みなさん、こんにちは!
太陽光発電所で続いてきたケーブル盗難問題が、いま大きな転換点を迎えています。
2025年に入り盗難件数そのものは減少傾向。しかし、それは「解決」ではありません。
むしろ、発電事業者を直撃しているのは、“保険が戻らない”という深刻な構造問題です。
止まらぬ被害と“保険崩壊”の現実
新データによれば、ケーブル盗難による保険支払額はこの5年で約20倍。
金属盗の認知件数も5倍に増えました。
2025年以降、取り締まり強化で件数は減少し始めたものの、保険引き受け環境は改善していません。
むしろ損害保険会社は、太陽光発電を「自然災害 + 盗難の二重リスクを抱える高リスク案件」と評価し、審査基準をさらに強化。
その結果、
- 免責が大きすぎて実質的に保険が使えない
- ケーブル盗難が補償外になり始めた
- 大規模発電所は補償上限でカバーしきれない
- 一度被害を受けると保険料が大幅増+条件悪化
- 最悪の場合、不担保化(=保険加入不可)
といった“保険崩壊”ともいえる状況に発展しています。
低圧案件へ広がる盗難リスク──標的の変化を読む
以前は特別高圧の大規模発電所が主なターゲットでした。しかし近年は、低圧発電所が標的に移行。
理由は明快です。
- 防犯設備が薄い
- 見通しが悪く、侵入しやすい
- 林立地域は短期間で複数件を回れる
- 保険不適用・免責増により“泣き寝入り”が発生しやすい
とくに北関東(茨城・千葉・栃木・群馬・埼玉)+福島の6県で被害が集中。
同一犯行グループが複数日連続で回るケースも報告されています。
法整備は進むが、事業者の“自衛”は依然必須
2025年9月から施行された「金属盗対策法」により、
- 匿名取引の抑制
- 買い取り業者の本人確認義務
- 取引記録・警察への申告義務
- 犯行用具(大型カッター等)の携帯禁止
などが法制化され、出口対策は大きく前進しました。
しかし、法整備だけで発電所が安全になるわけではありません。
組織的グループは事前偵察を徹底し、電気工事経験者を含むプロ集団も存在。
したがって、EPC・事業者は「入らせない」「取らせない」を現場レベルで実装する必要があるという段階に入っています。
EPC・発電事業者が取るべき実効的な自衛策
JPEAでは「災害・盗難対策ガイドライン」「リスク対策チェックシート」を公開し、リスク対策を体系化しています。
実効的な自衛策のポイントをまとめると次の通り。
入らせない(侵入防止)
- フェンス強化、草刈りで見通しを確保
- AI監視カメラ・赤外線センサーの導入
- 光+音による威嚇装置を設置
- 監視カメラの録画保管を長期化
- 警備会社の巡回 or 駆けつけ契約
取らせない(物理防護)
- コロガシ配管を避け、地下埋設を基本にする
- ハンドホールに強固なロック
- ケーブル管路を切断されないよう保護
- アルミケーブルへの置き換えによる換金価値の低減
地域連携(横のつながり)
- 近隣発電所との連携・情報共有
- 地元住民による見回り協力
- 被害発生エリアでの予防強化
盗難は単独の発電所の問題ではありません。
地域全体で連鎖的に狙われるため、広域防犯体制の構築が重要になります。
ケーブル盗難は“コスト要因”ではなく、再エネ信頼性の問題へ
ケーブル盗難は、単なる資産被害ではなく、“社会インフラである太陽光発電を揺るがす構造リスク”に変わりました。
- 盗難件数は減っても安心はできない
- 保険引き受けは厳格化し続ける
- 低圧案件は特に脆弱
- 法整備が進んでも“現場の自衛”は不可避
- EPCが初期提案フェーズから防犯を織り込む時代
というのが、現在の太陽光市場のリアルです。
太陽光発電は、晴天時には国内電力の約3割を支える重要インフラ。
このインフラを守るためには、法規制・保険・業界の自助努力が有機的に融合することが求められています。
