みなさん、こんにちは!
今日は、FIPやPPA、自己託送の拡大により、太陽光発電事業における気象予測サービスの活用が大きく変化している状況について共有します。
FIT案件が大半だった2020年頃までは、太陽光発電量の予測は主に一般送配電事業者にとって重要でしたが、発電事業者側は予測が外れても深刻な影響を受けませんでした。
しかし2020年以降、FIPやPPA、自己託送が増加し、発電事業者が30分単位で計画値を報告し、計画値と実績値に一定以上のズレがあるとインバランス料金のペナルティを支払う仕組みになったことで、高精度な発電量予測への切迫感が高まっています。
これに伴い、気象予報サービスも変化し、広域包括的な予測から個別メガソーラーレベルの予測へ、また旧一般電気事業者向けの高価なサービスから比較的安価で高精度なサービスへとシフトしています。
日本気象協会は、雲の生成過程を高度化した気象モデル改良により予測精度が従来比30%以上向上、気象衛星による日射量推定を2.5分ごと・500mメッシュで提供、実測値による逐次補正で予測精度を最大50%向上するサービスを展開しています。
FIT時代からFIP・PPA時代への構造転換
太陽光発電事業における気象予測の位置づけが、根本的に変わりつつあります。
FIT時代(2020年頃まで)の状況
一般送配電事業者にとっての重要性
- 固定価格買取制度(FIT)に基づく案件が大半
- 電力系統側、つまり一般送配電事業者にとって重要性が増していった
その理由
- 気象に大きく左右される不安定な太陽光発電電力が増加
- 気象状況とその時の太陽光発電電力をより高精度に予測できなければ、
系統の需給バランスを維持して停電を引き起こすことなく安全に運営することが難しい
発電事業者側の状況
- 太陽光発電事業者側は発電量の予想が大きく外れたところで、
系統側のような深刻な影響を受けることは少なかった
これまでも一定の活用例はありました。たとえば、売電ロスの検証や、積雪による設備損壊リスクをできるだけ引き下げたいといった目的での活用です。発電量の差異分析やリスク想定の補助ツールとして導入されるケースは見られてきました。
しかし、こうした用途においては、「ある程度わかればよい」という位置づけにとどまることも多く、より高精度な予測に対する切迫度はそれほど高くありませんでした。つまり、参考情報としての価値は認識されていたものの、事業判断を左右するレベルの精度までは必ずしも求められていなかった、というのが実情です。
この時代、気象予測は発電事業者にとって「あれば便利」という位置づけでした。
2020年以降の構造変化
新しいスキームの増加
- 2020年ころ以降、フィード・イン・プレミアム(FIP)や
FIPを併用した電力供給契約(PPA)による売電、自己託送が増えてきた
計画値報告義務
- こうしたスキームでは、系統への送電量の計画値は発電事業者が事前に報告する
インバランスペナルティ
- 30分単位で計画値と実績値に一定以上のズレが生じた場合には、
ペナルティとしてインバランス料金を支払う
この変化が意味するのは、太陽光発電事業の“前提条件”そのものが変わりつつあるということです。
これまでのFIT中心のモデルでは、発電量の多少は一定の制度の中で吸収されてきました。しかし、PPAや自己託送といったスキームが拡大する中で、発電量はそのまま収益や供給責任に直結します。わずかな予測誤差が、インバランスコストや契約履行リスクにつながる構造になっています。
その結果、PPAや自己託送の太陽光発電所では、これまで以上に高精度な発電量予測が求められるようになりました。単なる参考値ではなく、事業収支や需給計画の前提となるデータとしての精度が必要になっています。
こうした背景から、事業者は切迫感を持って気象予報サービスを活用するようになっています。気象予測は「あれば便利」から「なければ収益悪化」へと転換しました。
気象予報サービス市場の2つの構造変化
