みなさん、こんにちは!

今日は、第7次エネルギー基本計画を踏まえた電力システム改革の方向性について共有します。

政府は「安定供給」「脱炭素化」「安定的な価格水準での供給」という3つの方向性を掲げ、DXやGXによる電力需要増加に対応するため、大規模な電源・送配電網投資を促進する制度整備を進めています。

最も重要なのは、火力発電を「調整力」として維持・確保する方針が明確化されたことです。「脱炭素に向けて火力発電の発電量を低減していくことは重要」としつつも、「天候によって変動する再エネの出力などを補う『調整力』として、火力発電を維持・確保していくことも必要」と明記されました。

これは、JERAが直面する「曲芸のようなオペレーション」の構造的要因を政府が認識し、火力発電が不可欠であることを公式に認めたことを意味します。

さらに、脱炭素電源の豊富な地域に産業を集積させる「GX産業立地政策」を打ち出し、送配電設備の計画的整備のための国の強力な関与を明確化するなど、市場メカニズムから計画的な資源配分への転換が進んでいます。

EPC事業者にとって、これは「火力発電を代替する」という対立構図ではなく、「火力発電と共存し、調整力の負担を軽減する」という協調的な価値提案が求められることを意味します。

電力システムが直面する3つの課題

第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)を踏まえ、経済産業省は2025年12月の審議会で電力システム改革の方向性を整理しました。

電力システムを取り巻く環境変化

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)の進展による電力需要の増加
  • 国際的なカーボンニュートラルへの対応の加速化
  • 地政学的な要因から起こる燃料価格高騰、物価高による電気料金の上昇

これらの課題に対応するため、これからの電力システムがめざすべき方向性として、以下の3点が掲げられました。

3つの方向性

  1. 安定的な電力供給を実現する
  2. 電力システムの脱炭素化を進める
  3. 安定供給や脱炭素化、物価上昇等による価格への影響を抑制しつつ、需要家に安定的な価格水準で電気を供給できる環境を整備する

これらの方向性は相互に関連しており、同時に達成することが求められています。

政府の公式見解

脱炭素に向けて火力発電の発電量を低減していくことは重要ですが、電力の安定供給のためには、「供給力」としての役割だけでなく、天候によって変動する再生可能エネルギー(再エネ:太陽光、風力など)の出力(発電量)などをおぎなう「調整力」として、火力発電を維持・確保していくことも必要です。

さらに、「燃料価格の変動リスクが高まっている中、安定供給に必要となる燃料の確保に向けた検討を進めていきます」とも明記されています。

これは、JERAが直面する「曲芸のようなオペレーション」の構造的要因を政府が認識し、火力発電が不可欠であることを公式に認めたことを意味します。

この方針転換は、太陽光発電の位置づけにも影響します。再エネが大量導入されればされるほど、火力発電の「調整力」としての役割が重要になり、火力発電への依存度は下がりません。

「再エネ主力電源化」という目標と「火力発電の維持・確保」という現実のギャップが、政策文書に明確に示されました。

脱炭素電源投資を促進する制度整備

安定供給に必要な規模の脱炭素電源(CO2を排出せずに電気をつくる方法)を確保していくためには、大きな投資が必要です。

しかし、将来的な電力収入が不確実な状態では、事業者の抱えるリスクが大きくなり、大規模で長期にわたる電源投資をためらうようになります。

長期的かつ継続的に必要な電源投資がおこなわれるよう、政府は対応策として市場環境の変化による収入や諸費用の変動に対応できるような制度や、市場環境の整備をおこないます。

また、今後、電力の需要が増加すると見込まれる中で、中長期的な見通しを立てて、それに見合う電力を供給できるよう、制度の見直しなどを進めていきます。

これは、FIP制度の拡充や容量市場の整備など、発電事業者の収益予見性を高める施策が今後さらに強化されることを示唆しています。

系統整備の「計画経済化」と資金調達支援

DXやGXの進展による電力需要の増加に対応し、すみやかに、かつ確実に電力を供給するためには、送配電設備の計画的な整備が重要です。

整備の促進にあたっては、電力会社の初期投資の資金を確保することが課題となります。そこで、電力会社が設備の運転開始後に受け取る予定の料金を前倒しして交付するなど、資金調達の円滑化に向けた措置を講じていきます。

また、エリア間で電力を融通するための「地域間連系線」だけでなく、各エリアの中で整備・運用される「地内系統」についても、送配電網を管理・運用する電力会社などが計画を策定した上で、国や、電力広域的運営推進機関(広域機関)がその内容を確認し、整備にかかる資金を貸し付け対象にするといったしくみを構築していきます。

電力需要の増加に対応し、安定供給を大前提に脱炭素化を進めるには、長期にわたり、大規模な脱炭素電源や送配電網への投資が不可欠です。需要家ニーズへの対応を迅速化するとともに、大規模な投資を促進するため、広域機関が財政融資などを活用し、民間金融機関と協調して電気事業者に対し融資をおこなう制度の創設を検討していきます。

