みなさん、こんにちは!
今日は、政府が公共部門におけるペロブスカイト太陽電池の導入目標を策定する動きと、自治体での実証事業が活発化している状況について共有します。
政府は公共部門におけるペロブスカイト太陽電池の導入目標を策定し、春にとりまとめる官民投資促進のロードマップに盛り込む見通しです。経産省と環境省が中心となり政府施設の屋根・壁面における設置可能性を調査し、導入目標を具体化します。
自民党は2月の衆院選で2035年までにペロブスカイト太陽電池を公共施設に500万kW程度導入する目標を掲げました。これは、積水化学工業が2027年度に量産開始し、2030年までに1GW体制を構築する計画と符合しており、「供給側支援+需要側創出」の両輪戦略を示しています。
愛知県は2026年2月、アイシン・中部電力ミライズ・関西電力の3社共同提案による「ペロブスカイト太陽電池普及拡大プロジェクト」の先行実証として、県庁西庁舎にペロブスカイト太陽電池パネル30枚を設置し、2年間の実証を開始。さいたま市、神奈川県でも実証事業が始まっており、自治体・製造メーカー・電力会社の三者連携による横展開モデル構築が進んでいます。
政府の導入目標策定──「供給側支援+需要側創出」の両輪戦略
政府がペロブスカイト太陽電池の導入目標を策定する背景には、明確な産業育成戦略があります。
導入目標策定の動き
政府の方針
- 公共部門におけるペロブスカイト太陽電池の導入目標を策定
- 春にとりまとめる官民投資促進に向けたロードマップ(工程表)にも盛り込まれる見通し
- 政府調達を通じた需要創出を図る
担当省庁
- 経済産業省と環境省が中心となり政府施設の屋根や壁面における設置可能性を調査
- 導入目標を具体化
自民党の公約
- 高市早苗政権は17の戦略分野の一つに「資源・エネルギー安全保障・GX」を盛り込んだ
- 日本成長戦略会議の下に設置された作業部会での議論を経て、
ペロブスカイト太陽電池やグリーン鉄、水素・アンモニアに関する国内需要喚起や
海外展開に向けたロードマップを策定
この「500万kW」という目標が、産業育成の鍵を握ります。
供給側への支援
積水化学工業の量産計画
- 2027年度の量産開始を目指している
- 政府は同社に1500億円超規模の支援を決定
支援の広がり
- 関連する国内企業の参入を後押し
- 自治体の公共調達や企業の設置を補助するなど導入促進にも注力する方針
この1500億円という規模は、政府の本気度を示しています。
需要側の創出
政府調達の活用・導入支援
- 政府施設で率先して活用し、民間の導入を喚起する
- 今後は工場屋根への設置など導入支援に力を入れる
この「供給側支援+需要側創出」の両輪戦略が、ペロブスカイト産業育成の核心です。
過去の失敗を繰り返さない戦略
シリコン太陽電池の教訓
- シリコン太陽電池で日本が2000年頃に世界シェア50%を占めていたにもかかわらず、
十分な規模とスピードで対応できなかった - これが反省点として挙げられていた
従来の再エネ支援は、「補助金は出すが、市場規模は不透明」という構造になりがちでした。
しかし今回は、
- 供給側:1500億円超の支援で量産体制を確立
- 需要側:2035年までに公共施設500万kWという明確な導入目標
という、数量と資金がセットになった設計です。
これは「技術支援」ではなく、市場を先に設計する産業政策に近いものです。
500万kWという数値は象徴的な目標ではなく、
- 年50~60万kWの安定市場
- 量産設備投資を正当化する規模
- 国内産業育成を成立させる最低ライン
を示す“産業スケールの数字”です。
今回の政策は、補助金政策ではなく、市場を制度的に創る戦略へと踏み込んだ点が最大の違いといえます。
愛知県の先行実証──「横展開モデル」構築が目的
愛知県の取り組みは、単なる実証ではなく、全国展開を見据えた戦略的プロジェクトです。
「ペロブスカイト太陽電池普及拡大プロジェクト」の概要
発表
- 愛知県は2026年2月19日に発表、実証事業を同月より開始
共同提案
- アイシン(愛知県刈谷市)
- 中部電力ミライズ(愛知県名古屋市)
- 関西電力(大阪府大阪市)
- この3社が共同提案し、愛知県に採択
設置場所
- 県庁西庁舎の2階バルコニー
- ペロブスカイト太陽電池パネル30枚を設置
- 愛知県の公共施設にペロブスカイト太陽電池が設置されるのは初めて
実証内容
- 2年間(2028年2月ごろまで)の予定
- 発電量・発電効率・経年変化などを観測
三者連携の役割分担
アイシンの役割
- 同社製のペロブスカイト太陽電池を県や市町村の公共施設および民間施設などに実証導入
- モデルケースを確立するとともに、ペロブスカイト太陽電池の効果を訴求するなど