発電事業者側の変化は、気象予報サービス市場にも大きな影響を与えています。
「広域包括的予測」から「個別サイトレベル予測」へ
従来の要求
- PPAや自己託送では個別のメガソーラー(大規模太陽光発電所)レベルでの
予測が重要になってくる
技術的な要求の変化
- 「面的な精度」ではなく「点的な精度」を求める要求の変化
この変化は、気象予測技術に新たな挑戦を突きつけています。
「高価・高精度」から「比較的安価・高精度」へ
従来の顧客
- 旧一般電気事業者は事業規模が大きいために、航空や鉄道などと同じように
高価な気象予報サービスを活用してきた
新しい顧客
- これに対してPPAや自己託送の太陽光発電はケタのまるで違う小さな規模である
新しい要求
- 比較的安価で、かつ、個別の太陽光発電所の出力という
高精度な予想につながるようなサービスが求められるようになる
コストパフォーマンスの重要性
- 高精度は必要だが、事業規模に見合った価格でなければ導入できない
- 「安くて精度が高い」という一見矛盾する要求への対応
この市場構造の変化に、気象予報サービス各社が対応を急いでいます。
日本気象協会の対応──予測精度30%向上とAPI活用
日本気象協会は、市場の変化に対応した先進的なサービスを展開しています。
長年の実績に基づく強み
その強みの源流は、1974年に始まった国の「サンシャイン計画」にまで遡ります。この国家プロジェクトの中で、太陽光発電向けの日射量などに関する研究開発を担い、基礎データと解析技術の蓄積を進めてきました。
現在も多くの太陽光発電事業者が事業計画時に参照している、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「日射量データベース」には、同機構が日本気象協会へ委託した研究開発成果が織り込まれており、その知見は現在も継続的にアップデートされています。
また、2006年に整備された稚内メガソーラーにおいても、日射量予測などを担当し、NAS電池の充放電計画の策定にも関与しました。発電予測と蓄電池運用を一体で設計するという、当時としては先進的な取り組みに携わってきた実績があります。
このように、国のプロジェクトや実証事業を通じて長年にわたり培ってきた太陽光発電向けの知見こそが、同社の強みの源泉です。AIの進化によりデータ活用の幅が大きく広がる現在においても、気象予測に関する長年の経験と技術基盤は、他に引けを取らない競争優位性となっています。
予測精度の大幅向上
予測精度向上の背景には、気象モデルそのものの改良があります。これまで予測に用いていたモデルを見直し、特に雲の生成過程をより高度に再現できるよう改良が加えられました。
その結果、発電量予測の精度は従来と比べて30%以上向上しています。この「30%向上」という数値は単なる技術的進歩ではなく、インバランスペナルティの削減や需給計画の最適化に直結する、事業性にインパクトを与える改善です。
2.5分ごと・500mメッシュの日射量推定
サービス面では、特定の太陽光発電所が立地する地点に対し、面的な推定日射量をリアルタイムで提供できる点が特徴です。データは2.5分ごとに更新され、500m範囲のメッシュ単位で把握可能となっています。
さらに、雲や微粒子による太陽光の反射・透過といった要素を加味した推定モデルへと高度化。これにより精度はさらに約15%向上しました。黄砂などの影響で雲の生成状況が変化するケースも反映できるようになっています。
このような高頻度かつ高解像度のデータは、広域平均ではなく“個別サイト単位”での予測精度向上を支えます。結果として、PPAや自己託送案件における実務レベルの需給管理や収益最大化に直結する基盤となっています。
実測値による逐次補正──予測精度最大50%向上
より直接的な成果を求める場合には、実測値を活用して日射量予測を逐次補正する仕組みが有効です。現地に設置した日射計などのデータを用い、30分間隔で予測値を補正することで、最大50%の精度向上を実現するサービスも提供されています。
