可避とし、その費用は一般需要家の託送料金に転嫁される構造となっています。米国バージニア州では2025年8月の電気代が前年同月比13%上昇しており、日本でも同様のリスクが懸念されます。
一方、東電PGが提唱する「ワット・ビット連携」は、太陽光発電が豊富な北関東へのDC立地誘導や需要側の柔軟な運用により、系統投資を抑制しつつ再エネ活用を最大化する新たなフレームワークです。通信コストは電力系統の100分の1であり、「電力ではなくデータを運ぶ」という発想の転換が、太陽光発電に新たな需要創出の機会をもたらします。
- DC申込量が示す前例のない規模
- DC1件あたり平均10万kWという規模
- 系統増強費用を「需要家全体」が負担する構造
- 「空押さえ」という深刻な問題
- 米国の教訓:電気代13%上昇と住民反対運動
- 「ワット・ビット連携」という発想の転換
- 3つの協調:立地・地産地消・運用
- Googleの実践例:昼間稼働への転換
- 全体最適のための情報連携
- DC急増による「託送料金上昇リスク」の構造
- 太陽光発電に訪れる新たな需要創出の機会
- EPC事業者としての5つの戦略的対応
- DC需要と太陽光発電のミスマッチ解消
- 「電力ではなくデータを運ぶ」という発想の転換
- DC急増がもたらす「分岐点」
- DC急増という「機会」と「リスク」
- 「ワット・ビット連携」が開く太陽光発電の未来
DC申込量が示す前例のない規模
東京電力パワーグリッドの岡本浩副社長・最高技術責任者は、DC需要の現状について驚くべき数字を明かしました。
託送申込量の規模
2024年度末までの実績
- DCの託送申込量:約1200万kW
- 東京エリアの最大電力需要:6000万kW程度
- DC申込量だけで最大需要の約5分の1に匹敵
供給待ち期間
- 供給まで10年待ちという場合もある
岡本氏の説明
- 非常にたくさんの申し込みがあり、長くお待ちいただいているのが実態です
1200万kWという規模は、東京エリアの電力需要構造を根本から変える可能性があります。
事前協議の急増
事前協議とは
- お客さまからの供給の希望を聞き、ネットワークの状況を確認
- ネットワークの空きが足りないと、増強計画の概略を作成
- 「大体何年かかります」と回答
2023年度の事前協議
- およそ700件
- 容量では5400万kW
2024年度の事前協議
- 1400件(前年度比2倍)
- 容量では1億7200万kW(前年度比3.2倍)
- 東京エリアの最大需要の約3倍
岡本氏の認識
- 事前協議の数がうなぎ登りで、手が回らない状況が起き始めています
- 最近の上がり方は急激です。昨年度(2024年度)に苦しくなり、
今年度も同じ状況が続いています
この急増は、東電PGの事前協議体制がパンク状態にあることを示しています。
DC1件あたり平均10万kWという規模
DC需要の特徴は、1件あたりの規模が極めて大きいことです。
従来との比較
従来の想定
- 一般家庭:数kW
- 大口需要家:2000kWや数万kW
- これらを前提に、事前協議を無料とする仕組みが作られた
DCの現実
- DC1件あたりの平均:10万kW
- 検討のレベルが全く違う
岡本氏の実感
- 考え方を変えなきゃいけない時代になってきたな
10万kWという規模は、中規模の火力発電所に匹敵します。
上流設備の増強が不可避
岡本氏の説明
- DCの規模が平均10万kWとなると、
上流の基幹系統や変電所の増強をしないで済むということは考え難い - 受け入れるには相当な費用がかかる
必要な増強
- 変電所を造る
- 送電鉄塔を建てて、送電線を新たに引く
- 地中ケーブルを通す
これらは、基幹系統レベルの大規模投資を意味します。
系統増強費用を「需要家全体」が負担する構造
DC需要急増の最大の問題は、系統増強費用の負担構造にあります。
工事費負担金の仕組み
発電事業者の場合
- 既存の系統につなぐところまでの専用部分について、工事費全額を負担
需要家の場合(DCを含む)
- 新設する系統の実際の長さではなく、直線距離(直線こう長)で工事費を算出
- 当社負担分(5,500円/kW)を差し引いた額が負担額
- 実際の工事費よりも非常に少なくなる
