みなさん、こんにちは!
今日は、中国が太陽光・蓄電池の輸出増値税還付を廃止する政策転換と、日本政府のインドとの連携強化の動きについて共有します。
中国財政部と国家税務総局は2026年1月8日、太陽光発電と電池関連製品に対する輸出増値税(付加価値税)の還付を廃止すると公示しました。太陽光関連249品目は2026年4月1日から全面廃止、電池製品22品目は2027年1月1日から完全廃止となり、中国製太陽光・蓄電池の価格が1割程度上昇する可能性が高く、すでに日本企業の一部に1割値上げの打診があります。
背景には、中国企業同士の過度な価格競争による経営悪化と、過剰生産による海外での赤字販売への批判があります。しかし同時に、これは「もはや優遇措置なしでも世界市場を支配できる」という中国の自信を示しています。
一方、経済産業省とジェトロは2026年1月、インドで太陽光設備サプライチェーンに関する視察ツアーとワークショップを開催し、日本18社・インド12社が参加しました。ジェトロは2025年8月に「日印経済安全保障協力ジョイント・アクションプラン」を提言し、太陽光発電と蓄電池を重要物資の8つのうち2つに特定しています。
中国の増値税還付廃止──「優遇終了」が示す戦略転換
中国の増値税還付廃止は、太陽光・蓄電池市場における大きな政策転換を意味します。
増値税還付廃止の概要
公示日
- 2026年1月8日
- 中国財政部と国家税務総局が公示
対象製品
- 太陽光発電関連:249品目
- 電池製品:22品目
- 太陽電池、蓄電池を製造するための原料や部品も含まれる
廃止スケジュール
- 太陽光関連249品目:2026年4月1日から全面的に廃止
- 電池製品22品目:
- 2026年4月1日~12月31日:還付率を9%→6%に引き下げ
- 2027年1月1日から完全に廃止
影響範囲
- 中国企業が本国から素材や部品を他国に輸出して組み立てた製品もコスト増になる
- 中国製太陽光と蓄電池の価格が1割程度上がる可能性が高い
増値税とは
定義
- 日本の消費税に相当する流通税の一種
- 幅広い製品に課税されている
輸出品への対応
- 輸出品に対しても課税
- しかし、中国の戦略品である太陽光発電と電池製品に関しては
海外での競争力を高めるため、いったんは課税されるものの還付されてきた
今回の廃止の意味
- この優遇措置を全面的に廃止
- 海外市場での販売価格が上がることは避けられない
段階的な還付削減の経緯
2024年12月
- 実は、太陽光発電と電池関連製品に対する増値税の還付率は
2024年12月に13%から9%に引き下げされている
今回の措置
- 9%→6%→完全廃止という段階的な削減
この一連の経緯から、中国政府は市場への影響を慎重に見極めながら段階的に優遇措置を縮小してきたことが分かります。まず2024年12月の引き下げで市場の反応を確認し、その結果に大きな問題がないと判断したうえで、最終的に完全廃止へ踏み切ったと考えられます。
「優遇廃止」の背景にある2つの戦略判断
中国が増値税還付を廃止する背景には、重要な戦略判断があります。
過度な価格競争の抑制と業界再編の促進
中国企業の状況
- 中国企業同士による過度な価格競争により経営が悪化
- 中国企業の過剰生産が海外での赤字販売につながっている
- 輸出先国の政府などからの批判が高まっている
還付削減の狙い
- 還付率の削減により、海外市場での販売価格が上がる
- こうした過度な価格競争を抑える狙い
さらなる効果
- 中国政府による優遇措置の廃止により、
競争力の高い技術とコスト力のある中国企業への集約が進む - 淘汰と再編を通じて、業界全体の健全化を図る
これは「業界再編の促進策」という側面を持っています。
市場支配力の確立──「もはや優遇なしでも勝てる」
現状認識
- すでに太陽光発電と電池製品のシェアで世界市場を席巻している
- 太陽光パネルで世界シェアの8割以上
- 蓄電池でも圧倒的シェア
中国政府の判断
- 優遇措置を廃止しても、十分に世界市場で主導権を維持できるとの読み
この判断の意味
- 単なる優遇政策の見直しではなく、初期育成段階から市場支配段階への戦略転換
- 「育成フェーズ終了、支配フェーズ開始」という宣言
価格への影響
- すでに日本企業のなかにこれらの分野で中国メーカーから
1割程度の値上げを打診されているケースもある
ただし、すべての中国メーカーが、還付廃止を機に増値税分を製品価格に上乗せするのか、コストダウンにより吸収するのか、対応が分かれる可能性もあります。
