みなさん、こんにちは!
今日は、JPEA新春交流会で経産省・環境省・国交省の3省幹部が「太陽光推進の政策が終わったわけではなく、追い風は吹き続けている」との認識を示したというニュースを共有します。
太陽光発電を巡る”逆風”論が広がる中、政策の現場からは「市場が成熟し、実力が試される段階に入った」という明確なメッセージが発信されました。
これは、FIT開始以降15年間の量的拡大フェーズが終わり、地域共生・環境配慮・ライフサイクルでの価値という質的転換が求められていることを意味します。不適切案件には厳格対応する一方、地域共生型については支援を一層強化するという明確な差別化が示されています。
さらに注目すべきは、環境省が指摘した「GHGプロトコルで”追加性”のある再エネ導入が重視され、新たな太陽光設置が評価の前提になりつつある」という点です。この国際基準の変化が、日本の太陽光市場を「野立てから屋根置きへ」と転換させる強力な外圧となっています。
経産省:「市場が成熟し、実力が試される段階」
JPEA新春交流会(2026年1月14日)で、経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長の小林大和氏は、太陽光発電業界に向けて明確なメッセージを発信しました。
第7次エネルギー基本計画の方針
基本認識
- 日本の電力需要は減少するのではなく、むしろ増加していく
- 脱炭素電源を安定的に供給することが極めて重要
- 原子力か再生可能エネルギーかという選択ではない
- いずれの電源も、しっかりと進めていく必要がある
再エネ方針
- 主力電源化に向けて最大限導入を進める
- 高市政権下でも総理や赤沢経済産業大臣から明確に語られている
この方針は、政権交代後も堅持されており、再エネ主力電源化の政策は継続していることが確認されました。
小林氏は、2025年12月に政府が取りまとめたメガソーラー対策パッケージについても言及しました。
メガソーラー対策パッケージの真意
対策の背景
- 地域共生や自然環境との調和をめぐる国民、地域住民の懸念
- 不適切な案件は業界全体から見れば一部に過ぎない
- しかし、今後の導入拡大のためには必要な対応
厳格対応
- 不適切な案件に対しては厳格に対応していく
支援強化
- 地域共生がしっかりとできるものについては支援を一層強化
これは、「規制」と「支援強化」の二段構えであり、質の高い事業者を選別する政策です。
特に、以下の3分野については重点分野として積極的に取り組んでいくとしました。
重点3分野への支援強化
重点分野
- ペロブスカイトを含む屋根置き太陽光
- 営農型太陽光
- 公共インフラへの導入拡大
これらの分野は、補助金、税制優遇、規制緩和などの政策支援が期待できる成長分野です。
昨年後半から太陽光発電への”逆風”を強調する報道が増えていることに対し、小林氏は明確に反論しました。
「逆風」論への反論
小林氏の見解
- 「私は決して逆風だとは思っていない」
- 過去15年、例を見ない規模で市場が拡大してきた
- 「これまでが強い追い風だったとすれば、今は市場が成熟し、実力が試される段階に入った」
- 「追い風は十分に吹いている」
3つの追い風
| 技術の風 | 技術の進展やコスト低下 |
| 産業の風 | 多様な事業者の参入 |
| 政策の風 | 健全な市場形成に向けた政策 |
2026年は「追い風を具体的な成果として形にする一年」と位置づけられました。
環境省:「太陽光なくして目標達成なし」
環境省 地球温暖化対策課長の杉井威夫氏は、異なる観点から太陽光発電の重要性を強調しました。
2030年目標達成には太陽光が不可欠
目標の困難性
- 2035年、2040年に向けた目標は「世間で言われている以上に困難で、野心的なもの」
- 短期的にも中長期的にも最も効果を発揮するのが太陽光発電
緊急性
- 残された期間が少ない
- 「太陽光発電なしには達成は困難」
- 「引き続き飛躍的な導入を進めていくこと」が最優先課題
2030年目標達成には、太陽光発電の飛躍的な導入が必須条件であることが明言されました。
国際的な気候変動対策の継続
COP30の状況
- トランプ大統領によりアメリカがパリ協定から離脱
- しかし国際的な気候変動対策の枠組みは堅持されている
- 米政府代表団は来なかったが、米企業や米自治体は多数参加