上流設備の扱い
- 配電線や送電線の新設部分よりも上流の送電線や変電所の増強が必要になっても、
その需要家に限定した追加的な負担はない - 上流の設備は多数の需要家が共用するものなので、皆さんで広くご負担いただくことになる
この仕組みの問題
- DC1件あたり平均10万kWという規模では、上流の基幹系統や変電所の増強が必須
- その莫大な費用をDC事業者ではなく、需要家全体が負担する構造
記事は「特定の事業者の需要急増に伴う莫大な費用のかなりの部分を、需要家全体が負うことの是非は、もっと広く議論されるべきだろう」と指摘しています。
「空押さえ」という深刻な問題
系統増強費用の負担に加えて、「空押さえ」という問題が事態を悪化させています。
千葉県印西・白井エリアの事例
状況
- DCの新設が続いている
- 東電PGは需要家との契約通りに段階的にネットワークを増強
- しかし、実際の契約電力は当初計画より遅れている
影響
- 計画と実績の差分だけ、空きが出てしまう
- 供給を申し込んだ後にDCをやっぱり建てないとか、
思ったほど稼働しませんということがあって、こうした不要な空きが生まれます(岡本氏)
空押さえの二つの問題
問題1:他の需要家の託送料金に影響
- 不要な空きがあるということは我々としては設備を作り過ぎたことになり、
最終的には他のお客さまの託送料金に影響します(岡本氏)
問題2:空きがあるのに待っている案件がある
- 「空きがあるのに待っているお客さまがいる」という無駄
- 系統を使うと宣言した方に権利があるので、待っている方には提供できません。
すごく無駄のある状況になっています(岡本氏)
岡本氏の説明
- この点については、国にも課題として認識していただいています
一般送配電事業者のリスク
レベニューキャップ制度の課題
- 東電PGは必要な託送料金を国に申請して投資を回収
- しかし、不要な空きのリスクを東電PGが負うと、
他のお客さまにそうした費用をご負担いただかないといけなくなる - 事業計画とそれに合わせた託送料金は国の承認が必要で、
すぐに託送料金に反映して回収することはできない - 一定期間キャッシュが出続けることになる
岡本氏の懸念
- 資金がショートしかねませんし、我々に対してお金を出す人がいなくなってしまいます
空押さえ問題は、一般送配電事業者の財務健全性を脅かし、最終的には託送料金上昇として需要家全体に転嫁される構造です。
米国の教訓:電気代13%上昇と住民反対運動
日本でのDC急増の影響を予測する上で、米国の状況は重要な教訓を提供します。
バージニア州の事例
電気代の上昇
- バージニア州は米国のDCの集積地
- 電力需要の増加に伴い電力調達コストが上昇
- 2025年8月の電気代は前年同月比13%上昇(米ブルームバーグ)
停電リスクの増大
- DCによる電力需要急増は、厳冬期の停電リスクを押し上げている
- 北米電力信頼度協議会(NERC)が警告
住民の反応
- 米国では住民によるDC建設の反対運動が巻き起こっている
DC計画に「投機的なもの」が含まれる可能性
米国での現象
- 電力利用の要件を厳格化すると、DCからの利用申請が半分以下に激減
- 実需に裏付けされたものであれば、ここまでの激減は考えられない
- DC計画に「投機的なものが含まれている」可能性は否めない
記事の警告
DCのための電源開発や系統増強には相当の資金と時間がかかるが、そうした投資を始めてからDC建設が中止・縮小するとどうなるのか。残ったツケは『一般の需要家の負担と税金でまかなう』などという事態は避けなければならない。
この教訓は、日本でも同様のリスクがあることを示しています。
「ワット・ビット連携」という発想の転換
こうした課題への対応として、東電PGは「ワット・ビット連携」を提唱しています。
ワット・ビット連携とは
基本概念
- 電力(ワット)のための設備と、情報通信(ビット)のための設備を統合的に考え、
協調・連携する - 「電力ではなくデータを運ぶ」という発想の転換がベース
岡本氏の説明
- 例えばNTTグループの次世代の情報通信基盤IOWNを活用すれば、
