みなさん、こんにちは!
今日は、2025年12月に発表された「メガソーラー支援廃止」の衝撃と、2026年以降の太陽光市場に起きる変化について共有します。
自民党が12月16日に発表した提言と、12月23日に関係閣僚会議で決定された「対策パッケージ」により、2027年度から野立て太陽光(メガソーラーおよび10kW以上の地上設置型)へのFIT/FIP支援が事実上廃止されることが決定しました。
これは単なる制度変更ではありません。太陽光の年間導入容量は2015年の10.8GWから2024年は2.5GWまで減速しており、支援廃止によりさらなる縮小が確実視されます。一方で屋根置き太陽光への重点化が進み、市場構造は根本から転換します。
2026年度が野立て太陽光でFIT/FIP支援を受けられる最後の年となるため、駆け込み特需が見込まれます。しかし2027年度以降は、野立て市場は事実上消滅し、屋根置き専業市場への完全転換が避けられません。
太陽光EPC事業者にとって、この1年は事業モデルを再構築する最後の猶予期間です。
「美しい国土」という大義の下での支援廃止
2025年12月16日、自民党政務調査会が「大規模太陽光発電事業の地域共生・規律強化に関する提言」を発表しました。12月23日には関係閣僚会議で「対策パッケージ」として正式決定されています。
提言の前文には、次のように記されています。
2012年のFIT制度開始以降、我が国の太陽光発電事業は急速に拡大し、エネルギーの自給率向上や低炭素化に貢献した。他方、地域共生上の懸念が顕在化している事例も発生し、広く関心を集めている。
再生可能エネルギーの導入にあたって、地域との共生、環境への配慮が大前提である。事業の実施に当たっては、我が国が古来より育んできた美しい国土を保全すること、及び森林伐採や不適切な開発による環境破壊・災害リスクを抑制することが不可欠である。
大規模太陽光発電事業の地域共生・規律強化に関する提言より引用
この「美しい国土」という表現は、高市早苗首相の「美しい国土が外国製(中国製)のソーラーパネルで埋め尽くされることに強く反対する」という発言を反映しています。
提言は次の3つの柱で構成されています。
- 不適切事案に対する法的規制強化
- 地域の取り組みとの連携強化
- 地域共生型への支援重点化
1と2は、環境影響評価法(環境アセスメント)などの関連法の強化、発電施設設置に関するゾーニング、太陽光パネルの適正な廃棄やリサイクルの整備など、妥当な提案が多く含まれています。
問題は3の「地域共生型への支援重点化」です。この「重点化」という言葉は、実質的には野立て太陽光への支援打ち切りを意味します。
今回の提言は、決して”自民党案”というレベルのものではなく、事務方とすり合わせ済みのほぼ決定政策であることが読み取れます。
実際に、提言発表の1週間後の12月23日に関係閣僚会議が開かれ、「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」として決定されました。中身は項目建てを含め、提言とほとんど同じです。
2027年度からFIT/FIP支援全廃:核心的内容
提言と対策パッケージの核心は、2027年度以降、野立て型太陽光(メガソーラーおよび10kW以上の地上設置型)へのFIT/FIP支援を全廃する方針です。
支援廃止の対象
対象となる設備
- メガソーラー(大規模太陽光発電所)
- 10kW以上の地上設置型太陽光発電
廃止時期
- 2027年度以降の新規設置案件
- 既認定案件は継続支援(前回記事で確認済み)
2026年度の意味
- FIT/FIP支援を受けられる最後の年
- 駆け込み需要が確実に発生
支援廃止だけでなく、規制も大幅に強化されます。
安全性認定の義務化
- 新規プロジェクトに安全性認定を義務付け
- 土砂崩れなど災害リスクの高い場所での開発を制限
法令違反電源の調達禁止
- 政府や自治体の電力調達指針を変更
- 法令違反の電源からの調達を回避
- 問題を起こした発電所からの電気は売りにくくなる
環境省が環境配慮契約法の基本方針改訂で先行実施しており、この流れはすでに始まっています。
一方で、屋根置き太陽光への支援は継続・強化されます。
重点分野
- 工場・倉庫・商業施設などの屋根置き
- 住宅用太陽光
- 特に日本製ペロブスカイト太陽電池など薄型軽量電池