この状況は、政府レベルでは後退があっても、企業や自治体レベルでは脱炭素の動きが継続していることを示しています。
杉井氏が指摘した最も重要なポイントは、GHGプロトコルにおける”追加性”の概念です。
GHGプロトコルと”追加性”の重要性
ビジネス分野の変化
- 企業自身の温室効果ガス排出量削減だけでなく、サプライチェーン全体での排出削減が重要
- スコープ3の削減数値公表が義務化されようとしている
“追加性”の重視
- GHGプロトコルにおいて”追加性”のある再エネ導入が重視
- 「新たな太陽光発電の設置が評価の前提になりつつある」
この変化の意味は極めて大きく、既設FIT発電所からの電力購入では”追加性”が認められず、新規に太陽光設備を設置することで初めて企業のスコープ3削減に貢献できるという構造が生まれつつあります。
杉井氏は、以下の取り組みを積極的に推進していくことを表明しました。
推進する取り組み
重点施策
- 自然と共生し、地域住民の理解を得た発電事業
- 自家消費型太陽光の導入拡大
- 中小企業がバリューチェーン全体で連携して進める取り組み
- これまで設置困難だった屋根や壁面など新たな設置場所の活用
- 将来の大量廃棄を見据えたパネルのリサイクル
これらは、質の高い太陽光発電事業への支援を意味しています。
国交省:「建築分野で高まる太陽光の価値」
国土交通省 住宅局 建築環境推進官の宮森剛氏は、住宅・建築物における太陽光発電の位置づけについて語りました。
太陽光は住宅性能の重要な要素
基本認識
- 住宅・建築物は生活と経済活動の基盤
- 「太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーは、省エネや脱炭素のみならず、住宅性能を構成する重要な要素になっている」
この認識は、太陽光発電が「オプション」ではなく「標準装備」になりつつあることを示しています。
住宅政策を取り巻く環境変化
現状の課題
- 人口や世帯数の減少
- 空き家の増加
- 担い手不足
- 外国人居住者の増加
対応
- 将来世代に引き継ぐ住宅ストックの在り方を検討
- 住生活基本計画の改定
- 建築物の中長期ビジョンについて審議
宮森氏は、具体的な推進策を明示しました。
太陽光発電の推進策
推進策1:住宅トップランナー制度見直し
- 大手ハウスメーカーを中心に高い目標を設定
- 太陽光発電設備のさらなる設置を促す
推進策2:自治体連携
- 自治体と連携して再エネ促進区域を拡充
- 再エネ設備を含むZEH・ZEBの支援を強化
これらは、住宅向け太陽光需要の拡大を後押しする政策です。
さらに今後のステップとして、画期的な方針が示されました。
ライフサイクルカーボンの義務化
2028年の制度化
- 5000m²以上の事務所ビルについて、ライフサイクルカーボンを算定
- 国への届出を義務化
対象範囲
- 建築資材の製造段階
- 施工
- 解体に至るライフサイクル全体でのCO2削減
宮森氏は「ライフサイクルCO2削減に向けては、当然ながら再生可能エネルギーの活用が不可欠」として、太陽光発電の重要性を強調しました。
「量的拡大から質的転換」という明確なメッセージ
3省幹部のメッセージに共通するのは、「太陽光推進は継続するが、質の転換を求める」という明確な方針です。
質的転換の3つの軸
転換1:地域共生
- 地域住民への十分な説明と了解取得
- 継続的なコミュニケーション体制
- 地域貢献策の実施
転換2:環境配慮
- 森林伐採の回避
- 生物多様性への配慮
- 景観との調和
転換3:ライフサイクルでの価値
- 製造から廃棄までの環境負荷最小化
- リサイクルの推進
- 長期的な持続可能性
経産省が「市場が成熟し実力が試される段階」と表現したように、FIT開始以降15年間の量的拡大フェーズは終わり、これらの質的転換が求められています。
この質的転換は、メガソーラー対策パッケージという「規制」と、屋根置き・営農型・公共インフラという「重点分野への支援強化」の二段構えで進められます。
「規制」と「支援強化」の二段構え
規制
- 不適切案件には厳格対応
- 法令違反電源の政府・自治体調達回避
- 2027年度から野立て太陽光のFIT/FIP支援廃止
支援強化
- 地域共生型については「支援を一層強化していく」
- 重点3分野への政策支援
- 補助金、税制優遇、規制緩和
