みなさん、こんにちは!

今日は、臼杵市でショウガ栽培と太陽光発電を両立させるソーラーシェアリングが稼働開始したニュースと、営農型太陽光が農家の事業になりきれない制度的な壁について共有します。

EPC事業者にとって、臼杵市の成功事例は作物特性に基づく科学的設計の重要性を示し、五重の壁は農業法人の主体性を支援する包括的なサービスの必要性を示しています。

臼杵市の成功事例:ショウガ×太陽光の理想的な組み合わせ

臼杵市のうすきエネルギー(小川拓哉社長)は1月20日、市内野津町前河内のショウガ耕作地(約3000㎡)で、農業と太陽光発電を両立させる「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」の稼働を始めました。

事業の概要

協力企業有機栽培のショウガを育てる後藤製菓
設備高さ約3mの柱に支えられた太陽光パネル
出力年間一般家庭25戸分に当たる10万kWh
買取先2030年度までに公共施設の再エネ使用率60%を目指す市が買い取り
使用先市観光交流プラザとサーラ・デ・うすき

ショウガ栽培との相性の良さ

後藤製菓によると、ショウガは日陰の方が良く育ち、以下のメリットがあります。

  1. 収量の増加
  2. 土の水分が保持され畑への水やりを減らすことが見込まれる
  3. 夏場は厳しい日差しから作業者を守る

これは、「太陽光パネルが農業の障害」ではなく「太陽光パネルが農業に貢献する」という理想的な関係を示しています。

市環境課は、以下の理由から中心部以外での営農型太陽光発電を歓迎しています。

市の戦略的意図

  • 市中心部の城下町の景観を保つ瓦ぶきの建造物はパネルの設置が難しい
  • ユネスコ食文化創造都市として農業の持続に寄与
  • 市内でエネルギーが循環することを期待

小川社長は「農作物以外の収益で農業を続けやすくなり、耕作放棄地の対策にもなる。国の補助金が活用できるので、多くの営農地に広がってほしい」と話しました。

農業法人が越えられない五重の壁

一方で、千葉エコ・エネルギーの蘒原領専務取締役は、営農型太陽光が農家の事業として根付かない背景には、制度的な壁があることを指摘しています。

実際の現場では、農業法人が主体となって発電まで担うケースは少なく、多くの場合、農地の貸し手にとどまっています。

第一の壁:莫大な初期投資

発電事業に参入するには、設備投資に莫大なコストがかかります。しかし、一農業法人が個人で負える投資規模はそう大きくありません。

第二の壁:需給管理という専門性

FITを活用した売電であれば、発電した電気を電力会社が固定価格ですべて買い取るため、需給管理の必要はありません。しかし、FIPや非FITの場合は、発電量の予測や、計画提出を発電者である農業法人が行うとなるとハードルが高くなります。

第三の壁:三省庁にまたがる制度の不明確さ

営農型太陽光を農業法人が行う場合、複数の官公庁が関与することになります。

環境省脱炭素分野、脱炭素と同時に生物多様性への配慮を求める
経済産業省(資源エネルギー庁)エネルギー分野、電力の安定供給や安全性を重視
農林水産省農業分野、農家や農地の保護

第四の壁:農地適格法人から外れるリスク

営農型太陽光を行うことで、農地適格法人から外れ、農地の購入ができなくなる可能性があることも、大きな障壁です。

農業法人には、売上の過半を農業によるものとするなど、一定の要件が課されています。そのため、発電事業など農業以外の事業の売上が農業の売上を上回ってしまうと、農地を買えなくなったり、是正を求められたりする可能性があります。

農林水産省で今年、「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」が開催されるなど、営農型太陽光に関しては、どのような形で運用していくのがよいのか、まだまだ整理・議論の段階にあります。

第五の壁:心理的な抵抗感

先祖代々受け継いできた農地の使い方を変えることには、心理的な抵抗感が生じます。

周囲では、農業だけで事業を成り立たせることに苦労している方や、耕作放棄地を持て余している方も少なくありません。そのような状況の中で営農型太陽光などに取り組むことが、周囲から「抜け駆け」のように受け取られてしまうのではないかという不安もあります。