高市政権は、ペロブスカイト太陽電池が2030年代半ばまでに商業的に実現可能だと主張していますが、エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)などの専門家は、2040年になっても大量普及にはコストが高すぎると指摘しています。
太陽光市場の衰退:数字が示す厳しい現実
支援廃止の影響を理解するには、日本の太陽光市場の現状を把握する必要があります。
導入容量の激減
太陽光の年間導入容量の推移
- 2015年:10.8GW(ピーク)
- 2024年:2.5GW(約4分の1に減少)
この減少は、安倍晋三氏がFITをより効果の薄い「FIP(フィードインプレミアム)」に置き換えたことが主因です。
その結果、新規導入容量は着実に減速しました。
2030年目標の達成は絶望的
2030年の再エネ目標
- 全電力の36〜38%を再エネで賄う
- 太陽光だけで毎年3.5〜5.4GWの増加が必要
現状
- 2024年の導入量:2.5GW
- 目標に全く届いていない
このペースでは日本は2030年の再エネ目標に届きません。高市氏の動きは太陽光の成長をさらに縮小させ、ひいては排出削減目標の未達も招くでしょう。
補助金廃止が発表される前でさえ、OCCTOは次のように予測していました。
- 2029年の再エネ比率:わずか30%(目標36〜38%に届かず)
- 2034年になっても石炭が25%を供給し続ける
支援廃止により、この予測はさらに悪化する可能性が高いです。
支援廃止の背景にある「不可解な理屈」
支援廃止の理由として、政府は「地域共生」「環境保全」「安全保障」を掲げていますが、専門家からは疑問の声も上がっています。
土砂崩れリスクの実態
政府の主張
- 日本の太陽光発電サイト9,200カ所のうち2割が森林伐採地に建設
- 230件以上の事故が発生
- うち1件は120棟の家屋を破壊
専門家の反論
- 太陽光がなくても日本には毎年1,000件以上の土砂崩れが発生
- 2018年の西日本豪雨(200人死亡)は気候変動による集中豪雨が原因
- 太陽光のための森林伐採はリスクを高めるが、主因ではない
農地法の硬直性という根本問題
耕作放棄地の活用余地
- 自然エネルギー財団(2020年)の報告:
耕作放棄地だけで112GWの再エネ容量を発電可能 - これは日本の全電力容量の3分の1に相当
- 農林水産省:
2030年までに耕作放棄地は全農地の30%まで3倍に増える可能性
なぜ活用されないのか
- 農地法が転用を阻んでいる
- 「食料自給率が低いため農地転用を防ぐ農地法は変えられない」
(政府高官) - しかし放置された土地が食料を生んでいるとは到底思えない
河野太郎氏はこの農地法について繰り返し不満を漏らしてきました。
こうした農地法の硬直性こそが、日本の太陽光や風力が他国より高価である主な理由の一つです。森林の斜面に建設すれば、用地取得や建設コストが跳ね上がります。
化石燃料への補助金は維持
2025年のエネルギー関連政府支出
- 38%:化石燃料関連(ガソリン補助金、CCS、水素・アンモニア混焼など)
- 4%:再生可能エネルギー
政府は太陽光への支援を打ち切る一方で、化石燃料への巨額の補助金を維持しようとしています。この不均衡は、支援廃止の経済合理性に疑問を投げかけます。
高市氏は、太陽光は日本を中国依存にさせるため安全保障上の懸念があると主張します。
しかし、次のような反論があります。
中国依存という安全保障論への反論
自動車産業との比較
- 日本は中国からのレアアース輸入を避けるために
自動車産業を止めたわけではない - 代わりに経産省は代替調達先の開拓を支援した
インドの可能性
- インドは太陽光モジュールの主要な生産・輸出拠点になりつつある
- 依然として上流工程の部品は中国に依存しているが、
インドのさらなる発展を支援すればよい
屋根置きも同じ問題
- 政府関係者は屋根置き型太陽光が不足分を補えると主張
- しかし屋根置きも、パネルを輸入に頼る点では野立てと同じ
- しかもコストははるかに高い
2026年度の「駆け込み特需」と市場の二極化
2026年度がFIT/FIP支援を受けられる最後の年となることで、野立て太陽光の駆け込み需要が確実に発生します。
「いつまでに何をしておけば使えるのか」という実務レベルの問いに答える必要があります。
駆け込みの実務的課題
確認すべきポイント
- FIT/FIP認定申請の締切日
- 系統連系協議の完了期限
- 着工・完工の定義
