みなさん、こんにちは!

今日は、太陽光発電に対する「自然破壊」「エコではない」という批判について、太陽光発電協会(JPEA)の増川武昭事務局長へのインタビューから、業界側の見解と今後の方向性を共有します。

現在批判されている山林を切り拓くメガソーラーの多くは、FIT導入初期(2012~2015年頃)の高額買取価格(20~40円/kWh)で認定を受けた案件が、時間差で今になって開発されているものです。現在のFIT価格9円以下では、山を削って盛り土をする開発は経済的に成立しません。

今後の主流は住宅屋根・事業用施設・農業関連など既開発地への設置となり、JPEAは山林開発を除外しても導入ポテンシャルを2380GW(国内電力需要の約2.5倍)と推計しています。

さらに重要なのは、電力会社からの購入が30円超/kWhに対し、自家消費型太陽光は20円未満/kWhという経済性です。これは、FITという「補助金」なしでも太陽光発電が市場原理で成立することを意味し、「補助金頼み」から「経済合理性」のフェーズへの移行を示しています。

「メガソーラー批判」の時間差──なぜ今になって開発されるのか

太陽光発電協会(JPEA)の増川武昭事務局長は、現在批判されているメガソーラー開発について、重要な構造的背景を説明しています。

現在の批判が向けられている開発の正体

増川氏の説明

現在、批判されているような山林を大規模に切り開いて開発するメガソーラーは新規ではかなり少なくなっていて、今後もどんどん減っていく見通しなのです。これは主に経済的な理由によるものです。

開発の時間差

  • 2012年にFIT導入当初、事業用太陽光の売電価格はkWhあたり40円と高額
  • その後も数年は20~30円台の高値が続いた
  • 山林を切り開いて開発するような大規模なメガソーラーの多くは、
    この時期に国の認定を受けた発電事業が時間差で今になって開発されている

現在のFIT価格

  • 新規に認定される事業のFIT価格は年々低下
  • 現在、地上設置の大規模太陽光のFIT価格は入札で決まり、その上限価格は9円以下
  • この価格では、山を削ったり盛り土をしたりすると事業として採算が取れない

結論

  • そのため、山林を切り拓くようなメガソーラーはおのずとなくなっていくと考えられる

この説明が示す重要な事実は、現在の批判は「過去の制度設計の結果」であり、既に経済環境は大きく変化しているということです。

地域対話の重要性

法令違反への厳しい姿勢

報道されている事例については、森林法などの法令に違反している部分があるのは大きな問題で、事業者は直ちに是正すべきだと考えます。

地域とのコミュニケーション

  • 本来は地域の人たちとしっかりとコミュニケーションをとりながら事業に取り組むべき

過去の良い事例

  • 住民の声を受けて開発地域を狭めたり、
    景観を損ねないように植林をしてパネルを隠したりした対応事例
  • 開発自体を止めた例もある

増川氏の見解

多くの事業者はそのように対話を重ねて地域と折り合いをつけてきているのに、少数の悪質な事例がクローズアップされて業界全体の印象が悪化してしまうのは歯がゆい思いがあります。
そもそも、地域の方々の理解が得られていないものを、無理に開発すべきではありません。

この姿勢は、業界団体として明確に示されるべき基本原則です。

膨大な導入ポテンシャル──山林開発なしでも国内需要の2.5倍

増川氏は、日本の太陽光発電の導入余地について、驚くべき試算を示しています。

「国土が狭い」という誤解

よくある疑問

日本は国土が狭く平地が少ない国です。国土面積あたりの日本の太陽光発電の導入量は、すでに主要国の中で最大。山林を切り拓かなければ、これ以上増やせないのでは?

増川氏の回答

いえ、全くそんなことはありません。

今後の主流となる設置場所

既開発地への設置

  • 住宅の屋根上
  • オフィスや工場、駐車場や空港などの事業用施設
  • 田畑や耕作放棄地などの農業関連

増川氏の説明

これらはすでに人間の手で開発済みの土地ですから、新たに山林を切り拓く必要はありません。

技術の進展

  • 軽量で建物の壁などにも設置できるペロブスカイト太陽光電池
  • 農業をしながら発電を行えるソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)

これらの技術が、既開発地への設置を後押しします。

PV OUTLOOK 2050の試算

JPEAの報告書(2024年7月発表)

  • 日本全体の太陽光発電の導入ポテンシャル:2380GW
  • 山林などでの新規開発は積算から除外している
  • それでも、ポテンシャルは日本国内の電力需要の約2.5倍

2050年度の現実的な導入見通し

  • 経済合理性などを考慮して算定:400GW
  • 試算時点(2022年度末)の導入実績:71GW
  • 5倍以上に増加し、国内の電力需要の約36%を賄うことができる

