みなさん、こんにちは!
今日は、NEDO・日本気象協会・産総研が共同で開発した、太陽光発電の「日射量予測の大外し」を低減する新技術についてご紹介します。
太陽光発電の“不確実性”を減らす挑戦
太陽光発電は、天候や雲量の変化によって発電量が大きく変動するため、電力需給計画と実績の差(インバランス)が発生しやすい電源です。
この“誤差”は、電力系統運用の負担を増やすだけでなく、調整力(予備電力)確保に年間約300億円ものコストを要しているといわれます。
今回の新技術は、こうした課題の原因となる「日射量予測の大外し」をAIで補正し、予測誤差を最大23%低減するというものです。
開発の中核「気象モデル × 機械学習 × アンサンブル予報」
この成果は、NEDOの委託事業として日本気象協会と産総研が2021〜2024年度に共同で実施したプロジェクトで得られたものです。
開発の中心は以下の3つの技術です。
日射量予測に特化した気象モデル開発
複数機関の気象モデル予測値を統合する手法
アンサンブル予報に基づく信頼度予測技術
とくに2の統合技術では、複数の気象モデルの出力を機械学習で補正し、「大外し」を引き起こしやすい気象パターンをAIが自動的に識別。
その結果、従来では精度が低かったケースでも誤差が減少し、“大外し日”の発生率を最大23%削減することに成功しました。
2026年秋、商用サービスとして実装へ
日本気象協会は、すでに電力会社などへ提供している日射量予測・信頼度予測サービス(SYNFOSシリーズ)に、この新技術を2026年秋ごろから実装予定です。
これにより、太陽光事業者・新電力・系統運用者はより正確な予測データに基づいた需給運用・蓄電計画・発電制御が可能になります。
FIT終了後の「自立的運用フェーズ」では、発電事業者自らがインバランスリスクを管理する時代に入るため、こうした技術の精度向上は、収益安定化の直接的な武器になります。
予測精度がもたらす“次の競争軸”
かつての太陽光発電は「設置規模」で競争していましたが、今後は「運用精度」での差別化が進みます。
PPA事業者やアグリゲーターにとって、予測誤差を最小化することは、インバランスコストの削減=利益確保に直結します。
つまり、これからの競争軸は「設備容量 × 稼働率 × 予測精度」という三位一体のパフォーマンス最適化へと移行していくのです。
ローカルエネルギー運用にも波及する可能性
全国規模での需給予測だけでなく、この技術は地域マイクログリッドや自治体PPAにも応用できます。
地域レベルで日射量予測が高精度化すれば、
- バッテリーの最適制御
- EV・ヒートポンプとの連携運用
- 需要家側のピークカット制御
といった“ローカルEMS(エネルギーマネジメントシステム)”の効率化にもつながります。
気象 × AI は、分散型エネルギー社会の制御インフラとしても中核を担う可能性を秘めています。
予測データを“設計知”へ転用する
EPCの立場から見ると、この技術の活用ポイントは運用だけではなく設計段階にもあります。
例えば、
- 過去3年分の気象予測誤差分布を考慮した発電シミュレーション
- 地域特性別AIモデルを用いた蓄電池容量設計の最適化
- 施工後の実績データとのフィードバック学習
といった活用により、EPCが持つ現場データとAIモデルの融合が進むでしょう。
商用サービスとしてのAPI提供が始まれば、社内シミュレーションツールや提案資料にも統合可能になり、提案の“精度と説得力”を大幅に向上させる可能性があります。
外さない設計が、再エネの信頼をつくる
再エネ普及の次のフェーズでは、「つくる」だけでなく「外さない」ことが信頼性の指標になります。
AI予測とEPC技術が融合すれば、発電計画の最適化から施工後の需給制御までを一気通貫で設計する時代が到来します。
日射量予測の“精度”は、もはや単なるデータ品質ではなく、再エネインフラ全体の“信頼性”を左右するコア技術になろうとしています。
