みなさん、こんにちは!
今日は、2027年度以降の新規メガソーラー支援廃止を受けて注目が高まる「FIP転換」について、その実像と事業者が直面する戦略的選択を共有します。
経済産業省は2026年1月、事業用太陽光発電(地上設置)について2027年度以降、原則としてFIT/FIP制度の対象外とする方針を示しました。低圧を含む野立て事業用太陽光全般に対し、FITだけでなくFIPによる支援も廃止します。
一方、FIT認定を受けた既設発電所をFIP認定に切り替える「FIP転換」は2027年度以降も認められます。優先給電ルール見直しにより、出力制御時はFIT電源→FIP電源の順で制御されるため、FIP転換で抑制率が大幅低下する一方、FIP転換後は出力制御の上限が適用されなくなる点に注意が必要です。
FIP転換は、固定価格での安定収入を捨て市場価格に連動する収益モデルを選ぶ選択ですが、市場運用の知見獲得、コーポレートPPA組成、蓄電池併設による収益最大化という戦略的意義を持ちます。2024年に97件のコーポレートPPAが組成され、FIP転換電源の事例も見られることは、この選択肢が既に現実のものとなっていることを示しています。
2027年度以降の新規支援廃止とFIP転換の位置づけ
経済産業省の方針は、太陽光発電政策の大きな転換点を示しています。
新規支援廃止の方針
対象
- 事業用太陽光発電(地上設置)
- 低圧を含む野立ての事業用太陽光”全般”
廃止される支援
- FITだけでなく、FIPによる支援も廃止
- 2027年度以降、原則として制度の対象外
背景
- 2025年末に閣議決定された「メガソーラー対策パッケージ」の延長線上
- ほぼ規定路線
この方針が意味すること
- 新規の地上設置型事業用太陽光は、制度支援なしで市場原理で成立する必要
- 再エネ事業は、固定価格に依存する段階を終える
FIP転換は継続
継続される支援
- FIT認定を受けた既設の発電所をFIP認定に切り替える「FIP転換」は、
2027年度以降も認められる - 「FIP転」という略称で呼ばれることも多い
国の考え
- FIPは、再生可能エネルギーの市場統合に向けた過渡的な支援制度
- 国としてもFITからFIPへの移行は引き続き推進したい
現在の状況
- 新規認定がFIT/FIPともに廃止へと向かう中
- FIP転換への関心が改めて高まっている
この位置づけが示すのは、FIP転換が単なる「制度の乗り換え」ではなく、市場統合への必然的な道筋だということです。
FIP制度の仕組みとFIT制度との決定的な違い
FIP転換を理解するには、FIP制度そのものの仕組みを把握する必要があります。
FIP制度の基本
FIPとは
- 「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略
- 再エネ発電事業者が卸電力市場などで売電したとき、
その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せ
仕組み
- 基準価格 − 参照価格 = プレミアム
- 電気を売った価格 + プレミアム = 再エネ発電事業者の収入
FIP基準価格
- プレミアム算定の基礎となる価格
- FIT調達価格と同様に交付期間中は一定
- 年度ごとに定められる
- FIP基準価格とFIT調達価格は原則として同額
FIP転換時の条件
FIP基準価格
- FIT認定時の調達価格がそのままFIP基準価格として適用
- 例:FIT認定時40円/kWh → FIP基準価格40円/kWh
交付期間
- FIP転換時点におけるFIT制度の残存期間がそのままFIP制度の適用期間として引き継がれる
- 例:FIT残存期間10年 → FIP適用期間10年
この条件設定により、価格面での不利益はないように設計されています。
FIT制度との決定的な違い
FIT制度の特例措置
- 一般送配電事業者による全量買取義務
- 同時同量対応の免除(インバランス特例)
- 固定単価による長期的な収益保証
- “発電さえしていれば”安定した収益
FIP制度での変更点
- 買取義務者はいなくなる → 発電事業者側で販売先を確保
- 同時同量対応も原則として発電事業者側の責任 → 発電計画の提出や需給管理が必要
- 需給調整に伴うコストも発生
FIP制度の位置づけ
- 再エネ電源を従来電源と同じ土俵にソフトランディングさせるための「中間ステップ」
- FIT制度にあった特例措置の多くが廃止または限定
求められる能力
- 日々発電しているだけでなく
- 毎時の発電量を予測
- 市場に応じた充放電や取引を行う
- “いかに頭を使うか”によって、同じ発電設備でも収益が大きく違ってくる