普及に向けた取り組みを行う
中部電力ミライズの役割
- 地域内のペロブスカイト太陽電池の導入ポテンシャル推計など調査を行い、
導入拡大に向けて課題点や解決策を確認
関西電力の役割
- PPAの仕組みを活用したペロブスカイト太陽電池の普及拡大に向けた検討を行う
プロジェクトの狙い
本プロジェクトの目的は、特定エリアにおいて横断的な導入モデルを構築することにあります。
- 公共施設・産業施設などに面的に導入
- 設計・施工・運用まで一体でモデル化
- 発電データや経済性を可視化
これにより、
- 次世代太陽電池メーカー
- 発電事業者
- EPC・金融機関
といった民間プレイヤーの投資判断を後押しします。
単なる実証ではなく、全国展開可能な“先導的社会実装モデル”を確立することが最終的な狙いです。
この「横展開モデル」という明確な目的設定が重要です。
愛知県の背景──171万kWの追加導入目標
愛知県の課題
- 2021年より、全国の民間事業者などを対象に革新的かつ独創的な脱炭素プロジェクトの
アイデアを募集 - 「あいちカーボンニュートラル戦略会議」において事業化すべきプロジェクトを選定
目標
- 2030年度にCO2排出量46.0%削減(2013年度比)
- 県内の再生可能エネルギーを1.7倍(2021年度比)に拡大
- 再エネ導入量 580万kW を目指す
太陽光発電の必要量
- 2021年度実績:289万kW
- 目標達成に必要な追加導入量:171万kW
つまり、2030年までに太陽光だけで約6割増の積み増しが必要になります。
この規模は、住宅用だけでは到達困難であり、
- 工場・物流施設の屋根
- 公共施設
- 低未利用地
- 次世代型(軽量・壁面対応型など)
を組み合わせた面的導入戦略が不可欠です。
単なる設備増設ではなく、設置可能空間の最大化と系統・蓄電の最適化が成否を分ける局面といえます。
ペロブスカイトの位置づけ
- 県が掲げる太陽光の追加171万kWという目標を達成するには、
「設置できる場所を増やす技術」が不可欠 - 未活用空間を発電資産へ転換できる技術として位置づけ
この「171万kW追加」という明確な必要性が、ペロブスカイト実証の原動力です。
自治体実証の広がり──さいたま市・神奈川県の事例
愛知県以外でも、自治体と民間事業者による実証が活発化しています。
国の後押し
高市政権の方針
- 2025年に発足した高市政権においてエネルギー安全保障と産業競争力強化の観点から
国策として取り組む - 次世代太陽電池活用の機運に追い風が吹く状況
実証事業の加速
- 国が主導する形で実証事業や導入支援策が進む
- 自治体と民間事業者による次世代型太陽電池活用に向けた実証が活発化
この国の後押しが、自治体の動きを加速させています。
さいたま市の事例
提携
- さいたま市はリコー(東京都大田区)とペロブスカイト太陽電池搭載CO2センサーの
実証事業に関する協定を締結
実証内容
- 同市の本庁舎内において2026年1月より実証を開始
- 太陽電池とCO2センサーを組み合わせた用途
- 建物内の環境モニタリングという新しい活用方法
神奈川県の事例
提携
- 神奈川県はPXP(神奈川県相模原市)と連携
実証内容
- 同社が開発を進める次世代型タンデム太陽電池の社会実装を目指す実証
- 県有施設3カ所において順次開始すると発表(2026年1月)
- タンデム太陽電池は、複数の太陽電池を積層
- より高い発電効率を実現
多様な社会実装パターンの創出
愛知県との違い
- 愛知県:建物壁面・工場屋根への設置
- さいたま市:CO2センサーとの組み合わせ
- 神奈川県:タンデム太陽電池(高効率)
この多様性は単なる実験の幅ではなく、
- 不確実性の低減
- 横展開の加速
- 投資判断の標準化
を生み出すための設計です。
つまり、全国展開を前提にした“再現性づくり”こそが、この多様性の本質といえます。
「新たな適地創出」がペロブスカイトの本質的価値
ペロブスカイトの最大の価値は、従来型では設置不可能だった場所を市場に変えることです。
従来型の限界
シリコン型パネルの課題
- 重量があり、屋根の耐荷重が必要
- 硬いため、曲面には設置できない
- 設置面積が限られる
愛知県の認識
- 太陽光発電(2021年度実績:289万kW)をさらに171万kW導入する必要
- 従来のシリコン型パネルだけでは屋根の耐荷重や設置場所の制約から
171万kWの追加導入は困難
この限界が、ペロブスカイトへの期待を生み出しています。
ペロブスカイトの特徴
軽量性
- 基板にフィルムを用いるタイプは薄くて軽く曲げられるようにもなる
新たな適地
- 既存のシリコン太陽電池では難しかった耐荷重の小さい屋根や壁面などに設置できる