この政策転換は、日本を含む輸入国にとって重要な示唆を持ちます。中国製太陽光・蓄電池の「異常な安さ」は終わりつつあり、今後は「1割高でも中国製を買い続けるか、代替サプライチェーンを構築するか」という選択を迫られます。
日印連携の加速──「脱中国依存の現実的な道筋」
中国の優遇廃止と並行して、日本政府はインドとの連携を急速に強化しています。
経産省・ジェトロのインド視察
視察ツアー
- 2026年1月19日~21日:経済産業省と日本貿易振興機構(ジェトロ)が主催
- 太陽光発電に関連する製品・部材の製造業者が参加
- インド第2の都市ムンバイと製造業が集積するグジャラート州を訪れ、
太陽電池工場などを視察
ワークショップ
- 1月19日:
インド太陽エネルギー連盟(NSEFI)とともに、太陽光設備のサプライチェーンに関する
「日印・太陽電池製造に関するワークショップ&BtoBセッション」をムンバイで開催
参加規模
- 太陽光設備産業の関連企業など日本から18社、インドから12社参加
- 合わせて約100人が出席
この規模は、日本政府の本気度を示しています。
インドの状況と日印の共通課題
インド政府の戦略
- 2020年に「自立したインド(Self-Reliant India)」戦略を掲げる
- 海外に依存しないエネルギー源として太陽光発電の普及に積極的に取り組んでいる
導入実績
- すでに導入量は中国、米国に次ぐ世界3位となっている
課題
- 太陽電池や部品、材料に関しては中国への依存度が高く、
日印両国にとってサプライチェーンの強靭化が大きな課題となっている
この共通課題が、日印連携の強力な基盤となっています。
ジョイント・アクションプランと8つの重要物資
ジェトロの提言
- 2025年8月:
インド工業連盟(CII)、インド日本商工会(JCCII)と共同で
「日印経済安全保障協力に関するジョイント・アクションプラン」を提言
内容
- 日印間の経済安全保障の強化とサプライチェーン強靭化の重要性を強調
- 8つの重要物資・技術を特定
8つの重要物資・技術
- 太陽光発電
- 蓄電池
- 生成AI(人工知能)
- 半導体
- フラットパネルディスプレイ
- 医薬品
- 永久磁石
- コンプレッサー(圧縮機)
エネルギー分野
- 太陽光とともに蓄電池が重視されている
蓄電池関連の先行事例
- ジェトロは、「ジョイント・アクションプラン」に先立つ2025年7月、
首都ニューデリーで蓄電池と重要鉱物のサプライチェーンに関するイベントを開催 - 日本の電池サプライチェーン協議会の会員企業33社を含む両国合わせて
約70社・200人以上が参加
この積極的な動きは、太陽光発電と蓄電池が経済安全保障の中核に位置づけられていることを示しています。
高市政権下での加速
政治的背景
- 経済安全保障を重視する高市政権の下で自民党が総選挙に大勝
- エネルギー分野でもサプライチェーンの中国依存から脱却しようとの動きが
さらに活発化しそう
この政治的後押しが、日印連携を加速させています。
インド連携の現実的評価──「すぐに代替」ではなく「中長期投資」
日印連携は、中国依存からの脱却に向けた重要な一歩ですが、現実的な評価も必要です。
インドの優位性
国内需要の大きさ
- 太陽光導入量が世界3位
- 国内需要が大きいため、製造拠点としてのスケールメリットを持つ
戦略的方向性の一致
- 「自立したインド(Self-Reliant India)」戦略のもと、
海外依存からの脱却を国策として推進 - 日本との利害が一致
政府支援の期待
- 経産省・ジェトロが日印連携を推進している現状を踏まえ、
インド製品の調達には政府支援が期待できる可能性
現実的な課題
現状の中国依存
- インドの太陽電池・部品・材料も現状は中国依存度が高い
- 日印連携は「すぐに中国に代替できる」というわけではない
中長期的な取り組み
- 日印連携は、「中長期で中国依存を減らすための共同投資」という性格が強い
- 製造拠点の構築、技術移転、人材育成など時間をかけた取り組みが必要
日本企業の戦略
- インドでの製造拠点構築や技術移転を通じて、将来的な調達先多様化を図る
戦略的投資の機会と捉えるべき
この「中長期投資」という視点は、短期的なコスト削減を求める顧客への説明においても重要です。
中国以外のサプライチェーン開拓の可能性
記事の指摘
中国政府による優遇措置の廃止により、太陽光と電池の分野で、競争力の高い技術とコスト力のある中国企業への集約が進むとともに、中国以外のサプライチェーン開拓や、国産回帰へのきっかけになる可能性もある。
これが意味すること
- 1割値上げは、調達先多様化を経済合理的に検討できる水準