遠隔地の拠点同士を、同じ場所にあるのと同じように接続できると聞いています - こうした通信技術を用いて太陽光発電が豊富な北関東にDCを立地してもらえれば、
系統や設備の増強が少なくて済み、より短い待ち時間で電気を供給できます
通信コストは電力系統の100分の1
コスト差の理由
- ケーブルの重さが100倍違う
- 電力線は損失を少なくするために電圧を上げる必要があり、
放電防止のために鉄塔が高くなる - 電力線間の絶縁を保つために距離を取る必要がある
- 台風や地震に備える強度が必要
岡本氏の説明
- 一方、光ファイバーは非常に軽く、高速なものでも電柱などで十分です。
設置スピードも速くなります。コストが大きく異なるというのは、こうした差が原因です。
この100倍のコスト差が、「電力ではなくデータを運ぶ」という発想の転換を経済的に合理化します。
3つの協調:立地・地産地消・運用
ワット・ビット連携は、3つの次元での協調を提案しています。
協調①:立地の最適化
太陽光豊富な北関東へのDC立地
- 太陽光発電が豊富な北関東にDCを立地
- 系統や設備の増強が少なくて済む
- より短い待ち時間で電気を供給できる
岡本氏の考え
- 我々が気にしているのはDCや半導体工場といった大規模需要家で、こうした産業はできる限り再エネなどのエネルギー源のあるところに立地していただいた方が、社会的に合理的だと思っています。
- 電源と需要が離れるほど、系統への新規投資が増えて、コストがかかってしまいますので。
協調②:エネルギーの地産地消
需要地での発電
- 電力需要のあるところに発電を持って行く
- 例えば工場の屋根などに太陽光パネルを置いて、自分で使ってもらう
- 余った電気が系統に流れる分には、それほど大きなインパクトにはならない
- エネルギーの地産地消になり、地元にとってはメリット
この考え方は、自家消費型太陽光の価値を明確に認めているものです。
協調③:運用の柔軟性
季節ごとの柔軟性
- 春・秋は電力が余り、夏と冬は足りないといった問題の緩和に、
需要家側に貢献いただけると思っています - 例えばDCは春と秋にもっと多めに電気を使ってもらい、
夏と冬の電気が足りない時は少なめに使ってもらう
時間帯ごとの柔軟性
- 太陽光発電が電力を多く供給する昼間にたくさんDCで計算して、
電力需要の多い夕方や夜を減らしてもらえれば、系統の混雑を緩和できます
地域ごとの柔軟性
- 電力が余る地域があり、遠方に送る系統が混雑する場合は、
余剰の出る地域のDCで電力を使ってもらい、
電力が不足するエリアではあまり使わないでもらう
Googleの実践例:昼間稼働への転換
ワット・ビット連携は、既に米Googleが実践している考え方です。
Googleの取り組み
Google フォトの分類処理
- 写っている人の顔などによって自動的に分類
- GoogleはグローバルにDCを持っている
- 太陽光発電に合わせて世界中で時間をずらしてこうした計算を行っている
運用の変化
- 昔:気温が低いためにDCの空調が少なくて済む夜に稼働
- 最近:太陽光発電の増加によって昼間の電気が安く、
再エネの利用率を高める必要もあるので、昼間の稼働に変更
岡本氏の見解
- 『価格が安く、再エネの割合も増やせるならDCの使い方を変更しよう』というのは、
今後あり得ると思います
この事例は、経済合理性と環境価値の両立により、DCの運用が変わることを示しています。
全体最適のための情報連携
岡本氏は、ワット・ビット連携をDCと電源だけの狭い範囲ではなく、モビリティーなども含めた需要側も広く参加する全体最適として捉えています。
部分最適と全体最適
現状の課題
- エネルギーは分散化が急激に進んでいる
- リソースの所有者は、自分にとっての部分最適を目指した運用をする
- 部分最適と全体最適が大きくずれていることは非効率
全体最適への道
- 部分最適の判断を下す主体が分散していくと、
「情報でつないでいく」ということをしないと全体最適にはならない
CO2排出量のリアルタイム見える化
岡本氏の提案
- 特に企業の場合は『電力のCO2の情報』をもっとリアルタイムに
入れていけるといいと思っています - 電力のCO2排出量は時々刻々と、また場所によって実際は変わっていますから