この試算は、「開発余地がない」という懸念は全くの誤解であることを示しています。

CO2削減効果の科学的根拠──火力の10~20分の1

太陽光発電が「エコではない」という批判について、増川氏は科学的データで反論しています。

エネルギーペイバックタイム

定義

  • 太陽光パネルの製造、設置、運用、保守、使用後処理までのすべての工程で使われるのと
    同量のエネルギーを発電で生み出すまでの期間

最新の太陽光パネル

  • だいたい1~2年

太陽光パネルの寿命

  • 20~30年以上

結論

1~2年でペイバックを終えた後の期間はCO2を排出せずにエネルギーを生み出すことができる計算です。運転開始後、何十年にもわたって化石燃料を投入してCO2を排出し続ける火力発電と比較すれば、どちらが脱炭素につながるかは明らかでしょう。

ライフサイクルCO2排出量の比較

電力中央研究所の試算

  • 太陽光発電:38~58g/kWh
  • 石炭火力:942.7g/kWh
  • LNG火力:473.5g/kWh

比較

  • 太陽光発電のCO2排出量は、火力発電の10~20分の1

さらに

この試算は10年前のもの。最新の太陽光パネルは当時より発電性能が上がっているので、kWhあたりのCO2排出量はさらに少なくなっていると思われます。

「パネルが熱くなって温暖化」という誤解

増川氏の説明

『パネルが太陽光で熱くなって温暖化を助長している』というご意見もあるようですが、太陽熱で温まるのはパネル周辺のごく局所的な範囲で、これは建物など他の人工物と変わりません。
それよりもはるかに、CO2排出削減による温暖化抑制効果の方が大きいのです。

これらのデータは、「エコではない」という批判が科学的根拠を欠いていることを明確に示しています。

自家消費型へのシフト──「FIT後」の経済合理性

政府が2027年度以降のメガソーラー事業への支援廃止方針を固めたことについて、増川氏は楽観的な見通しを示しています。

再エネ賦課金の真実

現在の状況

  • 2025年度、標準的な家庭(月400kWh)で月1,592円の再エネ賦課金
  • 現状の賦課金が高いという指摘はその通りだと思います(増川氏)

高額の理由

  • FIT導入された2012年度の事業用太陽光発電の買い取り価格は40円/kWhで現在の4倍以上
  • 固定価格での調達期間は発電開始から20年(住宅用は10年)で、
    市場価格との差額が再エネ賦課金
  • いま消費者が支払っている賦課金は、
    この時代に認定を受けた事業の分がほとんどを占めています

新規認定の状況

  • 現在、新たに認可される太陽光の買い取り価格は8円台~10円/kWh程度
  • これは市場価格とほぼ同水準
  • 新規に認定される太陽光発電について、消費者が支払う再エネ賦課金の負担が
    増えることはほとんど無いと考えています(増川氏)
  • 今後増えていく分の太陽光発電は安い

将来の見通し

  • 制度開始から20年が経つ2032年頃からは、
    過去の高額なFITの調達期間が順次終了していくことで賦課金の額も減っていく
  • 最終的にはゼロになる見込み

FIT制度の意義

増川氏の評価

それでもFIT制度には、将来世代に負担をかけないための未来への投資という意義があったのも確かです。こうした、実現したメリットについても目を向けるべきではないかと思います。

実現したメリット

  • 太陽光発電は国内の発電電力の10%ほどを担うまでになった
  • その分、CO2の排出量も減らせている
  • 毎年20兆円以上にもなる化石燃料の輸入による国富の流出の抑制に貢献
  • 夏の暑い昼間には太陽光発電が大きな電力を生み出し、
    かつてのように節電要請が出ることもほとんどなくなった

自家消費型の経済性

FIT廃止後の懸念

太陽光発電事業者側のうまみがなくなって普及がストップしないのか

増川氏の見通し

これまではFITの売電収入を目的とした太陽光発電が主流でしたが、今後は住宅や事業所などでの自家消費型の割合が増えていくと考えています。

経済性の比較

  • 家庭が電力会社に支払う電気料金:1kWhあたり30円を超えることも
  • 住宅の屋根に太陽光パネルを設置した場合のコスト:
    1kWhあたり20円を下回るようになってきている

結論

つまり電力会社から電気を買うよりも、自分で太陽光パネルを屋根につけて自家消費したほうが、トータルの負担額を安くすることができるわけです。
自家消費中心の再エネの活用法は、FIT制度導入前の本来の形に近い姿と言えるかもしれません。

現状と展望

  • 自家消費型のメリットについてはまだ社会の認知があまり進んでいませんが、
    それでも設置数は着実に増えてきている
  • 今後の需要増を見越して、地上設置から建物設置にビジネスをシフトする業者も出てきた
  • 事業環境がこれまでと変わっても、太陽光発電が今後も増加していくことは間違いない