- これまで「中国製が圧倒的に安いから」という理由で検討されなかった
代替調達先が価格差が縮まることで現実的な選択肢になる
国産回帰
- ペロブスカイト太陽電池など、日本が技術的優位性を持つ次世代型への投資加速
- 経済安全保障の観点からの政府支援の期待
この「きっかけ」としての価値は、短期的なコスト増以上に重要かもしれません。
EPC事業者としての4つの戦略的対応
中国の増値税還付廃止と日印連携強化は、EPC事業者の調達戦略とコスト管理に直接的な影響を与えます。
中国製パネル・蓄電池の1割値上げを前提とした
価格交渉と顧客説明
丁寧な説明により、価格改定への顧客の理解を得られる可能性が高まります。
現状
- すでに日本企業の一部に1割値上げの打診がある
- 2026年4月以降、中国製太陽光・蓄電池の価格上昇は必至
サプライヤーとの交渉
- 既存の見積案件や進行中のプロジェクトについてサプライヤーと早急に価格交渉を行う
- 値上げ幅と時期を確定
顧客への説明
- 「中国政府の政策転換により調達コストが上昇する」という外部要因を丁寧に説明
- 価格改定への理解を求める
- 特に、長期契約やPPA案件では、価格上昇分の転嫁方法を事前に協議
説明のポイント
- 中国の増値税還付廃止という政策変更
- 太陽光249品目、電池22品目が対象
- 2026年4月から順次適用
- 「EPC事業者の都合ではなく、外部環境の変化」であることを明確化
調達先多様化の加速──
インド製・国産・東南アジア製の検討
中国製の価格上昇は、調達先多様化を加速させる好機です。
調達先多様化により、サプライチェーンリスクを大幅に軽減できます。
インド製の検討
- インド製パネル・蓄電池の品質・価格・納期を調査
- 代替調達先としての実用性を検証
- 経産省・ジェトロが日印連携を推進している現状を踏まえ、
インド製品の調達には政府支援が期待できる可能性
国産の検討
- ペロブスカイトなど次世代型
- 積水化学工業などの国産メーカー
- 経済安全保障の観点からの政府支援
東南アジア製の検討
- ベトナム・タイなど中国以外のアジア製造拠点
複数調達ルートの確保
- 単一の調達先に依存せず、複数の調達ルートを確保することでリスク分散
「経済安全保障対応」を付加価値とした提案
「経済安全保障対応」という付加価値は、価格以外の差別化要素となります。
高市政権下での重視
- 経済安全保障が重視され、エネルギー分野での脱中国依存が加速する見通し
- 特に、公共事業や大手企業の脱炭素案件では調達先の地政学リスクが
評価項目に含まれる可能性が高まっている
提案内容
- 調達先の多様化戦略を明示
- 地政学リスクへの対応を説明
- 経済安全保障への貢献を訴求
- 「中国製より○○円高いが、サプライチェーンリスクを軽減」という価値提案
ターゲット
- 公共事業(国・自治体)
- 大手企業の脱炭素案件
- 経済安全保障を重視する企業
中国企業の「コスト吸収」動向の注視と機会的調達
柔軟な調達戦略により、コスト増を最小限に抑えつつ、品質を確保できます。
対応の分かれ
記事では「すべての中国メーカーが増値税分を価格に上乗せするのか、コストダウンで吸収するのか、対応が分かれる可能性」が指摘されている。
柔軟な戦略
- 複数の中国サプライヤーの価格動向を注視
- コスト吸収する企業からは機会的に調達するという柔軟な戦略も有効
注意点
- あまりに安い価格は品質リスクの可能性
- 過度な値下げ圧力は長期的な関係悪化につながる
- 適正価格での安定取引を重視
中国の増値税還付廃止は、太陽光・蓄電池市場における「初期育成段階から市場支配段階への戦略転換」を示しています。
1割程度の価格上昇が見込まれる中、これは中国企業同士の過度な価格競争の抑制と業界再編の促進という側面を持つ一方、「もはや優遇措置なしでも世界市場を支配できる」という中国の自信を示すものです。
日本政府は、インドとの連携を強化し、「日印経済安全保障協力ジョイント・アクションプラン」で太陽光発電と蓄電池を8つの重要物資のうち2つに特定しています。インドは太陽光導入量世界3位であり、「自立したインド」戦略のもと海外依存からの脱却を推進しており、日本との利害が一致しています。
ただし、インドの太陽電池・部品・材料も現状は中国依存度が高く、日印連携は「すぐに中国に代替できる」というよりも、「中長期で中国依存を減らすための共同投資」という性格が強いものです。
中国製太陽光・蓄電池の「異常な安さ」は終わりつつあり、今後は「1割高でも中国製を買い続けるか、代替サプライチェーンを構築するか」という選択が求められる時代に入ります。
