出典:Google
みなさん、こんにちは!
今朝は、米グーグルが進める“次世代型地熱発電”のニュースを取り上げたいと思います。
同社は米ネバダ州の大手電力会社 NVエネルギー(NV Energy)と連携し、世界初の「クリーン・トランジション・タリフ(CTT)」制度のもとで、24時間稼働する地熱発電(EGS:地熱増産システム)を導入しました。
これは単なる新技術ではなく、企業と電力会社が協働して「時間ベース」で脱炭素を進める新しい枠組みです。
時間ベース脱炭素の本質 ― 「いつでもクリーン」を実現する挑戦
グーグルは、2030年までにすべての拠点で“時間単位”の再エネ100%(24/7 CFE)を達成する目標を掲げています。
従来の「年間で再エネ100%」という概念では、太陽光のない夜間は火力に頼らざるを得ません。
これに対し、1時間ごとに再エネ供給と需要を一致させることを目指すのが「時間ベース脱炭素」です。
その鍵となるのが、天候に左右されないクリーン・ファーム電源(Clean Firm Capacity)。
つまり、地熱・長期蓄電・小型原子力など、安定稼働するクリーン電源です。
世界初のEGS地熱 ― 「人工の温泉」がつくる安定電源
今回の地熱発電には、スタートアップのファルボ・エネルギー(Fervo Energy)のEGS技術が採用されています。
地中約2400mの岩盤に2本の水平坑井を掘り、冷水を送り込み、熱を得た蒸気で発電。
自然湧出ではなく、人工的に熱水を循環させる「再生可能地熱」です。
この仕組みにより、
- 夜間も曇天も関係なく電力供給が可能
- 地熱リソースを人工的に制御できるため、出力調整性が高い
- 既存インフラ(送配電網)との統合も容易
といった利点が生まれます。
グーグルのネバダ州データセンター群を支える115MWの電力を、24時間体制で供給する見込みです。
CTT(クリーン・トランジション・タリフ)とは何か
CTTは、公益事業者と大口電力需要家が共同でクリーン電源へ投資できる新スキームです。
特徴は次の3点です。
公益事業者が再エネ投資のリスクをシェアし、
需要家も恩恵を享受
新技術(地熱・長期蓄電など)を料金制度の中で普及可能に
“地域電力網の中で脱炭素を完結させる”仕組みを構築
これはPPA(電力購入契約)を超えるモデルであり、電力会社が「脱炭素構造の設計者」へと進化する方向性を示しています。
日本にとっての示唆 ― 地熱資源をどう再活用するか
実は日本も世界第3位の地熱資源を持つ国ですが、導入容量は約60万kW(平成22年時点)に留まっています。
要因としては、
- 地熱資源が火山地帯に偏在
- 開発コスト・リスクが高い
- 温泉との共存課題
- 許認可や法規制の煩雑さ
などが挙げられます。
しかし、EGSのような技術が実用化すれば、
- 自然湧出型でない=温泉との競合を避けやすい
- 安定出力=系統安定化に寄与できる
といった形で、地域共生型地熱の再評価が進む可能性があります。
地域EPCにとっての新しいビジネスチャンス
EPCの視点で見れば、この「時間ベースの再エネ供給モデル」は大きな転機です。
- 太陽光+蓄電池+VPPによる需給調整対応型の分散電源設計
- 地熱やバイオマスとのハイブリッド地域電源の提案
- 企業・自治体との共同エネルギープランニング
など、地域単位で“再エネを時間でデザインする”時代が始まりつつあります。
時間を制する者が、脱炭素を制する
今回のグーグルの取り組みが示すのは、「発電量の多さ」ではなく、「いつでも再エネを使える状態」の価値です。
この考え方は、いずれ再エネ業界全体の指標にもなっていくでしょう。
発電所を「出力ベース」ではなく「供給時間ベース」で設計する。
そこに、EPCや地域電力事業者が果たす役割の幅が広がっています。
脱炭素の次のステージは、“量”ではなく“時間”。
24/7再エネの思想が、日本のエネルギー業界にも影響を与えていく可能性があります。