これまで市場原理に委ねられていた送配電網整備が、国の強力な関与のもとで計画的に進められることになります。料金前倒し交付、国・広域機関による計画確認、資金貸付対象化、財政融資の活用など、極めて「計画経済的」な手法が大胆に導入されます。

GX産業立地政策による産業配置の誘導

さらに注目すべきは「GX産業立地政策」です。

脱炭素電源の豊富な地域に産業を集積させる「GX産業立地政策」との連携によって、大規模な電力需要のある施設を送配電網などの観点から望ましい地域に立地誘導するなどの取り組みを進めます。

これは、市場メカニズムではなく政府の計画によって、産業配置とエネルギーインフラを一体的に最適化する試みです。

データセンター、半導体工場、AI関連施設など、大規模な電力需要のある施設の立地を、送配電網の観点から望ましい地域に誘導するという、極めて直接的な産業政策が打ち出されました。

これは、中国やシンガポールなど、国家主導でエネルギーインフラと産業配置を一体的に計画する国々の手法に近づいていることを示しています。

再エネ大量導入に対応する「同時市場」の導入検討

自然条件で出力が変わる再エネの大量導入が進むと、電力需給のバランスを調整することがさらに難しくなります。

そのため、需給の状況や実際に送ることのできる電気の量など、さまざまな条件を踏まえながら、電力と調整力を同時に取引する「同時市場」と呼ばれるしくみの導入に向けた検討を進めていきます。

これは、太陽光発電も単なる発電設備ではなく、調整力を提供できる電源としての機能が求められることを示唆しています。

EPC事業者が取り組むべき5つの戦略

電力システム改革の方向性は、EPC事業者の事業環境を根本から変えます。

01

系統整備計画への早期アクセス

送配電設備の計画的整備が国・広域機関の関与のもとで進められる中、EPC事業者として系統整備計画の情報に早期にアクセスすることが重要です。
下記の情報を把握することで、系統接続の確実性が高い案件を優先的に開発できます。
電力会社、広域機関、自治体との情報パイプライン構築が競争優位性の源泉となります。

  • どのエリアで、いつ、どの程度の系統増強が行われるか
  • 地域間連系線だけでなく地内系統の整備計画
  • GX産業立地政策による産業誘導の対象地域
02

GX産業立地政策との連携

EPC事業者として、自治体のGX産業立地計画に参画し、企業誘致と太陽光発電開発を一体で提案することで、大規模案件の獲得機会が広がります。
「産業立地+電源開発」というパッケージ提案が新たな事業モデルとなります。

  • データセンター、半導体工場などの企業誘致
  • 企業の電力需要に対応する太陽光発電所の開発
  • 送配電網の増強計画との調整
  • 自治体の財政支援・税制優遇の活用
03

調整力市場への対応準備

再エネ大量導入に伴う需給調整のため「同時市場」導入が検討されており、太陽光発電も調整力提供を求められる可能性があります。
「調整力を提供できる太陽光発電所」としての設計が標準となります。

  • 蓄電池併設による出力平準化
  • 出力制御対応システムの標準装備
  • 需給調整市場への参加体制
  • アグリゲーターとの提携強化
04

中長期取引市場を活用した電源開発

小売事業者の中長期取引市場整備により、発電事業の予見性が高まります。
EPC事業者として、新規案件開発時に中長期取引市場での売電契約を前提とした事業性評価を提供することで、金融機関の融資判断を容易にできます。

  • FIT/FIP終了後の安定的な売電先確保
  • 金融機関の融資判断の容易化
  • 発電事業の長期的な収益予見性向上
  • 小売事業者との長期契約による安定収益
05

火力発電事業者との協業モデル構築

火力発電が「調整力」として維持・確保される方針が明確化された中、火力発電事業者との協業モデルが有効です。
「火力発電を代替する」という対立構図ではなく、「火力発電と共存し、調整力の負担を軽減する」という協調的な価値提案が求められます。

  • 太陽光発電で昼間のベースロードを賄う
  • 火力発電が夜間・悪天候時のバックアップと調整力を提供
  • 電力システム全体の最適化に貢献
  • 火力発電事業者との共同プロジェクト開発

市場メカニズムから計画的資源配分への転換

第7次エネルギー基本計画を踏まえた電力システム改革は、「安定供給」「脱炭素化」「安定的な価格水準での供給」という3つの方向性のもと、計画経済的な手法を大胆に導入しています。

計画経済的手法の具体例

  • 料金前倒し交付による資金調達支援
  • 国・広域機関による系統整備計画の確認
  • 財政融資を活用した電気事業者への融資
  • GX産業立地政策による産業配置の誘導

火力発電を「調整力」として維持・確保する方針の明確化、送配電設備の計画的整備のための国の強力な関与、脱炭素電源の豊富な地域への産業立地誘導など、市場メカニズムから計画的な資源配分への転換が進んでいます。