見える化の効果
- CO2の情報を見える化すれば、『あなたが使っている電力の今の排出量はこうだけど、
ある時間と季節ならばこうです。場所が変わればまた変わります』となります - こうした情報を使って『CO2を減らそう』『電気も安い方がいいね』と
それぞれの企業が部分最適を行えば、それが社会としての全体最適になると考えています
この考え方は、太陽光発電がゼロエミッションであることをリアルタイムで証明できる価値を高めます。
DC急増による「託送料金上昇リスク」の構造
DC急増の最大の問題は、特定事業者の需要急増に伴う莫大な系統投資コストを、需要家全体が負担する構造にあります。
コスト転嫁の構造
上流設備の増強費用
- 接続点より上流の送電線・変電所の増強費用
- 多数の需要家が共用する設備のため、DC事業者だけでなく需要家全体が広く負担
- 東京エリアだけで1200万kW(最大需要の5分の1)という規模
- 基幹系統の大幅な増強を不可避
- その費用は一般需要家の託送料金に転嫁
空押さえのコスト
- 当初計画より実際の契約電力が遅れる
- 東電PGは設備を作り過ぎたことになる
- 最終的には他の需要家の託送料金に影響
レベニューキャップ制度のタイムラグ
- すぐに託送料金に反映して回収することはできない
- 一定期間キャッシュが出続ける
- 後から料金に反映させて長い時間をかけて回収
米国の教訓
バージニア州の事例
- 2025年8月の電気代が前年同月比13%上昇
- 厳冬期の停電リスクが増大
- 住民によるDC建設の反対運動
投機的な計画の可能性
- 電力利用の要件を厳格化すると、利用申請が半分以下に激減
- DC計画に「投機的なものが含まれている」可能性
日本へのリスク
- DC建設が中止・縮小した場合の系統投資の無駄
- 一般需要家の負担と税金でまかなうという事態は避けなければならない
この構造は、日本でも託送料金上昇のリスクが現実的であることを示しています。
太陽光発電に訪れる新たな需要創出の機会
一方で、ワット・ビット連携は太陽光発電にとって新たな需要創出の機会をもたらします。
北関東への立地誘導
太陽光発電が豊富な地域
- 東京エリアの太陽光発電は北関東や千葉が中心
- DCは南関東が多い
- これが「場所のミスマッチ」
立地誘導の効果
- 太陽光発電が豊富な北関東にDCが立地
- 昼間の太陽光発電の余剰電力を大量に消費する需要家が誕生
- 出力制御問題の緩和
岡本氏の期待
- DCが太陽光発電の多い地域にきてもらえるとありがたい
昼間需要の創出
時間のミスマッチの解消
- 太陽光発電が電力を多く供給する昼間にたくさんDCで計算
- 電力需要の多い夕方や夜を減らしてもらう
- 太陽光発電の昼間出力を活用する新たな需要
Googleの実践
- 太陽光発電に合わせて昼間稼働に変更
- 「価格が安く、再エネの割合も増やせるなら」という経済合理性
春・秋の需要創出
季節のミスマッチの解消
- 春・秋は電力が余る(太陽光発電が多く、空調需要が少ない)
- DCに春・秋に多めに電力を使ってもらう
- 出力制御の削減
この需要創出は、太陽光発電の経済性を高める重要な要素となります。
EPC事業者としての5つの戦略的対応
DC急増とワット・ビット連携は、EPC事業者に複数の事業機会と課題を提示します。
DC立地誘導を見据えた北関東での開発強化
北関東での開発は、DC需要という新たな市場を見据えた戦略的投資となります。
ワット・ビット連携の方向性
- 太陽光発電が豊富な北関東へのDC立地誘導
- 系統増強が少なく、短い待ち時間で電力供給可能
EPC事業者の対応
- 北関東で太陽光発電所の開発を強化
- DCが実際に立地すれば、昼間の太陽光発電の余剰電力を大量に消費する安定的な需要家となる
- 自治体と連携して「太陽光発電+DC誘致」をパッケージで提案
地域経済への貢献
- DC誘致による雇用創出
- 太陽光発電による地域エネルギー自給率向上
- 地域経済活性化と再エネ拡大の両立
DC向け大規模PPAの提案開発
大規模PPAは、DC市場という成長分野への参入機会となります。
DCの規模
- DC1件あたり平均10万kW
- 大規模PPAの絶好のターゲット