- 2026年度中に何を完了させれば支援対象となるか
開発事業者・EPC事業者ともに、この実務的なガイダンスを顧客に提供できることが受注の鍵となります。ドタバタの展開が予想される中、迅速かつ正確な情報提供が競争優位性を生みます。
2027年度以降、野立て市場は事実上消滅し、屋根置き市場へと重心が完全に移ります。
2027年度以降の市場構造
市場の二極化
- 2026年度:野立ての駆け込み特需
- 2027年度以降:屋根置き専業市場
しかし、屋根置き太陽光には次の課題があります。
屋根置きの課題
- 野立てよりもコストが高い
- パネル輸入依存という点では野立てと同じ
- 設置可能な屋根の総量に限界がある
政府が期待するペロブスカイト太陽電池は、専門家によれば2040年になっても大量普及にはコストが高すぎるとされています。
核融合発電の2030年代実用化という高市氏の主張に至っては、専門家が鼻で笑うレベルです。
経済への悪影響:電気料金高騰と競争力低下
支援廃止は、日本経済に2通りの道筋で悪影響を与えます。
コスト面での劣位
太陽光のコスト優位性
- すでに日本でも、新規の太陽光発電所の建設・運営コストは、
既存の石炭火力発電所の運営コストを下回っている - 太陽光+蓄電池のコストは、
既存のガス発電所を動かすだけのコストより安い - 今後10年間で、太陽光のコストはさらに3分の1下がり、
蓄電池のコストは半減すると予測
政府推進策の高コスト
- アンモニア混焼やCCSといった高コストで疑わしい手法
- このコスト差をさらに広げる
2024年に世界の電力容量の増加分の87%を太陽光と風力(主に太陽光)が占めたのは、その低コストゆえです。
産業競争力への打撃
現在の電気料金
- 日本産業界の電気料金:欧州並み
- 一般家庭の料金(購買力平価で比較):欧州より10%安い
太陽光成長阻害の影響
- 日本の電気料金は他国よりも割高になっていく
- 半導体、自動車、機械といった電力消費の多いセクターの競争力を削ぐ
- 成長を阻害する
自動車や半導体を重視する高市氏にとって、この政策は自己矛盾しているように見えます。
AIとデータセンターの電力需要
電力需要の急増
- OCCTOの予測:
電力需要は2040年までに最大25%、2050年までに40%増加 - AIやデータセンターの登場による膨大な電力需要
対応の必要性
- 発電所、蓄電池、送電網のアップグレードへの巨額投資が必要
- 新規原発が法外に高価であることを考えれば、
太陽光や風力を削ることはより高コストな石炭などに頼ることを意味する
二つのリスク
- 電力容量を十分に拡大できなければ、
AIやデータセンターなど経済成長に不可欠な資産の足かせ - 再エネ不足のまま拡大すれば、排出量と電気料金の両方が高騰
世界有数の企業数百社が、2030年以降は100%再エネを使用する企業からのみ調達を行う「スコープ3」ルールの遵守を誓約しています。
スコープ3ルールと企業の海外移転リスク
2020年の警告
- ソニー、ニッセイアセットマネジメント、花王、リコーが
河野太郎大臣に警告 - 2030年までに再エネ比率を40%に引き上げられなければ、
拠点を海外に移さざるをえなくなる
支援廃止により、この警告が現実になるリスクが高まっています。
EPC事業者の5つの戦略的対応
メガソーラー支援廃止は、太陽光EPC事業者の事業モデルを根本から変える転換点です。
2026年度の駆け込み案件への対応体制強化
2026年度中にFIT/FIP認定を取得するための駆け込み需要が集中します。
短期集中型の案件対応能力が求められます。
この1年間の駆け込み特需を確実に取り込むことが、2027年以降の移行期間を乗り切る資金的基盤となります。
必要な体制
- 認定申請のスケジュール管理
- 系統連系の確保
- 工事体制の拡充
- 「いつまでに何を完了すればFIT/FIP適用されるか」という実務的なガイダンス
屋根置き市場への本格シフト
2027年度以降は屋根置き専業市場となります。
これらの技術領域を標準化し、組織的に対応できる体制を構築する必要があります。
必要な技術領域
- 工場・倉庫・商業施設などの屋根診断
- 耐震性評価
- 荷重計算
- 防水対策
- 野立てとは異なる設計・施工技術
省エネ法との連携
- 2026年度から約1万2,000社の特定事業者に屋根設置太陽光の目標策定が義務化
- この需要を確実に取り込む体制整備が急務