さらに、太陽光発電量の実績値を取り込めば、出力予測そのものの逐次補正も可能になります。
「予測 → 実測 → 補正 → 予測」というPDCAサイクルを高速で回すフィードバックループ型のアプローチにより、モデルを動的に最適化していきます。
この「最大50%向上」という改善幅は、インバランスペナルティ削減効果を大きく押し上げる要素となり、特にPPAや自己託送案件においては事業収支に直結するインパクトを持ちます。
API活用による低コスト化
ターゲットは、一般電気事業者に近いレベルの高精度予測を必要とする、PPAや自己託送の発電事業者です。こうしたニーズに対し、APIを活用することで、比較的安価かつ使いやすい形でサービスが提供されています。
API経由で取得できる情報は、売電予測にとどまりません。
- 2週間の気温予測に基づく発電量予測
- 積雪深の分析
- 雷関連情報の把握
など、発電設備の保守や運用判断にも寄与するデータが含まれます。
このAPI化により、システム連携や自動化が容易になると同時に、導入コストも抑えられます。その結果、中小規模の発電事業者でも現実的な価格帯で高度な予測サービスを活用できる環境が整いつつあります。
蓄電池・電力市場との統合──気象予測がバリューチェーンの起点に
気象予測サービスは、単独の価値から、より広いバリューチェーンの起点へと進化しています。
積雪予測サービス
太陽光パネルに雪が積もると、日射が遮られ売電ロスが発生します。この現象は、周囲の樹木による影と同様に「物理的な遮光」による出力低下であり、冬季の収益悪化要因の一つです。さらに、積雪が重なれば設備損壊リスクも高まります。
そのため、「1週間前に積雪予測を知りたい」というニーズが多くあります。主な目的は、除雪のタイミングを事前に検討し、売電ロスや損傷リスクを最小化することにあります。
特に注意すべきなのは、地面に残った雪の高さです。最も避けたいのは、地上に積もった雪の山がパネル下部とつながり、そのままパネル上部まで固定化された雪塊になってしまうケースです。このリスクを予測するには、当日の降雪量だけでなく、それまでに地面に残っている積雪の高さを把握する必要があります。
こうした高度な予測には、稚内メガソーラーで得られた知見が活用されています。同施設で蓄積された、パネル上および地面の積雪挙動に関するデータを基に、日射量予測から算出した想定発電量と実際の発電量との差分を分析し、パネル上の積雪状況を推測する仕組みです。
この積雪予測サービスは、単なる情報提供にとどまらず、除雪計画の最適化、保守人員の効率配置、そして冬季収益の安定化に直結する実務的価値を持っています。
蓄電池併設・蓄電所向けサービス
サービスは、太陽光発電単体にとどまらず、蓄電池併設案件や独立型蓄電所向けにも拡充されています。具体的には、エネルギー需要の変動予測、卸市場での電力取引価格予測、需要家の電力消費予測、さらには蓄電池の適切な充放電予測支援までを包括的に提供しています。
このアプローチの特徴は、個別の予測を点で提供するのではなく、
- 電力取引価格
- 太陽光発電出力
- 電力需要
それぞれの高精度予測を統合し、蓄電池の最適な充放電計画を支える点にあります。
つまり、気象予測は単独で完結する価値ではなく、電力市場取引、需給調整、蓄電池運用へと連なる一連のバリューチェーンの“起点”として機能しています。
この統合的アプローチは、例えばSmart-EMSのような運用最適化システムと組み合わせることで、さらに価値を高めます。予測データをリアルタイムに連携させることで、蓄電池の収益最大化とリスク最小化を同時に実現する高度な運用が可能になります。
EPC事業者としての4つの戦略的対応
気象予測サービスの変化は、EPC事業者がPPA・自己託送案件で提供すべき付加価値を明確に示しています。
インバランスペナルティを最小化する高精度予測の標準提案