GHGプロトコル対応の優位性
- 「同時性」:物理的PPAで30分単位の同時同量を実現
- 「供給可能性」:同一エリア内の新設太陽光発電所から供給
- 「追加性」:新設の太陽光発電所で実際のCO2削減に貢献
- GHGプロトコルの3つの基準をすべて満たす
契約獲得の競争優位性
- DC事業者のGHG削減目標達成に大きく貢献
- RE100、SBTiなどの国際イニシアチブへの対応
- ESG評価の向上
提案内容
- 北関東の太陽光発電所からDCへの物理的PPA
- 蓄電池併設により夜間も再エネ電力を供給
- CO2排出量リアルタイム見える化の提供
託送料金上昇リスクを自家消費型提案の訴求点に
託送料金上昇リスクは、自家消費型太陽光の経済的メリットを再認識させる契機となります。
託送料金上昇のリスク
- DC急増による系統投資コストが一般需要家の託送料金に転嫁
- 米バージニア州で電気代が前年同月比13%上昇
- 日本でも同様のリスクが懸念される
自家消費型の価値
- 系統電力への依存度を下げる
- 託送料金上昇リスクを回避
- 長期的な電力コスト安定化
提案内容
- 「DC急増により託送料金上昇のリスクがある」という情報提供
- 米国の事例を引き合いに、日本でも同様のリスクがあることを説明
- 「自家消費型太陽光により、系統電力への依存度を下げてリスクを回避」という価値提案
ターゲット
- 電力コストに敏感な製造業
- 長期的な事業計画を重視する企業
- BCP(事業継続計画)を重視する企業
需要柔軟性を活用した蓄電池+太陽光の提案
蓄電池+太陽光は、ワット・ビット連携の考え方を企業レベルで実現する手段となります。
ワット・ビット連携が提唱する需要柔軟性
- 春・秋に多めに電力を使い、夏・冬は控える
- 太陽光発電の多い昼間にたくさん計算し、夕方・夜を減らす
蓄電池+太陽光の価値
- 昼間の太陽光発電を蓄電池に充電
- 需要が高い時間帯に放電
- 需要柔軟性と再エネ比率向上を同時実現
提案内容
- 企業の自家消費型案件で太陽光+蓄電池を標準設計
- 昼間充電・夜間放電により、GHGプロトコルの「同時性」を確保
- 需要柔軟性により、系統混雑緩和に貢献
CO2排出量リアルタイム見える化への対応準備
CO2排出量リアルタイム見える化は、太陽光発電の環境価値を最大化する仕組みとなります。
岡本氏の提案
- 電力のCO2の情報をもっとリアルタイムに入れていけるといい
- 電力のCO2排出量は時々刻々と、また場所によって実際は変わっている
見える化が進む可能性
- 企業の部分最適が社会の全体最適になる
- CO2削減と電気代削減を両立する意思決定が可能に
EPC事業者の対応準備
- 太陽光発電がゼロエミッションであることをリアルタイムで証明できる体制
- 発電量データと組み合わせて、CO2削減貢献量を可視化
- GHGプロトコル対応報告書の自動生成
提供価値
- 企業の脱炭素ニーズに応える付加価値
- スコープ2削減の確実な証明
- 投資家やステークホルダーへの説明資料
DC需要と太陽光発電のミスマッチ解消
岡本氏が指摘した「場所のミスマッチ」「時間のミスマッチ」は、EPC事業者が解決すべき課題です。
場所のミスマッチ
現状
- 東京エリアの太陽光発電は北関東や千葉が中心
- DCは南関東が多い
岡本氏の期待
- DCが太陽光発電の多い地域にきてもらえるとありがたい
EPC事業者の役割
- 北関東での太陽光発電開発を強化
- 自治体と連携してDC誘致を推進
- 「太陽光発電+DC誘致」パッケージの提案
時間のミスマッチ
現状
- 電力需給が厳しいのは夏と冬
- 特に冬に雪が降った時に電力需要が増える
- その時は太陽光がほとんど発電しない
課題
- 太陽光発電が増えつつ火力発電の廃止が増えると、需給が厳しくなる
EPC事業者の役割
- 蓄電池併設により、太陽光発電を夜間や冬にも活用
- 風力・バイオマス・水力など、夜間も発電できる再エネとの組み合わせ
- 需要柔軟性を活用した運用最適化
これらのミスマッチ解消により、太陽光発電の価値を最大化できます。
「電力ではなくデータを運ぶ」という発想の転換
ワット・ビット連携の本質は、「電力ではなくデータを運ぶ」という発想の転換にあります。
