出典:早稲田大学 研究活動 Research Activities

みなさん、こんにちは!

今日は、早稲田大学と桐蔭横浜大学が共同開発した「アップコンバージョン型ペロブスカイト太陽電池」についてご紹介します。

この研究は、これまで利用できなかった近赤外光を電気に変えるという、太陽電池の限界を一歩押し広げる画期的な成果です。

近赤外光を“見える光”に変える、アップコンバージョン技術とは

これまでのペロブスカイト太陽電池は、太陽光のうち「可視光」しか活用できませんでした。
しかし太陽光の約40%は、人の目には見えない近赤外光です。

今回の研究では、有機色素と希土類ナノ粒子を組み合わせ、近赤外光を“可視光に変換”する「アップコンバージョン」技術を導入。
その結果、従来のペロブスカイト層でも近赤外光を発電に利用できるようになりました。

しかも、この変換は自然光下でも機能します。
従来のアップコンバージョン技術はレーザー光レベルの強光が必要でしたが、弱い太陽光でも安定して動作する点が今回の大きなブレイクスルーです。

技術のポイントまとめ

  • 有機色素+希土類ナノ粒子で近赤外光を可視光に変換
  • ペロブスカイト層が可視光を吸収し、発電効率を向上
  • エネルギー変換効率16%以上
  • 開放電圧1.2Vを維持(高電圧かつ安定)
  • 太陽電池の理論限界(ショックレー・クワイサー限界)を超える可能性
  • 今後の課題は鉛フリー化、長期安定性の確保

「理論限界」を超える挑戦、バンドギャップの壁を突破

太陽電池の発電効率には、「バンドギャップ(禁制帯幅)」という物理的な限界があります。
バンドギャップより小さいエネルギーの光は吸収できず、これが太陽電池の変換効率を制限してきました。

今回のアップコンバージョン技術は、近赤外光を“可視光”へ変換して再利用するというアプローチで、この壁を越える新しい設計思想を提示しています。

従来の太陽電池が「どう吸収するか」を競っていたのに対し、本研究は「吸収できない光をどう変換するか」という新しい発想です。
まさに、太陽電池研究の“パラダイムシフト”と言えるでしょう。

弱光発電が切り拓く応用の広がり

アップコンバージョン技術は、光が弱い環境でも発電できるという特徴を持ちます。
そのため、将来的には以下のような応用も期待されます。

  • 建材一体型太陽電池(BIPV)
  • 車載・モビリティソーラー
  • 屋内や曇天環境でも発電できるデバイス
  • ウェアラブル・IoT端末の自立電源化

また、京都大学が開発した「鉛フリースズペロブスカイト」の技術と組み合わせれば、環境負荷の少ない完全鉛フリー高効率太陽電池の実現も近いかもしれません。

光を無駄にしない設計思想

EPCという視点から見ると、この研究が示す「光を無駄にしない」という思想は非常に示唆的です。
限られた設置面積の中で、より多くの光を活かす発想は、これからの高効率・省スペース型発電システム設計にも通じます。

ペロブスカイト太陽電池の商用化が進む中で、アップコンバージョンのような“光活用の再設計”は、EPC提案の差別化ポイントにもなっていくでしょう。

技術革新の流れをいち早くキャッチし、「どの光も無駄にしないエネルギーデザイン」を意識していきたいですね。