みなさん、こんにちは!

今日は、2025年末に農林水産省が公開した営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の最新統計について共有します。

令和5年度の新規許可件数は791件と前年比で減少し、平成29年度以来の対前年度比減少となりました。これは一見するとネガティブに見えますが、実態はFIT特需の終焉と市場構造の正常化プロセスです。

一方で、下部農地の営農者における「担い手」比率は63%(前年度57%)まで上昇し、質的な構造変化が進んでいます。同時に、営農に支障がある案件は1,221件(24%)とついに1,000件を超え、令和6年度の農地法改正による規制強化の実効性が注目されます。

大手企業の参入が加速し、高圧規模のPPA案件が増加傾向にある中、ソーラーシェアリング市場は「FIT終盤戦」から「本格的な普及期」へと移行しつつあります。

新規許可件数の減少:FIT特需の終焉

令和5年度の営農型太陽光発電の一時転用許可の新規許可件数は791件となり、平成29年度以来の対前年度比減少となりました。

この減少は、令和2年度から始まったFIT制度における特定営農型太陽光発電設備の運転開始期限が影響しています。

特定営農型太陽光発電設備とは

  • FIT制度において優遇措置を受けられる営農型太陽光発電
  • 運転開始期限:認定から3年以内
  • 令和2年度の事業計画認定:3,414件
  • 令和3年度の事業計画認定:3,863件

これらの案件が令和3年度から令和4年度にかけて一時転用許可件数を押し上げてきましたが、令和5年度末までに3年の運転開始期限を迎え、実際に稼働に至らなかった案件が淘汰されています。

新規許可における下部農地の面積を新規許可件数で割ると1,792.7m²(令和4年度は2,273.5m²)となり、低圧規模の事業が大半を占めていると推測されます。

下部農地面積の平均が前年度よりも縮小していることは、次の傾向を示唆しています。

  • 小型案件が中心
  • FIT調達価格の低下により、大型案件の経済性が悪化
  • 投資家向けの建て売り・分譲型ビジネスモデルが成立しにくくなった

記事では、令和6年度の統計データについて次のように予測しています。

令和3年度の3,863件とされる特定営農型太陽光発電設備の事業計画認定案件が運転開始期限を迎える中で、令和5年度末までに未稼働だったものがどれくらい運転開始に至るかに左右されそうです。

令和2年度と令和3年度に合計7,000件以上積み上がった事業計画認定案件のうち、どれだけが実際に稼働に至るかが焦点です。おそらく令和6年度にかけても、許可件数の減少が続くと予想されています。

「担い手」比率63%:質的な構造変化

下部農地の営農者における「担い手」比率は、令和5年度に63%に達しました。これは前年度の57%から6%の増加であり、顕著な構造変化を示しています。

農業における「担い手」とは、次のような農業者を指します。

  • 認定農業者
  • 認定新規就農者
  • 集落営農組織
  • 一定の要件を満たす農業法人

特定営農型太陽光発電設備では、「担い手による営農」が要件の一つとなっており、この制度的要請が「担い手」比率の上昇を促しています。

この「担い手」比率の上昇は、二つの側面を持っています。

ポジティブな側面

  • 営農の継続性と専門性の担保
  • 形式的な営農ではなく、実質的な農業経営を前提とした構造
  • 農業の担い手不足解消への貢献

懸念される側面

  • 特定営農型太陽光発電設備の条件を満たすための形式的対応
  • 「名ばかり担い手」の可能性
  • 実質的な営農管理が不十分な案件の存在

この懸念は、次に述べる「営農に支障がある案件の増加」というデータによって裏付けられています。

営農支障1,221件(24%):ついに1,000件超

令和5年度、下部農地への営農の支障がある案件は1,221件(24%)となり、ついに1,000件の大台に乗りました。

構成比としては次の傾向が見られます。

  • 「その他」の比率が減少
  • 単収減少・生育不良(営農者に起因)が増加

「営農者に起因」という表現は、営農管理の不十分さが原因であることを示唆しています。

「担い手」比率が63%に達する一方で、営農に支障がある案件が24%に達しているという事実は、「名ばかり担い手」問題の存在を示唆しています。

担い手を名目上配置しても、実質的な営農管理が不十分な案件が相当数存在すると考えられます。事業開始から何年目の案件がこれに該当しているかは統計からは分かりませんが、この状況が続けば、ソーラーシェアリング全体への社会的信頼が損なわれるリスクがあります。