通信コスト100分の1の意味
コスト差の要因
- ケーブルの重さ:100倍違う
- 設備の規模:送電鉄塔 vs 電柱
- 設置スピード:遅い vs 速い
この差の意味
- 電力系統を増強するより、通信を増強してデータを運ぶ方が圧倒的に低コスト
- 社会的コストの最小化という観点から、ワット・ビット連携は合理的
太陽光発電への影響
従来の考え方
- 電力需要のある場所(南関東)に電力を送る
- そのために系統を増強する
新しい考え方
- データを運んで、電力需要を太陽光発電のある場所(北関東)に移す
- 系統増強を最小化する
太陽光発電の優位性
- 北関東に立地したDCは、地元の太陽光発電から電力を調達
- 送電ロスが少なく、系統混雑も緩和
- 太陽光発電の地産地消が実現
この発想の転換は、太陽光発電に新たな需要創出の機会をもたらします。
DC急増がもたらす「分岐点」
DC急増は、日本の電力システムにとって歴史的な分岐点となる可能性があります。
シナリオ①:従来型の対応(託送料金上昇)
対応
- DCの申込みに応じて、基幹系統を大規模に増強
- 費用は需要家全体が負担
- 空押さえのリスクも需要家全体が負う
結果
- 託送料金が大幅に上昇
- 米バージニア州のように、前年同月比13%上昇の可能性
- 一般需要家の負担増加
- DC建設の反対運動
このシナリオは、社会的コストが最大化されます。
シナリオ②:ワット・ビット連携(最適化)
対応
- DCを太陽光発電の豊富な北関東に誘導
- 需要柔軟性を活用して、系統混雑を緩和
- 自家消費型太陽光でエネルギー地産地消を推進
結果
- 系統増強を最小化
- 太陽光発電の新たな需要創出
- 託送料金上昇の抑制
- 地域経済活性化
このシナリオは、社会的コストが最小化されます。
太陽光発電を北関東で積極的に開発し、DCとのマッチングを促進することで、シナリオ②の実現に貢献できます。
DC急増という「機会」と「リスク」
生成AI普及によるDC急増は、太陽光発電ビジネスにとって「機会」と「リスク」の両面を持っています。
リスク
託送料金上昇
- DC急増による系統投資コストが一般需要家に転嫁
- 米国の事例では前年同月比13%上昇
- 自家消費型以外の太陽光事業にも影響
空押さえによる無駄
- DC建設が計画通り進まない場合の設備過剰
- 社会的な無駄とコスト増
政策の不確実性
- DC規律強化の可能性
- 電力システム制度の変更リスク
機会
新たな需要創出
- 北関東への立地誘導により、太陽光発電の新たな大口需要家
- DC1件あたり平均10万kWという規模
- 大規模PPAの絶好のターゲット
昼間需要の創出
- Googleのように昼間稼働に転換
- 太陽光発電の昼間出力を活用する需要
春・秋需要の創出
- 出力制御問題の緩和
- 太陽光発電の経済性向上
EPC事業者は、リスクを最小化し、機会を最大化する戦略が求められています。
「ワット・ビット連携」が開く太陽光発電の未来
生成AI普及によるDC急増は、電力供給に前例のない負荷をかけています。
東京エリアだけで託送申込量1200万kW(最大需要の約5分の1)、事前協議1億7200万kW(最大需要の約3倍)という規模は、基幹系統の大幅な増強を不可避とし、その費用は一般需要家の託送料金に転嫁される構造となっています。
米国バージニア州では2025年8月の電気代が前年同月比13%上昇しており、日本でも同様のリスクが現実的です。
一方、東電PGが提唱する「ワット・ビット連携」は、太陽光発電が豊富な北関東へのDC立地誘導や需要側の柔軟な運用により、系統投資を抑制しつつ再エネ活用を最大化する新たなフレームワークです。
EPC事業者にとって、DC急増とワット・ビット連携は、太陽光発電ビジネスの新たな展開を切り拓く契機です。
北関東での開発強化、DC向け大規模PPA、託送料金上昇リスクを訴求した自家消費型提案、蓄電池+太陽光の組み合わせ、CO2排出量リアルタイム見える化への対応準備——これらの戦略的対応により、太陽光発電の新たな需要創出の機会を捉えることができます。
「電力ではなくデータを運ぶ」という発想の転換が、太陽光発電の未来を開きます。