この転換は、太陽光発電が「補助金頼み」から「経済合理性」のフェーズに移行していることを明確に示しています。

EPC事業者としての3つの戦略的対応

JPEA事務局長の見解は、EPC事業者が今後取るべき戦略方向を明確に示しています。

01

「時間差」の丁寧な説明と将来ビジョンの発信

この説明責任を果たすことが、業界全体の信頼回復の第一歩となります。

現在の批判の構造

  • 山林開発への批判は、FIT初期(2012~2015年)の
    高額買取価格(20~40円/kWh)で認定された案件
  • これらが時間差で今になって開発されている
  • 現在のFIT価格9円以下では、山林開発は経済的に成立しない

EPC事業者の役割

  • この「時間差」を顧客や地域社会に丁寧に説明
  • 「太陽光発電=山林破壊」という印象が固定化されつつある今、
    むしろ「今後の太陽光発電は既開発地中心で、新たな自然破壊は起きない」という
    メッセージを積極的に発信

具体的な対応

  • 事業計画説明の際に、FIT価格の推移と経済性の変化を明示
  • 「当社は山林開発を行わない」という方針の明確化
  • 既開発地への設置提案メニューの充実
  • 地域説明会での丁寧な情報提供

信頼構築

  • 短期的な批判回避ではなく、長期的な業界全体の信頼回復に貢献
  • 「少数の悪質な事例」と一線を画す姿勢の明確化
02

自家消費型提案の強化と経済性の定量的訴求

FIT後の時代は、経済合理性が最大の競争優位性となります。

自家消費型の経済性

  • 電力会社からの購入:30円超/kWh
  • 自家消費型太陽光:20円未満/kWh
  • この10円/kWh以上の差は、FIT廃止後の最大の訴求ポイント

提案内容

  • 初期投資回収期間の明示(例:10年)
  • 25年間のライフサイクルコストの比較
  • 電気料金上昇リスクのヘッジ効果
  • 「補助金ありき」ではなく「経済合理性」での選択を促す

タイミング

  • 住宅:電気料金削減を重視する家庭
  • 事業所:電力コスト削減とBCP(事業継続計画)を両立したい企業
  • 工場・倉庫:大口需要家で削減効果が大きい

標準化

  • 自家消費型提案の資料テンプレート化
  • 電気料金削減シミュレーションツールの開発
  • 融資・リース提案とのパッケージ化
03

CO2削減効果の定量的見える化

CO2削減効果の定量的見える化は、太陽光発電の環境価値を最大限に訴求する手段となります。

科学的データの活用

  • エネルギーペイバックタイム:1~2年
  • ライフサイクルCO2排出量:38~58g/kWh(火力の10~20分の1)
  • 「エコではない」という批判に対する科学的反論

企業向け提案

  • 年間CO2削減量の定量的提示(例:年間100トン削減)
  • Scope2削減への貢献度の明示
  • RE100、SBTiなど国際イニシアチブへの対応支援

見える化ツール

  • CO2削減量のリアルタイムモニタリング
  • 月次・年次レポートの自動生成
  • ESG報告書への活用

ターゲット

  • 脱炭素目標を持つ製造業
  • サプライチェーン全体でのCO2削減を求められる企業
  • ESG投資家からの評価を重視する上場企業

差別化

  • 科学的根拠に基づくCO2削減効果の証明
  • GHGプロトコル対応の詳細データ提供
  • 環境価値の最大化提案

太陽光発電は、FIT導入から13年を経て大きな転換点を迎えています。

現在批判されている山林開発案件は、FIT初期(2012~2015年)の高額買取価格で認定された案件が時間差で開発されているものであり、現在のFIT価格9円以下では経済的に成立しません。今後の主流は住宅屋根・事業用施設・農業関連など既開発地への設置となり、JPEAは山林開発を除外しても導入ポテンシャルを2380GW(国内電力需要の2.5倍)と推計しています。

さらに重要なのは、電力会社からの購入(30円超/kWh)より自家消費型太陽光(20円未満/kWh)の方が安いという経済性です。これは、FITという「補助金」なしでも太陽光発電が市場原理で成立することを意味し、「補助金頼み」から「経済合理性」のフェーズへの移行を示しています。

EPC事業者として、「時間差」を丁寧に説明し将来ビジョンを発信すること、自家消費型の経済性を定量的に訴求すること、CO2削減効果を科学的データで見える化することが、FIT後の時代における成長戦略となります。

2032年頃から再エネ賦課金が順次減少しゼロになる見込みの中、自家消費型のメリットは社会に広く認知され、太陽光発電は真の意味で「経済合理性で選ばれる電源」へと進化していきます。