EPC事業者が取り組むべき5つの支援戦略

臼杵市の成功事例と農業法人が直面する壁は、EPC事業者に具体的な行動指針を示します。

01

作物特性に基づく科学的な設計提案

臼杵市のショウガ事例が示すように、「日陰を好む作物」との組み合わせが営農型太陽光の理想形です。

日陰を好む作物のデータベース構築

  • ショウガ
  • ミョウガ
  • フキ
  • ワサビ
  • 山菜類(タラの芽、こごみ、ウドなど)
  • その他地域特産品

EPC事業者として、地域の気候・土壌に適した作物を科学的根拠に基づいて提案できる体制を整えることが重要です。

専門機関との連携

  • 農業試験場
  • 大学農学部
  • JA営農指導員

これらとの連携により、作物選定の専門性を高めることが差別化要素となります。

02

自治体の再エネ目標との連携強化

臼杵市は2030年度までに公共施設の再エネ使用率60%を目指し、営農型太陽光の電力を買い取っています。多くの自治体が同様の目標を掲げており、EPC事業者として自治体の再エネ調達計画に営農型太陽光を組み込む提案が有効です。

提案のポイント

  • 「農業振興」と「再エネ目標達成」を同時に実現できるという価値
  • 市中心部の景観保全との両立
  • 地域内でのエネルギー循環
  • 耕作放棄地の有効活用

これらを明確に示すことで、自治体からの支援を獲得できます。

03

農業法人の資金調達支援

初期投資の大きさという壁に対して、EPC事業者が資金調達を支援する仕組みが必要です。

包括的な資金調達サポート

補助金申請支援
  • 国の脱炭素関連補助金
  • 自治体の農業振興補助金
  • 地域脱炭素移行・再エネ推進交付金
金融機関との提携
  • 低利融資の斡旋
  • 地銀の再エネ融資プログラムの活用
支払いスキームの多様化
  • リース・割賦など初期投資を分散
  • 発電収益による分割払い
共同出資モデル
  • 複数農業法人の共同出資による投資規模の拡大支援
04

需給管理のアウトソーシング提供

需給管理や計画提出という壁に対して、EPC事業者がこれらの業務を代行・支援する体制を構築すべきです。

アグリゲーターとの提携

  • 発電量予測
  • 需給調整
  • 市場取引
  • OCCTO報告
  • 環境価値の買い取り

農業法人は本業の農業に専念できます。
「農業法人でも発電事業ができる」という実現可能性を示すことが重要です。

05

農地適格法人要件への対応支援

発電収入が農業収入を上回ると農地適格法人から外れるリスクに対して、EPC事業者が制度リスクを最小化する支援を提供できます。

対応支援の内容

発電規模の最適化
  • 農業収入とのバランスで発電規模を設計
  • 農地適格法人要件を維持できる範囲での最大化
発電収入を農業収入として認めてもらう交渉支援
  • 自治体・農業委員会との調整
  • 先行事例の情報提供
制度動向の継続的な情報提供
  • 農水省の「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」の議論動向
  • 制度変更の見通し

作物選定という「成否を分ける要素」

臼杵市の事例が示すのは、営農型太陽光における作物選定の決定的な重要性です。

ショウガは日陰の方が良く育つため、太陽光パネルの日陰が、

  • 収量増加につながる
  • 土の水分が保持され水やり軽減
  • 夏場の作業者を厳しい日差しから守る

これは、「太陽光パネルが農業の障害」ではなく「太陽光パネルが農業に貢献する」という理想的な関係です。

従来、営農型太陽光の統計では「さかき・しきみ」が急増したり急減したりと、作物選定が安定していませんでした。これは、発電収益優先で農業が形骸化していた証左です。

臼杵市のショウガ栽培×太陽光発電の事例は、作物選定の重要性と自治体連携の有効性を示す成功モデルです。ショウガが日陰を好むという作物特性に着目し、科学的根拠に基づいて設計することで、農業と発電が真に両立しています。

一方で、農業法人が発電事業の主体となるには、初期投資・需給管理・三省庁制度・農地適格法人・心理的抵抗という五重の壁が存在します。

EPC事業者にとって、これらの壁を一つずつ取り除く支援体制を構築することが、営農型太陽光市場を本格的に開拓する鍵となります。