みなさん、こんにちは!

山梨県で、光を透過する有機薄膜太陽電池を使ったユニークな実証が始まりました。
今回の対象は県オリジナル品種「サンシャインレッド」。
透明なフィルム状の太陽電池をブドウ棚に設置し、発電した電力でLED照射を行うことで、着色を促進しつつ発電も行うという、これまで実現が難しかった“栽培とエネルギー生産の両立”に挑戦しています。

光を透過しながら発電する「有機薄膜太陽電池」とは何か

今回の実証の最大のポイントは、従来のパネルとは異なる“透明で光を通す発電フィルム”を用いている点です。

従来パネルとの決定的な違い

  • 黒く不透明 → 遮光のため農作物の生育に影響
  • 重量があり、農業施設に設置しにくい

有機薄膜太陽電池の特長

  • フィルム状で軽量
  • 透明度が高く、光を通す
  • 植物の生育に必要な光を妨げない
  • 透過する光の“種類”を制御できる(波長制御)

これにより、「日当たりを確保しながら発電する」という従来の営農型太陽光の最大のハードルがクリアされます。

ブドウの着色向上に太陽電池が貢献する仕組み

山梨県は、サンシャインレッドの着色を改善するため、発電した電力でLEDの下方照射を行う仕組みを採用しています。

測定中のポイント

  • 有機薄膜太陽電池で発電
  • その電力でLED照射
  • 着色・品質向上を促進

太陽光と人工光を組み合わせ、栽培環境をコントロールしながら品質を高めるという“エネルギー循環型の農業モデル”が実現します。

営農型太陽光の“根本的な弱点”をどこまで解消できるのか

営農型太陽光の従来課題は次の2点でした。

従来のジレンマ

  • 作物の光合成に必要な光を遮ると収量が落ちる
  • けれど発電するにはパネルが必要

有機薄膜太陽電池がもたらす転換

  • 必要な波長の光は透過させる
  • 不要な波長で発電
  • 遮光率問題が大幅に低減
  • 生育阻害が起こりにくい

さらに、発電したエネルギーをLED照射や温度管理に回すことで、「発電するほど作物品質も上がる」という、従来とは真逆の関係を作り出せます。

営農型が抱えてきた構造的な“トレードオフ”から“相乗効果”への転換が始まっています。

山梨県が掲げる「カーボンフリー農業」とは

山梨県は、再エネとグリーン水素を使った農業のエネルギー自給自足を進めています。

背景にある3つの目的

  • 農業コストの削減(電気代・燃料代)
  • 高付加価値化(カーボンフリー農産物)
  • 国際的なエネルギー価格変動への耐性

特に、輸出も視野に入る高級ブドウ「サンシャインレッド」では、“カーボンフリー栽培”というブランド価値が販路拡大に直結します。

農産物の価値自体に「環境価値」が追加される時代が来ている、と言えます。

EPC事業者にとっての新しい市場可能性

有機薄膜太陽電池は、EPCにとっても大きなビジネス転換点です。

新たな提案余地として、

01

既存営農型のリノベーション需要

遮光の問題で収量低下している案件への改善提案。

02

高単価作物×発電の複合提案

ぶどう・いちご・トマトなど施設園芸で高収益モデルが成立。

03

“農作物+環境価値”をセットで提案できる

食品企業・流通業との協業も可能。

04

発電×LED×環境制御の複合設備化

EPCの領域が「農業DX」へ拡張。

2027年までの実証で得られるデータが確立されれば、一気に市場が広がる可能性があります。

有機薄膜太陽電池は、営農型太陽光の課題とされてきた「遮光問題」を根本から解決する技術であり、農業と発電を両立させるだけでなく、品質向上・コスト削減・脱炭素の同時達成という新たな価値を生み出す可能性があります。

山梨県の実証はその第一歩であり、“発電が農業を強くする”という新しい営農モデルの実現が見えてきました。

2027年以降、この領域が本格化する可能性は十分にあり、EPCとしても早い段階から技術動向を押さえておくことが大きな差別化につながります。