- 建物の壁面や耐荷重のない工場屋根などへも設置できる
効果
- 太陽光発電の導入量を飛躍的に増加させる可能性
- 業務部門・家庭部門など幅広い分野でCO2排出量の大幅な削減が期待
- 国内で賄える「ヨウ素」を主原料に活用できる点も特徴
この「新たな適地創出」という価値が、ペロブスカイトの本質です。
EPC事業者としての4つの戦略的対応
政府の導入目標策定と自治体実証の活発化は、EPC事業者に新たな市場機会を提示しています。
公共施設案件への早期参入準備
この早期参入により、公共施設市場での先行者利益を獲得できます。
目標の規模感
- 2035年までに公共施設に500万kW導入
- 2027年度の量産開始後の8年間年平均約50万kW
EPC事業者の対応
- 2027年度の積水化学工業量産開始を見据え、
公共施設(庁舎・学校・公民館・体育館等)への提案体制を整備
提案内容
- 政府の500万kW目標への貢献
- 地域の脱炭素目標達成への寄与
- 従来型では設置困難だった場所への設置可能性
- 国産エネルギー(ヨウ素)活用による経済安全保障への貢献
ターゲット
- 自治体の環境部門
- 教育委員会(学校施設)
- 公共施設管理部門
「従来型では設置不可能だった場所」の開拓
この市場開拓により、従来型では取り込めなかった顧客層を獲得できます。
市場機会の本質
- 愛知県が「建物壁面や耐荷重のない工場屋根などへの設置により、
太陽光発電の導入量を飛躍的に増加させる」と位置づけ - ペロブスカイトの本質的価値は新たな適地の創出
過去案件の再評価
- 過去に「屋根の耐荷重不足」「壁面は設置不可」という理由で太陽光導入を見送った
顧客リストを再確認 - ペロブスカイト量産開始後に再アプローチ
新たな市場セグメント
- 工場・倉庫の軽量屋根:スレート屋根、折板屋根など
- 商業施設の壁面:大型ショッピングモール、ホテル、オフィスビル
- 歴史的建造物:景観配慮が必要な建物
- 既設建物の後付け:補強工事なしで設置可能
実証データの活用
- 愛知県の2年間実証データ(2028年2月頃に完了)
- 発電量・発電効率・経年変化の実績
- これらのデータを提案資料に組み込む
PPAモデルとの組み合わせ提案
このPPAモデルにより、導入障壁を大きく下げることができます。
関西電力の検討
- 関西電力が「PPAの仕組みを活用したペロブスカイト太陽電池の普及拡大に向けた検討」を
行っている - ペロブスカイト+PPAという新しいビジネスモデルの可能性
公共施設との親和性
- 公共施設は予算制約が厳しい
- 初期費用ゼロのPPAモデルは導入促進の鍵
EPC事業者の対応
- PPAアグリゲーターとの連携体制構築
- 「ペロブスカイト+PPA」パッケージの提案
ターゲット
- 公共施設(特に予算制約の厳しい市町村)
- 民間の工場・倉庫
- 商業施設
自治体との連携による地域モデル構築
この地域モデル構築により、面的な市場開拓を実現できます。
愛知県モデルの横展開
- 愛知県の事例は自治体・製造メーカー・電力会社の三者連携による包括的アプローチ
EPC事業者の提案
- 地域内の市町村に対し「愛知県のような横展開モデルを構築しませんか」という提案
- 地域版の「ペロブスカイト普及拡大プロジェクト」を組成
連携の進め方
- 自治体の脱炭素計画にペロブスカイトを位置づける
- 製造メーカー(アイシン等)との連携を調整
- 電力会社とのPPAスキーム構築
- 実証施設の選定(庁舎、学校等)
- 導入ポテンシャル調査の実施
地域モデルのメリット
- 自治体:脱炭素目標達成への貢献
- 製造メーカー:実証実績の蓄積
- 電力会社:新しいPPAビジネス
- EPC事業者:地域内での優先的地位
政府は公共部門のペロブスカイト導入目標を策定し、2035年までに公共施設に500万kW導入を掲げています。これは、積水化学工業の2027年度量産開始、2030年1GW体制と符合する「供給側支援+需要側創出」の両輪戦略です。
愛知県は、アイシン・中部電力ミライズ・関西電力の3社共同提案により、県庁西庁舎にペロブスカイト30枚を設置し2年間の実証を開始。さいたま市、神奈川県でも実証事業が始まり、自治体・製造メーカー・電力会社の三者連携による横展開モデル構築が進んでいます。
愛知県は2030年度に太陽光発電をさらに171万kW導入する必要があり、従来のシリコン型では困難な目標を、ペロブスカイトの「建物壁面や耐荷重のない工場屋根」という新たな適地創出により実現を目指しています。
過去のシリコン太陽電池で日本が世界シェア50%を失った教訓を踏まえ、今回は「官民ともに需要創出と投資を十分な規模とスピードで」という明確な戦略のもと、ペロブスカイト産業育成が進んでいます。