- 法令対応支援と設備導入を一体で提案
法令遵守体制の明確化と差別化
新規プロジェクトには安全性認定が義務化され、法令違反の電源は政府・自治体の調達対象から除外されます。
EPC事業者として、これらを明確に示すことが、信頼獲得の前提条件となります。
「問題を起こさない」ことが、最大の差別化要因になる時代です。
必要な体制
- 環境アセスメント対応
- 地域合意形成プロセス
- 安全性認証取得
- 法令遵守を担保できる体制
既設案件のFIP転換支援
既存のFIT案件がFIPへ移行する「FIP転」の扱いが今後明確化されます。
既設発電所オーナーに対して、制度変更に対応したサービスを提供することで、継続的な関係を構築できます。
新たな事業機会
- FIP転換の損益シミュレーション
- 市場連動型収益構造の説明
- 蓄電池追加による収益最適化提案
- O&Mと一体化したコンサルティングサービス
再エネ電源確保ニーズへの対応
需要側企業は脱炭素電源の確保を急いでおり、GHGプロトコル改定やスコープ3ルール遵守の動きが加速しています。
野立て太陽光の新設が困難になる中で、既存の電源を活用した供給契約の仲介や、企業の再エネ調達戦略を支援するビジネスモデルが重要性を増します。
新たなビジネスモデル
- 既設発電所の電力供給契約仲介
- PPAモデルの提案
- 企業の再エネ調達戦略支援
- 電源確保を支援するコンサルティング
「FIT/FIPからの卒業」ではなく市場の終焉
支援廃止を「FIT/FIPからの卒業」として前向きに捉える見方もあります。実際、地域の発電事業者の中には、支援制度の一定の役割は終えたと現実的に見る人も少なくありません。
しかし、数字が示す現実は厳しいものです。
市場縮小の事実
- 2015年:10.8GW → 2024年:2.5GW(約4分の1に減少)
- 2030年目標達成には年3.5〜5.4GW必要なのに、現状は2.5GW
- 支援廃止によりさらなる縮小が確実
日本の再エネはG7最低
- 福島事故後の補助金のおかげで、太陽光は2010年のほぼゼロから
2024年の発電量の10%まで成長 - それでもなお、日本の再エネ比率はG7諸国の中で最低
2035年に再エネ70%は可能
- いくつかの研究では、2035年までに日本の電力の80〜90%を
ゼロエミッション電源で賄えると推定 - アメリカのバークレー研究所:
再エネで70%、原子力が20%、残りの10%を天然ガスで賄える - 石炭は完全に廃止可能
- 必要なインフラ投資を行っても、電力コストは2020年比で6%削減
これらの可能性を考えれば、支援廃止は「卒業」ではなく、野立て太陽光市場の終焉を意味します。
有力企業グループの沈黙という懸念
数年前、エネルギーを大量に消費する主要企業数百社が、自然エネルギー財団、日本気候イニシアティブ、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)といった組織を形成しました。
彼らの要求
- 2030年までの再エネ比率50%
- その達成を支援する実効性のある炭素税の導入
しかし、彼らは目立たないようにしているほうが政治的に安全だと感じています。こうした有力なグループが抵抗を示さない限り、「太陽光への攻撃」を防ぐことは極めて困難になるでしょう。
この沈黙は、日本の再エネ政策の将来にとって不吉な兆候です。
2026年は事業モデル再構築の最後の猶予期間
メガソーラー支援廃止は、太陽光EPC事業者にとって事業モデルを根本から変える転換点です。
市場構造の変化
- 2026年度:野立ての駆け込み特需(最後の年)
- 2027年度以降:屋根置き専業市場(野立て市場は事実上消滅)
EPC事業者に求められる変化
- 駆け込み案件への短期集中対応
- 屋根置き技術の標準化
- 法令遵守体制の明確化
- FIP転換支援という新サービス
- 再エネ電源確保ニーズへの対応
太陽光EPC事業者にとって、この1年は事業モデルを再構築する最後の猶予期間です。野立て案件の駆け込み対応と並行して、屋根置き技術の標準化、法令遵守体制の強化、新たな収益源の確保を進めることが、2027年以降を生き残る条件となります。
2026年度という限られた時間の中で、駆け込み特需を確実に捉え、2027年以降の移行資金を確保することも不可欠です。
「短期」と「長期」、両方の視点を持つことが、この転換期を乗り切る鍵となります。