この違いは、FIP転換が単なる「書類上の変更」ではなく、事業運営の本質的な転換であることを意味します。
リスクを取ってもFIP転換する3つの戦略的意義
発電事業者にとって、FIP転換は短期的に見ればリスクを伴う選択です。なぜ、あえて転換するのでしょうか。
市場運用の知見獲得──将来の競争力への投資
制度依存からの自立
- 2027年度以降、新規の地上設置型事業用太陽光がFIT/FIP制度の支援対象外
- 市場対応が必須になっていく
- 制度依存からの自立は急務
FIP転換の意義
- 既設電源を用いてFIP運用に取り組むことで
- 市場取引、同時同量対応、インバランス管理といった実務経験を、プレミアムを得ながら蓄積
- 収益の振れの管理、効果的なヘッジ方法など、
将来の事業運営に不可欠な知見を前もって獲得
将来への布石
- その経験とノウハウは、将来の事業競争力に直結
- 自立への中間ステップとして、FIPを活用する意義は大きい
これは単なる「試験運用」ではなく、将来生き残るための必須の学習機会です。
コーポレートPPA組成の可能性──長期パートナーシップ構築
売電の自由度向上
- FIP転換により、売電の自由度は劇的に向上
- 市場で売るだけでなく
- 需要家との直接契約である「コーポレートPPA」の組成が可能に
市場の拡大
- 自然エネルギー財団「コーポレートPPA 日本の最新動向2025年版」(2025年3月)
- 需要家名が公表された事例だけでも、2024年の1年間に97件のコーポレートPPAが組成
FIP転換電源の事例
- 新規電源だけでなく、FIP転換電源の事例も見られる
- 「FIP転換 + コーポレートPPA」が広がり始めている
戦略的価値
- 脱炭素を掲げる企業との長期的なパートナーシップを早期に構築
- 将来的なオフテイカー確保の観点からも有利
コーポレートPPAは、市場価格変動リスクを回避しつつ、長期的な収益安定化を実現する手段となります。
優先給電ルール見直しによる抑制回避効果
優先給電ルールの見直し
- 出力制御が必要となった場合の順序
- ①火力 → ②他地域への送電 → ③バイオマス → ④太陽光・風力 → ⑤長期固定電源
- ③④それぞれのカテゴリでFIT電源 → FIP電源の順とする
FIP転換のメリット
- 再エネ導入量が多く、制御発動が頻発するエリアでは
- これは明確なメリット
- FIP転換で抑制率が大幅に低下
具体的な効果
- 九州では、日中の卸電力市場の価格低下や出力制御が顕著
- FIP転換による抑制回避効果や蓄電池併設との相性が良い
ただし注意点
- FIT制度で設けられていた出力制御の上限は、FIP転換後には適用されなくなる
- 抑制に上限(旧ルール年間30日、新ルール360/720時間)があった電源については
- FIP転換により収益がむしろ低下する恐れもある
また、FIP比率の影響
- 資源エネルギー庁の試算によれば、FIP比率が25%に到達した時点で、
FIT電源の抑制率は3割程度増加 - その分収益性が低下
- 一方でFIP転換をすれば抑制率は大幅に低下するものの、
収益は優先給電ルールの見直し前程度に留まる
この優先給電ルール見直しは、FIP転換を「いつかやる」ではなく「早くやる」インセンティブを生み出しています。
地域格差と蓄電池併設の必然性
FIP転換の効果は、全ての電源で一律に有利なわけではありません。
地域による大きな違い
九州エリア
- 日中の卸電力市場の価格低下や出力制御が顕著
- FIP転換による抑制回避効果や蓄電池併設との相性が良い
- FIP転換のメリットが大きい
北海道・東北エリア
- 系統制約の影響から抑制率が上昇する可能性
- 慎重な検討が求められる
この地域格差が示すこと
- 「どの電源を、どの地域で、どのスキームで運用するか」を見極めることは
- もはや制度対応ではなく、経営戦略そのもの
判断基準
- 地域特性
- 抑制率
- 市場価格変動
- 系統制約
- これらを総合的に評価した上での判断が必要
蓄電池併設の多層的メリット
蓄電池の役割
- FIP転換後の太陽光発電では
- 市場価格変動、出力変動、インバランス対応が事業の成否を左右
- これらの課題に対応するための重要な補完手段が「蓄電池」
メリット①:アービトラージ(裁定取引)
- 時間帯による価格差を活用
- 日中の余剰電力や価格下落時に充電
- 需要が高まり価格が高騰する夕方以降に放電
- 収益価値を最大化
メリット②:出力抑制時の発電ロス回避
- 出力抑制時には捨てられていた電力を吸収
- 後で売電することで発電ロスを回避
メリット③:インバランスの低減
