みなさん、こんにちは!

今日は、太陽光パネルとEVバッテリーのリユースが本格化し始めているニュースを共有します。

清水建設は東急不動産の使用済みパネルを建設現場に垂直設置し、資材置き場の目隠しと防犯効果を実現。福岡県は中古パネルとEVバッテリーをセットで貸し出すサービス構築に取り組みます。

2012年のFIT開始から約20年後の2030年代後半、初期に設置された太陽光パネルが一斉に耐用年数を迎えます。国の予測では2040年代に全国で年間50万トンに達する使用済みパネルに対して、現状のリサイクル体制は圧倒的に不足しています。

福岡県内ではリサイクル施設の処理能力が年間計約4000トンと、県内導入量(最大年約3万5000トン)を大幅に下回り、多くが埋め立て廃棄されています。この構造的なギャップが、リユース市場を立ち上げる原動力となっています。

清水建設の実証が示す「リユースパネルの実用性」

東急不動産と清水建設は1月9日、太陽光発電所の使用済みパネルをリユースし、清水建設の北海道内建設現場2カ所に設置したと発表しました。

設置概要

設置場所大沼トンネル峠下工区新設工事、松前2期陸上風力発電所建設工事
パネル仕様出力310W/枚のリユースパネル(ハンファQセルズ製)25枚
システム構成蓄電池併設で最大出力7.75kW
用途現場モニター、照明の電力に活用

重要なのは、地面に対して垂直に太陽光パネルを設置することで資材置き場の目隠しにもなり、防犯面でも効果を発揮しているという点です。

大沼トンネル峠下工区新設工事では、鉛蓄電池(63.3Ah)を2台併設し、最短36分で満充電状態となり、満充電時には8台の現場モニターを約10時間稼働できます。

この事例が示すのは、リユースパネルは補助電源として十分に機能し、さらに垂直設置により付加価値(目隠し・防犯)を生み出せるという実用性です。

福岡県が構想する「循環型エネルギーシステム」

福岡県は、中古の太陽光パネルと電気自動車(EV)用バッテリーのリユースサービスの構築に取り組むことを発表しました。

サービスの概要

仕組み家庭や事業所から回収したパネルとバッテリーをつなぎ合わせ、発電と蓄電ができるシステムに加工
提供方法定額で事業者に貸し出す
想定用途夜間などに補助的に使用
連携先県内のリユース業者や自動車メーカー

県は、システムの安全性と耐久性、サービスの採算を検証するため、まずは県有施設で実験的に導入し、新年度当初予算案に関連費用を計上する方針です。

このモデルの本質は、「所有」から「利用」への転換です。事業者は高額な初期投資なしに、定額料金で発電・蓄電システムを利用でき、夜間などの補助電源として活用できます。

福岡県が解決を目指す三つの課題

  1. 使用済みパネルの有効活用
  2. 中古EVバッテリーのレアメタル海外流出防止
    (中古EVの8割が輸出されている)
  3. 事業者の初期投資負担軽減

リユース業者や自動車メーカーとの連携により、回収・検査・加工・メンテナンスまでをサプライチェーン化することで、持続可能なビジネスモデルとなります。

2030年代後半「年間50万トン廃棄時代」という現実

太陽光発電は東日本大震災後の2012年、固定価格買い取り制度(FIT)が始まると企業や家庭で急拡大しました。

太陽光発電の拡大推移

2012年度累計設備導入量の基準年
2023年度約7700万kW(2012年度の8倍)
2040年度目標電源構成に占める割合を9.8%(2023年度)から23〜29%へ

一方で、太陽光パネルの耐用年数は20〜30年とされ、増加する廃棄パネルの処理が課題です。

使用済みパネルの排出予測

2030年代使用済みパネルの排出が急増
2040年代全国で年間50万トンに達する(国の予測)

しかし、リサイクル環境は整っていません。福岡県の事例が典型的です。

福岡県のリサイクル体制の現状

リサイクル施設の処理能力年間計約4000トン(2024年度時点)
県内導入量最大年約3万5000トン
ギャップ処理能力が導入量を約9倍下回る
現状多くが埋め立て廃棄されている

この構造的なギャップが全国的に存在し、2030年代後半には処理しきれない使用済みパネルが大量に発生することが確実視されています。

リサイクルvsリユース:コストと環境負荷の違い

使用済みパネルの処理には、リサイクルとリユースの二つの選択肢があります。

リサイクル

プロセスパネルを分解して資源回収する
課題処理能力の不足、コスト高、環境負荷
福岡県の例4施設で年間計約4000トンの処理能力

リユース

プロセス製品として再使用する
メリット環境負荷とコストの両面で優位性
実用性清水建設の事例が証明

リユースは「パネルを分解する」プロセスを省略できるため、環境負荷とコストの両面で優位性があります。清水建設の事例が示すように、リユースパネルは建設現場の補助電源として十分に機能します。

2030年代後半の大量廃棄時代に向けて、リサイクルだけでは処理能力が圧倒的に不足するため、リユース市場の立ち上げは産業界全体の急務です。

「垂直設置」という設置手法の可能性

清水建設の事例で注目すべきは、「垂直設置により資材置き場の目隠しと防犯効果を発揮している」という点です。

垂直設置のメリット

省スペース地面の占有面積を最小化
目隠し効果資材置き場、駐車場などのプライバシー確保
防犯効果物理的な障壁として機能
用地制約への対応都市部での新たな設置手法

従来の太陽光パネルは「地面に対して角度をつけて南向きに設置」するのが一般的でしたが、垂直設置は「発電効率よりも省スペース・多目的利用を優先する」という新たな設計思想を示しています。

