みなさん、こんにちは!
本日は、長野県飯田市でソーラーシェアリング(営農型太陽光)を軌道に乗せているリックス株式会社の取り組みをご紹介します。
太陽光発電と農業を組み合わせたこの事業は、「地域資源を再生しながら持続可能な農業をつくる」実践型モデルとして注目されています。
食とエネルギーを両立するソーラーシェアリング事業
リックス社は、家電販売や太陽光発電の施工に加え、現在7つの発電所でソーラーシェアリングを展開しています。
ブルーベリー、菌床シイタケ、万次郎カボチャの3品目を栽培し、年間約29万kWhの発電と地域食材の生産を両立。
事業の概要は次の通りです。
| ブルーベリー栽培 | 3発電所で164.9kgを収穫 |
| 菌床シイタケ栽培 | 1発電所で644.7kgを収穫 |
| 万次郎カボチャ栽培 | 3発電所で収穫物は学校給食や地元直売所へ |
| 「結いプロジェクト」 | 非常用電源確保や寄付活動を通じ地域還元を実施 |
熊谷弘社長は、
ソーラーシェアリングは食とエネルギーの自給自足に適している
と語り、今後はオンサイトPPAモデルを活用した地域農業法人への展開を目指しています。
耕作放棄地を再生する“地域循環”の仕組み
リックス社の取り組みの原点は、「耕作放棄地や遊休農地をどう再生するか」という課題意識にあります。
自宅周辺の農地を借りて始めた小規模な実証が、今では行政視察が訪れるモデル事例に成長。
ようやく農業の実績もついてきた
という社長の言葉には、再エネ事業の文脈を超えた地域再生への想いがにじみます。
発電所を“地域資源の再生装置”として位置づけ、農業・防災・教育をつなぐ循環構造を生み出している点が特徴です。
地域密着型エネルギーモデルとしての成熟
ソーラーシェアリングは「発電+農業収益」で成立するモデルですが、実際に安定した栽培実績を出している事例はまだ多くありません。
リックス社は、販売・施工・栽培を一気通貫で運営することで、地域電力会社や自治体と連携可能な実践モデルを示しています。
また、非常電源や学校給食との連携など、「防災 × 教育 × エネルギー」という複合的な価値創出が進んでおり、単なる発電所ではなく、地域生活の一部として再エネを機能させています。
オンサイトPPAによる営農拡大の可能性
熊谷社長が次の展開として掲げる「オンサイトPPA」は、発電設備を第三者が設置・運用し、利用者が使用電力量に応じて支払う仕組みです。
これを営農型に適用すれば、農家が初期投資を負担せずにソーラーシェアリングを導入でき、農地の収益性を高める新しいスキームとなります。
地域農業法人・自治体・電力事業者が連携する“農村型PPAモデル”として、全国的な展開にもつながるポテンシャルを感じます。
農地の空間設計こそ技術の出番
EPCの立場から見れば、今回の取り組みは技術と地域性の融合です。
太陽光架台下の照度、作物の生育条件、発電量シミュレーションなど、EPCが得意とする設計力とデータ分析が価値を発揮できる分野です。
今後は、
- 架台下の最適照度分布設計
- 発電・収益のシミュレーション支援
- PPA導入時のコスト最適化提案
といった技術支援を通じて、「農と再エネの共生設計」をさらに高度化できるでしょう。
飯田のリックス社の取り組みには、「地域資源を自らの手で循環させる力」があります。
再エネの未来は、単なる発電効率の競争ではなく、地域の暮らしとどう共生するかにあるのだと、改めて感じさせられる事例でした。