これは、太陽光発電業界に対する「選別」であり、質の高い事業者は支援され、そうでない事業者は淘汰されるという厳しいメッセージです。
GHGプロトコルと”追加性”という新基準
環境省が指摘した「GHGプロトコルで”追加性”のある再エネ導入が重視され、新たな太陽光設置が評価の前提になりつつある」という点は、極めて重要です。
“追加性”とは何か
定義
- 既存の再エネ電源を買うのではなく、新たに再エネ設備を設置すること
- 実際のCO2削減に貢献すること
評価基準の変化
- 既設FIT発電所からの電力購入では”追加性”が認められない
- 新規に太陽光設備を設置することで初めてスコープ3削減に貢献
この基準の変化は、企業の再エネ調達行動を根本から変える可能性があります。
企業にとっての意味
スコープ3削減の義務化
- 企業自身の排出量だけでなく、サプライチェーン全体での削減が重要
- スコープ3の削減数値公表が義務化されようとしている
“追加性”の必要性
- GHGプロトコルで”追加性”が重視される
- 既設電源からの購入では評価されない
- 「新設の太陽光発電所からの電力調達」が企業にとって必須
これはEPC事業者にとって、企業の脱炭素ニーズを直接的に満たすビジネスモデルが成立することを意味します。
屋根置き太陽光市場への影響
市場拡大のドライバー
- “追加性”を満たすには新設が必要
- 企業の工場・倉庫への屋根置き太陽光が最適解
- 自家消費により電力コスト削減とスコープ3削減を同時実現
国際基準の外圧
- GHGプロトコルという国際基準の変化
- 日本の太陽光市場を「野立てから屋根置きへ」と転換させる強力な外圧
この変化は、屋根置き太陽光市場を大きく拡大させるドライバーとなります。
住宅トップランナー制度見直しの影響
国交省が示した住宅トップランナー制度の見直しは、住宅向け太陽光市場に大きなインパクトを与えます。
制度見直しの内容
対象
- 大手ハウスメーカーを中心に高い目標を設定
効果
- 太陽光発電設備のさらなる設置を促す
- 住宅における太陽光発電の標準化
この見直しにより、大手ハウスメーカーが建設する新築住宅の多くに太陽光発電が標準装備されることが期待されます。
住宅市場という巨大なボリュームゾーン
市場規模
- 年間新設住宅着工戸数は約80万戸(2024年)
- 大手ハウスメーカーのシェアは約25%(20万戸)
潜在需要
- 住宅トップランナー制度により、大手ハウスメーカーに高い目標
- 20万戸の相当割合に太陽光発電が設置される可能性
この市場は、EPC事業者にとって安定的で大規模なボリュームゾーンとなります。
2028年ライフサイクルカーボン義務化の意味
国交省が示した2028年の制度化は、建築分野における太陽光発電の位置づけを決定的に変えます。
制度の内容
義務化の内容
- 5000m²以上の事務所ビルが対象
- ライフサイクルカーボンを算定
- 国への届出を義務化
対象範囲
- 建築資材の製造段階
- 施工
- 解体に至るライフサイクル全体
宮森氏は「ライフサイクルCO2削減に向けては、当然ながら再生可能エネルギーの活用が不可欠」と明言しており、太陽光発電が事実上の必須要件となります。
事業者への影響
設計段階からの組み込み
- ライフサイクルカーボン算定のため、太陽光発電を設計段階から組み込む必要
- 後付けではなく、建築物の一部として統合設計
届出義務の影響
- 国への届出義務があるため、適当な対応は不可能
- 確実な削減効果を示す必要
この制度により、大規模事務所ビルにおける太陽光発電の標準装備化が進みます。
EPC事業者としての5つの戦略的対応
3省幹部のメッセージは、太陽光EPC事業者に明確な行動指針を提示しています。
重点3分野への経営資源集中
政府が明示した重点分野に経営資源を集中すべきです。
重点分野
- ペロブスカイトを含む屋根置き太陽光
- 営農型太陽光
- 公共インフラ導入
これらは「支援を一層強化」される対象であり、補助金、税制優遇、規制緩和などの政策支援が期待できます。
戦略的シフト
- 野立てメガソーラーへの投資は縮小
- 屋根置き・営農型・公共インフラという成長分野にシフト
- 2026年以降の生存戦略
政府が明確に示した成長分野に集中することが、最も確実な成長戦略です。
地域共生型プロジェクトの標準化
「地域共生型については支援を一層強化」という方針を踏まえ、すべての新規案件を「地域共生型」として設計することが標準となります。
