みなさん、こんにちは!

今回は、岐阜県恵那市で生まれた「カーボンオフセット栗きんとん」の取り組みを紹介します。
市内の再生可能エネルギーから生まれた環境価値(Jクレジット)を活用し、特産品である栗きんとんに“カーボンオフセット”という新たな価値を付与した、全国的にも珍しい事例です。

地域新電力会社・恵那電力と、地元和菓子店・良平堂、そして恵那市が連携して実現したこのプロジェクトは、「地域の再エネで地域の特産品をアップデートする」という、これからの地方創生・脱炭素の理想形を体現しています。

栗きんとん業界初のカーボンオフセット商品が誕生

恵那市の太陽光発電設備(市内10カ所)から生まれたJクレジットを活用し、栗きんとんに付与したことで、栗きんとん業界初となるカーボンオフセット商品が誕生しました。

商品名カーボンオフセット栗きんとん
販売開始2025年12月1日〜2026年2月頃まで
販売場所良平堂本店、東京八重洲店、公式オンラインショップ

さらに、ふるさと納税返礼品にも採用。
恵那市の特産品としてのブランド価値が、より高まる取り組みとなっています。

この商品の最大の特徴は、製造過程で排出されるCO2を、恵那市内で生まれた再エネ由来のJクレジットで相殺している点です。
消費者は栗きんとんを購入することで、環境配慮型の商品を選択し、地域の脱炭素化に間接的に貢献できるという新しい価値が加わっています。

Jクレジットとは?なぜ特産品の付加価値になるのか

Jクレジット制度とは、省エネや再エネ導入によって削減・吸収されたCO2を国が認証し、取引可能なクレジットとして発行する仕組みです。
企業や自治体は、このクレジットを購入することで自社のCO2排出量を相殺(カーボンオフセット)できます。

今回の栗きんとんは、恵那市が太陽光発電で創出したJクレジットを活用することで、「カーボンニュートラルな和菓子」として差別化されました。

近年、消費者の環境意識が高まり、「どのように作られたか」「環境にどれだけ配慮しているか」が購買行動に影響を与えるようになっています。
特に、ふるさと納税や地域ブランド商品においては、ストーリー性や社会貢献性が重要な差別化要素となります。

カーボンオフセット商品は、こうした消費者ニーズに応えるだけでなく、地域の脱炭素目標達成にも貢献する一石二鳥の取り組みです。

「恵那モデル」とは?FITに依存しない地域新電力の挑戦

恵那電力は、日本ガイシ、恵那市、中部電力ミライズの三者出資により2021年4月に設立された地域新電力会社です。太陽光発電設備と蓄電池を自社保有する独自の運営モデルを構築しています。

01

FIT制度に頼らない自立モデル

固定価格買取制度(FIT)を利用せず、自社で発電・販売・クレジット創出までを一貫して行うことで、市場変動リスクを抑え、経営の安定性を高めています。

02

エネルギーの地産地消

市内10カ所の太陽光発電設備から生まれた電力を市内で消費し、余剰電力は蓄電池に蓄えることで災害時のレジリエンス向上にも貢献しています。

03

環境価値の地域循環

発電によって生まれたJクレジットを市内事業者に提供し、特産品の付加価値化を支援。
これにより、地域経済と環境目標の両立を実現しています。

このモデルは、「再エネを作るだけでなく、その価値を地域内で最大限に活かす」という点で、全国の地域新電力のロールモデルとなりつつあります。

シリーズ展開で見えてきた「地域脱炭素プラットフォーム」の可能性

恵那電力によるカーボンオフセット商品の開発は、今回の栗きんとんで第2弾となります。

第1弾日本酒「女城主」(岩村醸造) → 2023年にふるさと納税返礼品に採用
第2弾栗きんとん(良平堂) → 2025年12月発売、ふるさと納税返礼品にも登録
第3弾現在開発中

このように継続的に商品化が進んでいることは、単発の話題づくりではなく、恵那電力が地域の脱炭素プラットフォームとして機能している証拠です。

プラットフォーム化がもたらすメリット

  • 地元事業者は新たな設備投資なしで環境価値を商品に付与できる
  • 恵那市はゼロカーボンシティ実現に向けた具体的な成果を積み上げられる
  • 消費者は地域貢献と環境配慮を両立した商品を選べる

こうした「三方良し」の仕組みが継続的に回ることで、地域全体の脱炭素化と経済活性化が同時に進む好循環が生まれています。

ゼロカーボンシティえなの実現に向けて

恵那市は2050年までにCO2排出を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティえな」を宣言しています。
この目標達成には、行政だけでなく地域の事業者や住民が一体となった取り組みが不可欠です。

今回の栗きんとんの事例は、市民が日常的に接する特産品を通じて脱炭素を身近に感じられるという点で、非常に意義深い取り組みです。

ふるさと納税を通じて市外の人々にも恵那市の環境への取り組みを発信できることも、大きな波及効果を生んでいます。

地域再エネ × 特産品が地域ブランドの新たな武器になる

恵那市と恵那電力、そして地元企業の連携は、地域の特産品が”脱炭素というストーリー”をまとい、ブランド価値を高める新しいモデルを提示しました。

01

再エネの環境価値(Jクレジット)を特産品に付与

地域で生まれたエネルギーが、地域の商品価値を高める循環が生まれています。

02

地産地消のエネルギーが地域産業の付加価値向上に貢献

エネルギーを外部から買うのではなく、地域内で生み出し活用することで、経済効果も地域内に留まります。

03

ふるさと納税との親和性が非常に高い

環境配慮型商品は、寄付者にとって共感しやすく、選ばれやすい返礼品となります。

04

FIT依存から脱却した地域新電力モデルの成功例

補助金頼みではない持続可能なビジネスモデルとして、他地域にも応用可能です。

05

地域×企業×新電力の”三者連携モデル”が機能している

行政、民間企業、地域新電力が役割分担しながら協働することで、実効性の高い取り組みが実現しています。

カーボンオフセット化は、食品、工芸品、地元産業など幅広い分野に応用できる仕組みです。
恵那市の事例は、再エネを活かすうえで非常に大きなヒントを全国の自治体に示しています。

特に、以下のような地域には参考になるでしょう。

  • 特産品を持つ地方都市
  • 再エネ設備を導入済み、または導入予定の自治体
  • ふるさと納税で地域ブランドを強化したい自治体
  • 地域新電力の立ち上げを検討している地域

地域で生まれた再エネが、地域の特産品を未来志向のブランドに進化させる。
今回の恵那市の取り組みは、その象徴的な一例といえるでしょう。