こうした状況を受けて、令和6年度には農地法改正による規制強化が実施されます。記事では次のように述べられています。

これらの事例については令和6年度の農地法改正による規制強化を受けて、今後改善されていくかどうか注視して行きたいと思います。

規制強化の実効性が、ソーラーシェアリングの社会的信頼性を左右することになります。

設備設置者の変化:地域外投資の大幅減退

設備の設置者についても、対前年度比で顕著な変化が見られました。

「発電事業者(県外)」の大幅減少

設備設置者の内訳変化

  • 「発電事業者(県内)」:微減
  • 「発電事業者(県外)」:200件減少

地域外からの投資が大きく減退していることが明確です。

この変化の背景には、次の要因があります。

  • FIT調達価格の継続的な低下
  • 投資家向けの建て売り・分譲型ビジネスモデルの成立困難
  • 営農管理の実効性担保の難しさ

地域外の事業者が、営農と発電を両立させることの困難さが、この数字に表れています。

一方で、この変化は地域密着型の事業モデルへの転換を示唆しています。地域の担い手農家、JA、自治体との連携を前提とした事業開発が、今後の主流になる可能性があります。

営農型太陽光発電設備の下部農地での栽培作物についても、興味深い変化が見られました。

令和5年度の特徴

増加した作物

  • 野菜・いも類:大きく伸びた
  • 果樹
  • 土地利用作物
  • 牧草
  • しいたけ、きくらげ

減少した作物

  • さかき・しきみ:前年度の半分程度に減少

記事では次のように分析しています。

営農型太陽光発電の普及とFIT調達価格の低下が進む中で、徐々に選ばれる作物の傾向が変化してきた可能性も示唆されます。

変化の背景

  • FIT調達価格の低下により、発電収益だけでなく
    農産物収益の最大化が重要に
  • 「さかき・しきみ」は比較的管理が容易で発電事業者向きだが、
    農産物収益は限定的
  • 「野菜・いも類」は営農管理の手間はかかるが、農産物収益が大きい

この傾向変化は、ソーラーシェアリングが「発電事業」から「営農と発電の本格的両立」へと質的に転換しつつあることを示しています。

大手企業参入とPPA案件の増加

統計には直接表れていませんが、記事では次のような市場環境の変化が指摘されています。

ここ2年ほどで営農型太陽光発電への大手企業の参入も加速しており、高圧規模のPPA案件も増えつつある中

大手企業の参入は、次の変化をもたらします。

  • 資金力による高圧規模案件の実現
  • 長期的視点での事業運営
  • コーポレートPPAとの組み合わせ
  • 脱炭素ニーズへの対応

記事は次のように結論づけています。

今後は「FIT終盤戦」を経て「本格的な普及期」へと進んでいくことになるでしょう。

市場の転換点

  • FIT依存の小規模分譲型からの脱却
  • 企業の脱炭素ニーズに応える大規模PPA型への移行
  • Non-FIT/FIP案件の増加
  • 営農と発電の本格的両立を前提とした事業モデルの確立

EPC事業者にとっての5つの戦略的機会

ソーラーシェアリング市場の構造変化は、EPC事業者に新たな事業機会と責任を提示しています。

01

高圧規模PPA案件への対応能力強化

大手企業の参入が加速し、高圧規模のPPA案件が増加傾向にあります。
FIT依存の小規模分譲型から、企業の脱炭素ニーズに応える大規模PPA型へと市場の重心が移る中で、これらの能力が競争力の源泉となります。

必要な能力

  • 高圧案件の設計・施工能力
  • 長期PPA契約を前提とした事業性評価スキル
  • 企業の脱炭素ニーズへの対応力
  • 系統連系協議の高度化対応
02

営農計画の実効性担保

営農に支障がある案件が24%に達している現状は、農地法改正による規制強化のトリガーとなっています。
単に発電設備を設置するだけでなく、営農計画の実効性を担保する体制を提案に組み込むことが、今後の差別化要素となります。「名ばかり担い手」を排除し、実質的な営農継続を可能にする提案力が求められます。

