みなさん、こんにちは!

今回は、経済産業省が打ち出した2つの重要な制度見直しについて取り上げます。
ひとつは、FIT・FIPの調達価格を物価上昇などに応じて再設定可能にする新方針。
もうひとつは、非化石価値取引市場における下限価格引き上げの検討です。

いずれも再エネ投資の停滞を防ぎ、持続的な導入を促すための制度調整として注目されています。

FIT・FIP価格を「再設定可能」に ― インフレ対応の柔軟化

エネルギー庁は2026〜27年度のFIT(固定価格買取制度)およびFIP(フィード・イン・プレミアム)価格について、物価高やコスト上昇を織り込んで再設定できる仕組みを導入する方針を固めました。

これまで再エネ設備のコスト上昇が価格に反映されるまでに時間がかかり、特に施工業者やEPC事業者にとって「採算リスク」が問題視されていました。

今回の制度改定により、原材料費や人件費の上昇を踏まえた価格見直しが可能となり、投資判断や契約設計の柔軟性が大きく高まることが期待されます。

非化石価値市場の「下限価格」見直し ― 環境価値の適正化へ

一方、非化石価値取引市場では、約定価格が下限(0.4〜0.6円/kWh)に張り付く状況が続いています。
この結果、「追加性のある再エネ(新規PPAなど)」の価値が正当に評価されず、環境価値全体が“安売り状態”になるという構造的な課題が生じていました。

経産省はこの問題を是正するため、下限価格の引き上げと制度設計の見直しを検討しています。
これにより、PPA市場での再エネ価値の価格形成が安定し、RE100企業や自治体の再エネ調達がより信頼性を持つ方向へ進む可能性があります。

再エネ市場の健全化が進む ― 「FIT依存」から「市場連動」へ

今回の2つの見直しは、方向性として明確です。
すなわち、再エネ市場を“補助依存”から“価格形成型”へと移行させるプロセスの一環です。

FIT(発電価格)と非化石証書(環境価値価格)は本来別領域ですが、PPAなどの市場取引では双方が相互に影響し合う関係にあります。
このため、両者の価格設定を連動的に見直すことは、再エネ投資全体の透明性と持続性を高めるうえで重要です。

EPCに求められる対応 ― 価格制度を前提にした提案設計へ

EPC事業者にとって、この制度変更は“背景知識”ではなく実務条件になります。

特に次の3点が今後の提案・設計において重要です。

  • FIT/FIP再設定のタイミングを踏まえた案件収支シミュレーションの見直し
  • 非化石証書価格を組み込んだPPA提案モデルの再構築
  • 制度改定を踏まえた顧客向け投資判断資料の更新

市場が動くタイミングを先読みし、制度・コスト・価値を連動させた設計力が、今後のEPC競争力を左右するポイントになります。

再エネ価値の「正しい価格」をつくる時代へ

FIT導入期の「普及促進」から、今は「市場形成と持続性」の段階に入りました。
再エネの価値を正しく測り、正当に取引する仕組みを整えることこそ、カーボンニュートラル実現に向けた次のフェーズの鍵となります。

EPCとしても、制度動向を先取りした提案設計を続けながら、地域と企業の双方にとって持続可能な再エネ導入を支えていきたいと思います。