出典:WWD(千葉県匝瑳市のカナダグース ソーラーパワープラントで大豆が育っている様子)

みなさん、こんにちは!

今日は、少し意外な組み合わせ「ファッション企業と農業」の話題を取り上げたいと思います。
外資ブランドの日本法人が、社員と共に“農業に関わる”取り組みを通じて、企業理念を実践しているというものです。

一見すると再エネとは離れた話のようですが、その裏側には「循環」「共生」「体験を通じた理念の共有」というキーワードが隠れています。

再エネ事業を展開する私たちにとっても、非常に示唆の多い内容です。

ファッション企業が“農”に挑む理由

近年、ファッション業界ではオーガニックコットンなどのサステナブル素材調達が広がる一方、実際に農地を持ち、社員が農作業に関わる企業も増えています。

今回紹介するのは、

  • 「カナダグースジャパン」が千葉・匝瑳市で行う
    ソーラーシェアリングによる有機大麦栽培とクラフトビールづくり
  • 「ケリング(グッチ/サンローランなど)」が社員と共に進める
    梅の木の再生と梅シロップづくり

という2つの取り組みです。

いずれも共通しているのは、“企業理念を体験として学ぶ”場づくりを通して、社員と地域をつなぐ点です。

ソーラーシェアリングで“理念を醸す”カナダグース

出典:WWD(「銀座ソーラーシェアリングサロン」でふるまわれたクラフトビール)

カナダグースジャパンは、匝瑳市でソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を展開する「市民エネルギーちば」と協働。
耕作放棄地を有機栽培で再生しながら、発電と農業を両立させています。

育てられた有機大麦は、地元ブルワリーと共同開発したクラフトビールの原料に。
社員たちは現地に足を運び、草刈りや整備作業にも参加しています。

平井社長の言葉が象徴的です。

「ソーラーシェアリングを知らない人も多いが、ファッション企業だからこそ伝えられる価値がある」

ここで重要なのは、「発電」ではなく「伝える」という視点。
つまり、“再エネを文化として社会に伝えるデザイン”を行っているということです。

このソーラーシェアリングは、単なる環境貢献ではなく、理念を醸すためのプラットフォームとなっています。

梅の木を“つなぐ”ケリングのファーム

出典:WWD(ケリングの梅シロップ)

一方、ケリングは表参道の自社ビル屋上にあった梅の木を伐採せず、郊外の「ケリングファーム」に移植して再生。

社員が年2〜3回訪れて、梅の手入れや雑草取りを行い、初収穫の実からつくった梅シロップを社内ギフトとして配布しました。
そこには、「人・パートナー・地球への配慮」を意味するグループ理念“care”を実体験として学ぶ狙いがあります。

梅の木の再利用という小さなアクションを通じて、“理念を五感で感じる仕組み”がつくられているのです。

“体験”がブランド価値を深める

カナダグースもケリングも、単なるCSR活動ではありません。
社員が理念を現場で体感し、ブランドの価値を「自分ごと化」する仕組みになっています。

  • ソーラーシェアリングで“再エネ × 食 × 地域”をつなぐ
  • 梅シロップづくりで“理念 × 自然 × 社員”をつなぐ

どちらも共通しているのは、“体験を通じた理念の再定義”です。

EPCが学ぶべき「関わりの設計」

EPC事業者としてこの事例を読むと、次のような学びがあります。

  • 再エネを「地域と人が関われる体験の場」として設計する
  • 営農型発電を通じて「地域ブランド」を共に育てる
  • 発電所を“理念を伝える装置”として再定義する

再エネの価値は、kWやkWhではなく、関わる人の数と深さでも測れる時代に入っています。

設計・施工だけでなく、「人と地域の関わり方」までをデザインできるEPCこそが、次の再エネフェーズの主役になるでしょう。

“理念を育てる再エネ”へ

前回紹介した「さがみこファーム」では、農業・観光・教育を融合した地域共生型ソーラーシェアリングが展開されていました。
今回の事例は、それに続くもう一つの方向性「再エネ×食×ブランド体験」による企業理念の社会実装です。

エネルギーを“売る”だけではなく、“感じ、語り、誇りにできる”かたちで広げていく。

これこそ、再エネ事業の次なる進化の姿ではないでしょうか。