みなさん、こんにちは!

今日は、再エネの転換点を象徴する3つのニュースを取り上げます。
南アジアの「石炭からの脱却」、IEAによる世界再エネ容量の倍増予測、そして積水化学による「フィルム型太陽電池」社会実装の加速です。

これらを通して見えてくるのは、再エネが「環境政策」から「経済・安全保障インフラ」へと進化しているという、時代の大きな変化です。

南アジア4カ国が進める“生活のためのエネルギー転換”

ブータン、ネパール、スリランカ、モルディブ。
決して経済的に豊かな国々ではありませんが、いずれも再エネ導入を加速させています。

その理由は「気候対策」ではなく、エネルギーの自立です。

ブータン冬季の水力不足を補うため、300MWの太陽光導入へ
ネパール燃料封鎖をきっかけにEV化を推進(新車販売の90%をEVへ)
スリランカ停電・料金高騰を経て、AI活用による電力網安定化を検討
モルディブ輸入ディーゼルから島々ごとで太陽光+蓄電に転換

これらの国々は、“環境を守るため”ではなく、“生活を守るため”にエネルギーを変えようとしています。

「再エネ=サステナビリティ」ではなく、「再エネ=主権」という発想の転換は、成熟国が学ぶべき現実かもしれません。

世界の再エネ容量、2030年までに倍増へ

IEA(国際エネルギー機関)の最新レポートでは、2030年までに世界の再エネ発電容量が倍増(+4,600GW)すると予測されています。そのうち約80%を牽引するのが太陽光。

ただし、同時に次の課題も指摘されています。

  • 太陽光・風力部材の供給網が中国に集中
  • 出力変動による系統負荷の増大
  • 電力システムの安定化に向けた蓄電・制御技術の重要性

これはまさに、BESS(蓄電池)やEMSの価値が急速に高まる構造的転換を示しています。

世界的に見ても「再エネ+蓄電」の組み合わせが標準化するのは時間の問題です。

ペロブスカイト太陽電池が切り拓く“空間の発電化”

国内では、積水化学が開発するフィルム型ペロブスカイト太陽電池が注目を集めています。
大阪・関西万博会場での実証を経て、建物の屋根や壁面に貼る新しい発電スタイルが現実味を帯びてきました。

軽く、曲げられ、建材としても活用できるこの技術は、シリコンパネルの「土地依存型」に対し、都市部でも“空間を発電面に変える”技術です。

積水化学は、2027年前半に年間100MW規模の量産を目指すと発表。
発電効率・耐久性の課題を乗り越えれば、都市部の地産地消電力モデルを牽引する存在になるでしょう。

エネルギーの「目的」は環境から主権へ

再エネは今、「気候対策」から「経済防衛・エネルギー主権」へと役割を変えています。
燃料輸入リスクを減らし、地域が自立するためのツール。
これは発展途上国だけでなく、エネルギー輸入国である日本にとっても同じ構図です。

地方自治体や地域EPCが再エネ導入を進めることは、地域経済の独立性を高める“防衛的投資”にもなり得ます。

技術革新が生む“分散化社会”の現実

ペロブスカイトやBESSなどの新技術は、再エネの主戦場を「広い土地」から「既存空間」へと移しています。
屋根、壁、駅舎、商業施設、公共インフラ…。
これまで発電できなかった場所が、次々に“電源”に変わる時代です。

分散化が進めば、送電負荷を減らし、災害時のレジリエンスも強化できる。
地域レベルでの再エネ・蓄電導入設計が、これからのEPCの新しいフィールドになるでしょう。

これら3つのニュースに共通するのは、「再エネを社会に溶け込ませる力」です。
南アジアの地域電化、IEAの世界予測、積水化学の建材型太陽電池。
どれも“社会の形”そのものを変える再エネの姿を映しています。

EPCとしても、日々の業務を通じて、地域・企業・建物単位での「再エネ社会実装」を支える提案を加速していきたいと思います。