- 発電計画との差異を蓄電池で調整
- インバランスペナルティを削減
メリット④:需給調整市場への参入
- 蓄電池は需給調整市場への参入機会を提供
- 多層的な収益源
制度面での支援
手続きの迅速化
- 2025年9月1日以降
- FIP移行認定の審査と並行して蓄電池設置に関する書類についても事前確認を行う
- 手続の迅速化を図っている
従来
- FIP移行認定日後に、蓄電池併設に関する変更認定申請が必要だった
改善後
- FIP転換と蓄電池併設を同時に進められる
この改善により、「FIP転換+蓄電池併設」がよりスムーズになりました。
蓄電池併設は、FIP転換後の収益安定化において、もはや「あれば良い」ではなく「必須」に近い位置づけとなっています。
EPC事業者としての3つの戦略的対応
FIP転換は、EPC事業者にとって既存顧客との関係深化と新たなビジネス機会を提供します。
既存顧客へのFIP転換コンサルティング提供
FIP転換コンサルティングは、既存顧客との関係を深化させる機会となります。
顧客が直面する選択
- 2027年度以降、新規メガソーラー支援が廃止
- 既設FIT電源のオーナーは「このままFITを続けるか、FIP転換するか」という選択を迫られる
EPC事業者の役割
- 顧客の電源ごとに分析
- 地域特性(九州は有利、北海道・東北は慎重に)
- 抑制率の現状と予測
- 市場価格動向
- 出力制御上限の有無
- FIP転換の適否を判断するコンサルティング提供
提案内容
- FIP転換した場合の収益シミュレーション
- 抑制回避効果の定量化
- 市場価格変動リスクとヘッジ方法
- FIT継続とFIP転換の比較表
蓄電池併設の一体提案と施工対応
蓄電池併設の一体提案は、FIP転換案件の収益性を大きく高める要素となります。
蓄電池併設の重要性
- FIP転換後の収益安定化には蓄電池併設が極めて有効
- アービトラージ、出力抑制時のロス回避、インバランス低減など多層的メリット
提案内容
- 蓄電池容量の最適化(発電容量、立地、市場価格動向に応じて)
- アービトラージによる収益向上効果の試算
- 蓄電池投資の回収期間明示
- 需給調整市場への参入サポート
アグリゲーターとの協業体制構築
アグリゲーターとの協業により、中小規模顧客にもFIP転換を提案できる体制が整います。
中小規模事業者の課題
- FIP転換に伴う実務
- 販売先確保
- 発電計画提出
- 需給管理
- 中小規模の発電事業者にとってハードルが高い
アグリゲーターの役割
- 電力市場での運用を含めて販売先の確保を行う
- 実際の売電実務を代行
- 日々の発電予測や計画提出、インバランス管理も担う
- 売電価格の変動リスクにも対応
「疑似FITスキーム」の価値
- アグリゲーターの中には、収益を安定化させる「疑似FITスキーム」を提供する企業もある
- 金融機関が求める事業予見性を担保
- FIPによる通常の市場連動スキームよりも、
FIPを使った疑似FITスキームの方が相対的に収入が安定 - ファイナンス組成は容易に
提案の構造
- FIP転換コンサルティング(EPC事業者)
- 蓄電池併設設計・施工(EPC事業者)
- FIP転換後の運用代行(アグリゲーター)
- 疑似FITスキームによる収入安定化(アグリゲーター)
- 既存融資条件の変更サポート(EPC事業者 + アグリゲーター)
顧客メリット
- FIP転換の実務負担を最小化
- 収入の安定性を確保
- 金融機関との交渉もスムーズ
2027年度以降、新規メガソーラー支援が廃止される中、既設FIT電源のFIP転換は「制度依存からの自立」への必然的な道筋です。
FIP転換には、市場運用の知見獲得、コーポレートPPA組成の可能性、優先給電ルールによる抑制回避という3つの戦略的意義があります。2024年に97件のコーポレートPPAが組成され、FIP転換電源の事例も見られることは、この選択肢が既に現実のものとなっていることを示しています。
一方で、地域格差、出力制御上限の消滅、実務負担の増加など、慎重な検討が必要な要素もあります。九州ではFIP転換のメリットが大きい一方、北海道・東北では慎重な判断が求められます。
蓄電池併設は、アービトラージ、出力抑制時のロス回避、インバランス低減など多層的な収益源をもたらし、FIP転換後の収益安定化において必須に近い位置づけとなっています。2025年9月以降、FIP移行認定申請と蓄電池併設の事前確認を並行実施できるようになり、手続きも迅速化されています。
FIP転換は、再エネ発電事業者が自律的なエネルギープレーヤーへと進化するための登竜門であり、再エネの主力電源化に向けた重要な試金石となります。