標準化すべきプロセス
- 地域説明会の開催
- 住民意見の計画反映
- 地域貢献策の明示
- 継続的な対話窓口の設置
- 自治体との協定締結
証拠の提示
- 「この案件は地域共生型である」という客観的証拠を示せる体制
- ESG適合証明パッケージの提供
地域共生プロセスを標準業務に組み込むことで、政府支援を確実に獲得できる体制を構築します。
“追加性”を訴求した企業向け提案強化
GHGプロトコルで”追加性”が重視される流れを捉え、企業向け提案を強化すべきです。
提案内容
- 「新設の太陽光発電所によるスコープ3削減貢献」を明確に訴求
- 既設FIT発電所からの電力購入では”追加性”が認められない
- 「新規に屋根置き太陽光を設置することで御社のGHGプロトコル対応に貢献」
ターゲット
- 国際的なサプライチェーンを持つ製造業
- スコープ3削減が急務の企業
- RE100、SBT参加企業
差別化要素
- “追加性”という国際基準への対応を明確に示せること
- GHGプロトコルの専門知識を持つこと
企業の脱炭素ニーズを”追加性”という切り口で訴求することが、新たな営業戦略となります。
住宅トップランナー制度見直しへの対応
住宅トップランナー制度が見直され、大手ハウスメーカーに高い目標が設定されることで、住宅向け太陽光需要が拡大します。
対応策
- 大手ハウスメーカーとの提携関係を構築
- 量産型の屋根置き太陽光設置を効率的に行える体制
- 住宅市場という巨大なボリュームゾーンを開拓
必要な体制
- 住宅向け太陽光の標準パッケージ開発
- 施工の効率化・標準化
- 大量発注に対応できる供給体制
住宅市場は、安定的で継続的な案件が期待できる重要な成長分野です。
ライフサイクルカーボン対応の提案パッケージ開発
2028年に5000m²以上の事務所ビルでライフサイクルカーボン算定・届出が義務化されることを見据え、対応パッケージを開発すべきです。
パッケージ内容
- ライフサイクルカーボン算定支援
- 太陽光発電の統合設計
- 国への届出支援
- 継続的なモニタリング
提供価値
- 設計段階から太陽光発電を組み込み、確実な削減効果を実現
- 届出義務への確実な対応
- ワンストップでの総合支援
この制度は2028年開始ですが、今から準備を始めることで先行者利益を獲得できます。
「逆風」ではなく「選別の時代」
記事の最後に指摘されているように、「市場の成熟は、裏を返せば産業としての真価が問われる局面」です。
淘汰される事業者の特徴
淘汰される事業者
- 地域トラブルを抱える事業者
- 環境配慮を軽視する事業者
- 短期的な収益のみを追求する事業者
- 質よりも量を優先する事業者
これらの事業者は、政府の支援を受けられず、市場から排除されます。
生き残る事業者の特徴
生き残る事業者
- 地域共生を実現している事業者
- 環境配慮を徹底する事業者
- ライフサイクルでの価値を提供する事業者
- 質の高いプロジェクトを実現する事業者
これらの事業者は、政府の支援を受け、市場で成長します。
「実力が試される段階」の意味
小林氏の言葉
- 「これまでが強い追い風だったとすれば、今は市場が成熟し、実力が試される段階に入った」
この言葉は、業界全体への厳しいメッセージであり、同時に、質の高い事業者にとっては大きな成長機会でもあります。
「追い風」は吹き続けている
JPEA新春交流会で3省幹部が示したメッセージは、「太陽光推進の政策は終わっておらず、追い風は吹き続けている」という明確なものでした。
3つの追い風
技術の風
- 技術の進展やコスト低下
- ペロブスカイトなど新技術の実用化
産業の風
- 多様な事業者の参入
- 市場の成熟と深化
政策の風
- 重点3分野への支援強化
- GHGプロトコルと”追加性”
- ライフサイクルカーボン義務化
ただし、その追い風は量的拡大一辺倒の時代とは性格を異にし、地域共生・環境配慮・ライフサイクルでの価値という質的転換を求めています。
2026年の位置づけ
経産省の位置づけ
- 「追い風を具体的な成果として形にする一年」
EPC事業者にとって、2026年は質的転換への対応を完了させ、新しい市場構造で成長軌道に乗る決定的な年となります。
技術、ビジネスモデル、地域との関係性を磨き上げることで、太陽光発電は名実ともに「主力電源」としての地位を確立していくはずです。