EPC事業者の新たな役割

  • 担い手の確保支援
  • 適切な作物選定のコンサルティング
  • 営農指導体制の構築
  • 営農計画の実効性を担保する仕組みの提案
03

作物選定の多様化支援

令和5年度は「野菜・いも類」が伸び、「さかき・しきみ」が半減するなど、作物選定の傾向が変化しています。
FIT調達価格の低下により、発電収益だけでなく農産物収益の最大化が重要性を増す中で、こうしたコンサルティング機能が付加価値となります。

作物選定コンサルティングの内容

  • 地域特性(気候、土壌、日照条件)の分析
  • 営農者のスキルレベルの評価
  • 遮光率に応じた適切な作物の提案
  • 農産物収益の試算
  • 販路確保の支援
04

地域密着型の事業モデル構築

「発電事業者(県外)」が200件減少した事実は、地域外からの投機的投資モデルの限界を示しています。
地域内での実績と信頼関係が、今後の競争優位性の源泉となります。
特に、地域の農業課題(担い手不足、耕作放棄地の増加)の解決に貢献する姿勢を示すことが重要です。

地域密着型の要素

  • 地域の担い手農家との連携
  • JAとの協力関係構築
  • 自治体との対話と協働
  • 地域の農業振興計画への貢献
  • 地域雇用の創出
05

Non-FIT/FIP案件への対応準備

今後Non-FIT/FIP案件が増加する中でも、一時転用許可統計により営農型太陽光発電の動向把握が可能です。
FIT終盤戦を経て本格的な普及期へと移行する局面において、FIT依存からの脱却を前提とした事業モデルの提案力が求められます。

Non-FIT事業モデルの例

  • コーポレートPPA
  • 自家消費型(農業施設での利用)
  • 地域新電力連携
  • RE100対応企業向け供給

市場構造の正常化という本質

新規許可件数の減少を、単純にネガティブと捉えるべきではありません。これは市場構造の正常化プロセスです。

令和2年度と令和3年度に合計7,000件以上積み上がった事業計画認定案件は、ある意味で「FIT特需」によるバブルでした。

  • 投資家向けの建て売り・分譲型ビジネスモデル
  • 地域外からの投機的投資
  • 営農の実効性が軽視される傾向

こうした案件の多くが稼働に至らず淘汰されたことは、健全な市場形成にとって必要なプロセスです。

FIT特需が終焉を迎える中で、本格的な事業性と営農継続性を両立できる案件だけが残るという、健全な市場構造への転換が進んでいます。

残る案件の特徴

  • 担い手による実質的な営農
  • 地域との連携を前提とした事業構造
  • 農産物収益も含めた総合的な収益性
  • 長期的な事業継続を見据えた設計

記事が「FIT終盤戦」を経て「本格的な普及期」へと進むと述べているように、これからがソーラーシェアリングの真の始まりです。

本格的な普及期の特徴

  • FIT依存からの脱却
  • 大手企業の参入による市場の成熟
  • 営農と発電の本格的な両立
  • 地域農業振興との統合

「発電設備を設置する事業者」から「総合ソリューション提供者」へ

ソーラーシェアリング市場は、「FIT特需の終焉」という量的縮小と、「大手企業参入・PPA案件増加」という質的転換が同時進行しています。

営農に支障がある案件が24%に達した現状は、農地法改正による規制強化を招き、今後の参入障壁は確実に高まります。

EPC事業者に求められる変化

  • 「発電設備を設置する事業者」から
  • 「営農と発電を両立させる総合ソリューション提供者」へ

必要な能力の統合

  • 発電技術(高圧規模、PPA対応)
  • 営農計画の実効性担保
  • 作物選定コンサルティング
  • 地域連携体制の構築
  • Non-FIT事業モデルの提案力

これらを統合できる企業が、今後のソーラーシェアリング市場で有利になります。

前回の記事で取り上げたメガソーラー支援廃止により、野立て太陽光市場は2027年度以降事実上消滅します。一方、ソーラーシェアリングは農地活用と再エネ導入を両立させる手法として、今後も継続的に成長が見込まれます。

ただし、その成長は「量」ではなく「質」の転換を伴うものです。FIT特需に依存した投機的なビジネスモデルは終焉を迎え、営農と発電を本格的に両立させる事業者だけが生き残る市場へと変貌しています。