特に、用地制約がある都市部での自家消費案件では、垂直設置により駐車場の目隠し、建物の外壁、フェンス代わりなど、付加価値を生み出せます。

EPC事業者が参入すべき5つのリユース関連ビジネス

パネルリユース市場の立ち上がりは、EPC事業者に新たな事業機会を提供します。

01

既設発電所のパネル診断・リユース判定サービス

2030年代後半に向けて、既設発電所のパネルがリユース可能かどうかを診断するサービスが必要になります。この診断サービスは、O&M業務の延長線上に位置づけられ、既存顧客への追加サービスとして提供できます。

提供内容

  • パネルの性能測定(出力、効率、劣化状況)
  • 劣化診断(ホットスポット、マイクロクラック、絶縁抵抗)
  • リユース適性判定(「廃棄すべきか、リユースすべきか」の技術的根拠)
  • 残存価値評価(リユース市場での想定価格)
02

リユースパネルを活用した新規案件提案

清水建設の事例が示すように、リユースパネルは建設現場、工場、倉庫などの補助電源として十分に機能します。特に、「初期投資を抑えたいが再エネ導入は実現したい」という中小企業のニーズに応えられます。

提供内容

  • 新品パネルよりも安価に調達できるリユースパネルを活用
  • 小規模自家消費案件の初期投資を抑制
  • 垂直設置により目隠し・防犯という付加価値を提供
  • 建設現場、駐車場、工場敷地など用地制約がある場所での設置
03

パネル回収・リユース業者との提携

福岡県モデルのような循環型システムでは、パネル回収・検査・加工を担う専門業者との連携が不可欠です。「建設から廃棄・リユースまで」をワンストップで提供できる体制を整えることで、発電所オーナーの長期的なパートナーとなれます。

サプライチェーン構築

  • EPC事業者:既設発電所の撤去・パネル回収を請け負う
  • リユース業者:回収したパネルの検査・加工・販売
  • 自動車メーカー:EVバッテリーの回収・検査・供給
04

EVバッテリーとのセット提案

福岡県が中古パネルとEVバッテリーをセットで貸し出すように、EPC事業者も新品パネルとEVバッテリー(新品・中古)をセットで提案するモデルが有効です。特に、BCP(事業継続計画)対応として「災害時の電力確保」を訴求できます。

セット提案のメリット

  • 発電(パネル)と蓄電(バッテリー)を一体化
  • 夜間や天候不良時の補助電源として機能
  • 中古EVバッテリーのレアメタル海外流出防止という社会的意義
  • 初期投資を抑制(中古バッテリーの活用)
05

撤去・廃棄・リサイクル計画の初期段階からの組み込み

新規案件の設計段階から、20〜30年後の撤去・廃棄・リサイクル計画を組み込むことが、今後の標準となります。「建てたら終わり」ではなく「廃棄まで責任を持つ」という姿勢を明確にすることで、発電所オーナーや金融機関からの信頼を獲得できます。

組み込むべき項目

  • 撤去費用の積立計画(年間積立額、最終処分費用)
  • リユース可能性の考慮(リユースしやすい設計、メンテナンス記録の保管)
  • リサイクル施設への搬入ルート確保(地域のリサイクル業者との事前協定)
  • 廃棄時の責任主体の明確化(所有者、EPC事業者、O&M事業者の役割分担)

福岡県モデルが標準化すれば広がる市場

福岡県の「定額貸し出しモデル」が成功すれば、他の自治体への横展開が期待され、リユース市場の標準的なビジネスモデルとなる可能性があります。

定額貸し出しモデルの優位性

事業者側初期投資不要、メンテナンス不要、定額で利用
自治体側使用済みパネル・EVバッテリーの有効活用、地域産業育成
リユース業者側安定的な需要、サプライチェーンの確立

このモデルが全国に広がれば、EPC事業者はリユースパネル調達先を全国的に確保でき、顧客に対して「新品」「リユース」の選択肢を提示できるようになります。

特に、「コストを抑えたい」「環境配慮をアピールしたい」という顧客ニーズに対して、リユースパネルは有力な選択肢となります。

2030年代に向けた準備が競争力を左右する

2030年代後半の大量廃棄時代は、確実に到来します。今から準備を始めた企業が、リユース市場で先行者利益を獲得します。

  • リユース業者との提携関係構築
  • パネル診断技術の習得(性能測定、劣化診断)
  • 垂直設置など新たな設置手法の技術開発
  • EVバッテリーとのセット提案ノウハウの蓄積
  • 撤去・廃棄・リサイクル計画を標準提案に組み込む

清水建設の建設現場活用、福岡県の定額貸し出しモデルなど、先進事例が示すのは「リユースの実用性」と「循環型システムの可能性」です。

「新品パネルを売る」だけでなく、「使用済みパネルを回収し、リユースし、最終的にリサイクルする」という循環型ビジネスモデルを確立できる企業が、2030年代以降の太陽光市場で生き残ります。