みなさん、こんにちは!
今朝は、京都大学が開発した「鉛フリー・スズペロブスカイト太陽電池向けの新しい塗布成膜技術」に関するニュースをご紹介します。
環境負荷を抑えながら、次世代太陽電池の量産化に道を開く――非常に意義の大きい成果です。
鉛を使わず、高品質な薄膜を実現「V-CGR法」とは?

出典:京大化研
京大研究チームは、鉛を使わずに高品質なスズペロブスカイト薄膜を形成する「V-CGR法(vacuum-quenching with crystal growth regulator)」を開発しました。
ポイントを整理すると下記です。
- 鉛フリーのスズ系ペロブスカイトを高品質に成膜できる新手法
- 真空乾燥+結晶成長制御剤で、アンチソルベント工程を不要化
- 疎水性基板でも均一な薄膜を形成可能(製造安定性アップ)
- DMSOを使わないことで熱安定性が大幅向上
- モジュール面積21.6cm²に成功(従来は1cm²以下)
- ダイコーター対応で大面積・量産化にも展開可能
仕組みのイメージ「クッキーを焼く」ようなプロセス制御

出典:京大化研
記事中の説明をわかりやすくたとえると、スズペロブスカイトの小さな結晶を「生地」とし、その周囲をSnI₂と有機分子(1-ビニルイミダゾール)の“コーティング”が包みます。
これを加熱すると、包んでいた分子が揮発して抜け、残ったのは隙間のない、緻密で均一な薄膜――まるで焼き上がったクッキーのような構造です。
つまり、化学反応ではなく「乾燥と加熱の制御」で品質を生み出す製膜技術。
これは、環境対応と量産性を両立するプロセス革新といえます。
技術革新の意義、「材料」から「プロセス」へ
これまでスズ系ペロブスカイトは、「環境には優しいが性能・安定性で課題が多い」とされていました。
今回のV-CGR法は、そのボトルネックをプロセス設計で突破した点が画期的です。
特に、アンチソルベントを使わない真空乾燥法は、安全性・環境性の両面で製造現場にフィットし、既存の薄膜製造ラインにも導入しやすい。
“クリーンテック × 製造工学”のハイブリッド進化と言えるでしょう。
実用化と事業スキームの展望、政府支援と市場変化
この技術革新を後押しするように、経済産業省は9月にリコー・パナソニックHD・京大発スタートアップへの246億円支援を発表しました。
2030年の量産化を見据え、ペロブスカイト太陽電池を日本発の主力技術へと育てる戦略です。
ペロブスカイトは軽量・柔軟で、屋根や窓、車両、農業設備などあらゆる場所に設置可能。
この“場所を選ばない発電”が、地域単位の分散エネルギー構築にもつながっていきます。
EPCにとっての新しいチャンス
EPCとして注目すべきは、この流れが「地産地消 × 建材一体型 × 環境対応」を実現する基盤になる点です。
価格面で海外メーカーの製品を下回ることができれば、国産ペロブスカイト太陽電池はEPCや需要家から採用される現実的な選択肢になります。
- 軽量・曲面対応のペロブスカイトは、
BIPV(建材一体型発電)や農業ハウス発電への応用が現実的に - 鉛フリー化と製造簡略化により、
国内生産・地域工場での部材製造が可能に - 設計・施工・保守を一体で提供できる地域EPCの価値が再定義される
つまり、再エネの次の成長フェーズは、“地域のインフラに溶け込む太陽電池”をいかに設計・実装するかが焦点です。
新しい太陽電池が描く「分散エネルギー社会」
鉛フリー技術、真空製膜、国産化支援。
これらの動きは、日本の再エネ産業が再び主導権を握るための布石となるでしょう。
京大の研究は単なる学術成果ではなく、EPCや地域産業が「環境技術を実装する現場の担い手」として存在感を高める契機です。
“素材から社会実装へ”。
この流れをどう現場で取り込むかが、地域EPCの次のテーマになりそうです。