検討中の工法を適用したフィルム型ペロブスカイト太陽電池

出典:積水化学工業

みなさん、こんにちは!

本日は、昨日に続きペロブスカイト太陽電池に関する話題です。
積水化学工業、NTTデータ、日軽エンジニアリングなど4社が共同で取り組む、「フィルム型ペロブスカイト太陽電池の壁面設置に向けた改良工法開発」のニュースを紹介します。

都市部の“壁で発電”を実現へ

これまで都市部では、屋上や敷地の制約から太陽光発電の設置が難しく、大規模発電は郊外偏重になっていました。

今回のプロジェクトでは、軽量で柔軟性のあるフィルム型ペロブスカイト太陽電池を外壁に直接設置できるようにする新工法を開発します。

開発・実証のポイント

  • アルミ押出形材による固定金物採用(軽量性+量産性を両立)
  • フィルム特有の「しわ・よれ」を調整し、意匠性を確保
  • 塩害地域・都市部での耐久性・施工性の検証
  • アルミ加工工場での量産製造性の確認
  • 2026年度以降、NTTデータ保有の16棟への導入拡大を予定

これにより、都市部でも“建物そのものが発電する”という新しい再エネ導入モデルが生まれます。

「屋根から壁へ」移る発電の発想

都市部における再エネ導入は、設置場所や建物荷重の制約が大きく、従来型パネルでは普及に限界があった。

この課題に対し、フィルム型ペロブスカイトの「軽くて貼れる」という特性が有効です。
屋根上ではなく、外壁や窓面での発電を可能にし、都心の再エネ地産地消を促進します。

昨年、「ペロブスカイト太陽電池の今後の見通しはどうか」というお話を聞く機会がありました。
「ペロブスカイトは今後、建築建材に近づいていく」と仰ってましたが、まさにその変化が現実化しつつあります。

新築では一体型建材として、既存建物では後付け工法として――
太陽光=建材”の時代が見えてきました。

BIPV普及のカギは「施工技術」

今回のプロジェクトは、BIPV(建材一体型太陽光)実装の本格化を示す動きです。
特に注目すべきは、“発電効率”よりも“設置工法”に焦点を当てている点。

どれほど高性能なパネルでも、施工が難しかったり外観を損ねたりすれば普及しません。
積水化学の住宅建材ノウハウと日軽エンジニアリングの金属加工技術の融合により、「量産性」「デザイン性」「施工性」を同時に高める新しい標準が生まれそうです。

BIPVとは

Building Integrated Photovoltaics(建材一体型太陽光発電)の略。
屋根材や外壁、窓ガラスなどに太陽電池を組み込み、建材と一体化して発電する仕組みを指します。

データセンターが「発電する建物」に

NTT品川TWINSデータ棟

出典:積水化学工業

今回の設置予定地は、NTTデータの品川TWINS DATA棟
エネルギー多消費施設であるデータセンターが、自らの外壁で電力を生み出すというのは象徴的です。

再エネ導入が“インフラ設備”から“建築そのもの”に進化しており、企業のカーボンニュートラル戦略を建物デザインで可視化する新たな形でもあります。

EPCとしての視点

EPCにとってこの動きは、「発電の場を広げる=再エネポテンシャルを再定義する」ことを意味します。
これまで主流だった地上設置型・屋根設置型に加え、今後は“壁面設置型”という新カテゴリが登場します。

ペロブスカイト太陽電池の実装が進めば、都市部でも施工案件が増え、EPCの提案領域が大きく広がるでしょう。

積水化学はペロブスカイト太陽電池について2025年に商用化、2027年度には量産予定。
想像より早く、「建物が発電する時代」がやってきそうです。

BIPVやフィルム型ペロブスカイトは、単なる発電技術ではなく、都市エネルギーのあり方そのものを変える革新です。
EPCとしても、壁面施工や建材連携の知見を積み重ね、“再エネの設計領域を建築まで拡張する”ことが求められていきそうです。