みなさん、こんにちは!

マクニカが、エネコートテクノロジーズ製のペロブスカイト太陽電池(PSCs)を搭載した業界初の「屋内評価用ペロブスカイトIoTキット」を発表しました。
ペロブスカイトの社会実装がいよいよ実験段階から実用段階へ進む、非常に重要なニュースです。

ペロブスカイト太陽電池が屋内IoTを変える理由

ペロブスカイト太陽電池(PSCs)は、軽量・薄型・柔軟・半透明といった特徴に加え、低照度環境でも高効率で発電できるという強みがあります。

今回のマクニカの評価キットは、この特性を最大限に活かし、

  • 屋内でどれだけ電力が取れるのか
  • センサーやIoT端末が実際に動作するのか
  • 電源としてどこまで実用レベルなのか

といった点を、開発者・企業が“リアル環境で検証できる”画期的なデバイスです。

IoT化が進む建物・工場・店舗では、センサー数百〜数千台の電源確保が問題になりますが、低照度でも発電できるPSCsは“電池交換という最大のボトルネック”を解消する候補技術になります。

キットの特徴が開く“新しい電源カテゴリ”

マクニカの評価キットには以下の技術が搭載されています。

  • ペロブスカイト太陽電池による発電(低照度最適化)
  • 温湿度・照度センサー内蔵
  • BLE通信によるデータ転送
  • 余剰電力の二次電池への蓄電
  • 暗所は二次電池 → それも不足すれば一次電池で駆動するハイブリッド構成

このハイブリッド構成により、夜間や照度ゼロ環境でも継続動作が可能。
「ほぼメンテナンス不要のIoTデバイス」の実現に一歩近づきました。

建物×センサー×電源 ― どんな応用領域が広がるのか

ペロブスカイト太陽電池の強みは「設置自由度の高さ」です。
軽量で薄く、曲げられ、半透明化も可能。
これにより、従来パネルが置けなかった場所にも展開できるようになります。

想定される応用領域

  • ビル内の環境センサー(温湿度・CO₂・空気質)
  • 倉庫や工場の設備監視センサー
  • 店舗内の人流計測やビーコン
  • 会議室・トイレ・倉庫内の無線デバイス
  • ビルの窓・壁・什器への組み込み型電源
  • 配線レスの小型デバイス(タグ・発信機)

建物内部の「電源配線の制約」から解放されるため、メンテコスト・施工コスト・交換コストが大幅に下がる可能性があります。

国内企業による社会実装 ― 技術的にも産業的にも重要

今回のニュースは、単なる新製品発表ではありません。
京都大学発ベンチャー・エネコート社のセルと、マクニカの素子実装・IoT技術が融合した“国内技術によるPSCs実装の具体的な一歩”だからです。

屋内向け電源は太陽光パネル業界とは別軸の巨大マーケットであり、日本企業が得意とする材料・デバイス技術の領域でもあります。

国際競争が激化する中で、「国内が強みを持つ領域で勝つ」ための重要な技術群と言えます。

建物設備の“電源設計”が変わる

EPCにとって、ペロブスカイト太陽電池は“屋根パネルの代替”だけではありません。
むしろ、建物内部の電源設計を刷新する技術としての価値が高まります。

EPCが提案できる領域

  • 工場・倉庫の配線レスセンサー導入
  • 省エネ管理(BEMS・FEMS)との組み合わせ
  • 既存施設のIoT化(改修提案)
  • 高天井や危険区域など電池交換が難しい場所の監視センサー
  • 店舗チェーンの環境モニタリング標準化

将来は、壁面PSC・塗布式PSCなどと連動し、「建物のエネルギー設計」という領域そのものが再定義される可能性があります。

EPCが早期に関与することで、開発者・メーカー・ビル管理者との連携も広がり、新規事業開発の起点にもなり得ます。

これからの電源は「大規模発電」だけではない

今回のマクニカのデバイスが示すのは、太陽光発電が“屋外の大規模電源”だけで語られる時代は終わりつつあるということです。

  • 小型化
  • 分散化
  • 屋内化
  • 薄膜化
  • IoT電源化

電源そのものが「建物・機器・環境に溶け込む」フェーズへ移行しています。

ペロブスカイト太陽電池は、その中心的な技術として急速に存在感を高めています。
EPCにとっても設計思想を変える契機になるため、今後の動向は必ずウォッチしておくべき領域です。

ペロブスカイトは「新しい電源カテゴリ」を切り開く

マクニカ×エネコートが発表した屋内評価用キットは、ペロブスカイト太陽電池が“屋内IoTの電源インフラ”という新たなカテゴリを切り開く技術であることを示しました。

  • 配線レス
  • 電池交換レス
  • 低照度でも安定動作
  • 建物のあらゆる箇所に設置可能

これらは今後の建物設計・設備管理・IoT化の前提を大きく変えます。
EPC事業者としても、この流れを踏まえた新しい電源提案が必須になります。

今後の展開にも注目しつつ、ペロブスカイト太陽電池がもたらす“電源の再定義”を引き続き追っていきたいと思います。