この標準提案により、PPA・自己託送案件の経済性を大きく改善できます。
構造的な問題
- FIP・PPA・自己託送案件では、30分単位の計画値報告義務と
インバランスペナルティにより予測精度が収益に直結
EPC事業者の対応
- 設計・施工時に日射計など実測機器の設置を標準化
- 日本気象協会などの気象予測サービスと連携した「実測値による逐次補正」を提案
訴求ポイント
- 「予測精度最大50%向上」という具体的数値
- インバランスペナルティ削減効果を定量的に訴求
ターゲット
- FIP転換を検討する既設電源
- 新規PPA案件
- 自己託送を計画する企業
積雪地域での予測サービス活用と保守計画の最適化
この保守計画最適化により、積雪地域での競争優位性を確立できます。
積雪地域の状況
- 太陽光パネルへの積雪は売電ロスや損壊リスクにつながる
気象予測サービスの活用
- 日本気象協会が提供する「1週間前の積雪予測」「地面残雪高さ把握予測」
- 除雪タイミングの最適化に有効
EPC事業者の提案
- 積雪地域の案件では気象予測サービスと連携した保守計画を提案
- 除雪派遣のタイミング最適化
- 積雪による損壊リスクの事前把握
- 効率的な保守体制の構築
蓄電池併設案件での気象予測+充放電計画の一体提案
この一体提案により、蓄電池併設案件の価値を最大化できます。
日本気象協会のサービス
- 電力取引価格予測
- 太陽光発電出力予測
- 電力需要予測
- これらを組み合わせた蓄電池の充放電計画支援サービス
EPC事業者の提案
- 蓄電池併設案件で気象予測サービスと充放電計画を一体提案
- 「電力取引価格が高い時間帯に放電するため、○時に充電開始」
- こうした具体的な運用シナリオを示す
経済性の訴求
- 蓄電池投資の経済性を明確化
- アービトラージによる収益試算
- インバランスペナルティ削減効果
- トータルでの投資回収期間短縮
APIを活用した低コスト・高精度予測の顧客提案
この低コスト提案により、中小規模事業者への市場拡大を実現できます。
中小規模事業者の課題
- 日本気象協会が「APIを活用して比較的安価に、かつ高精度に活用できる」サービスを提供
- 中小規模のPPA・自己託送事業者にとって重要
EPC事業者の役割
- こうした低コストで導入可能な気象予測サービスを顧客に紹介
- 「高価な予測サービスは不要、APIベースで月○○円から利用可能」
- こうした選択肢を提示
導入ハードルの低減
- 予測精度向上のハードルを下げる
- PPA・自己託送案件の拡大を後押し
サービスプロバイダーとの連携
- 日本気象協会など複数の気象予測サービスと連携
- 顧客の規模・ニーズに応じた最適なサービスを紹介
- ワンストップでの導入支援
FIP・PPA・自己託送の拡大により、太陽光発電事業における気象予測は「あれば便利」から「なければ収益悪化」へと位置づけが変わりました。
インバランスペナルティという直接的な経済影響により、発電事業者の予測精度への切迫感が高まり、気象予報サービスも「広域包括的→個別サイトレベル」「高価→比較的安価・高精度」へとシフトしています。
日本気象協会は、雲の生成過程を高度化した気象モデル改良により予測精度が従来比30%以上向上、気象衛星による日射量推定を2.5分ごと・500mメッシュで提供、実測値による逐次補正で予測精度を最大50%向上するサービスを展開しています。
さらに、電力取引価格予測、需要予測、蓄電池の充放電計画支援など、気象予測が電力市場取引・需給調整・蓄電池運用という一連のバリューチェーンの起点になっています。
「予測 → 実測 → 補正 → 予測」というPDCAサイクルを高速で回すことで精度を上げるアプローチは、先日共有したSmart-EMSの「需要予測・発電予測による最適制御」と本質的に同じであり、太陽光発電事業が「設備を設置すれば終わり」から「運用データを取得し、予測を補正し、最適化し続ける」継続的プロセスへと移行しています。
