みなさん、こんにちは!

今日は、トランプ政権が国防総省に石炭火力からの電力調達を指示した背景と、日本の防衛施設における再エネ推進政策との対比から、エネルギー安全保障の視点を共有します。

トランプ大統領は2026年2月11日、国防総省に対し石炭火力からの電力調達を指示する大統領令を発令しました。ホワイトハウスは「風力や太陽光などのいつも発電できない電源は、異常気象の際には信頼性が低く、依存する電力網や防衛施設は停電に対して脆弱になる」と説明しています。

一方、日本では2019年12月に河野太郎防衛相(当時)が自衛隊施設の電力調達で再エネ比率を大幅に引き上げ、最終的には再エネ100%を目指す指示を出しており、安定供給よりも温暖化対策を優先する姿勢に疑問が呈されています。

さらに、2025年に米国の太陽光発電設備から不審な通信機が発見され、中国製設備による遠隔操作のリスクが浮上。2025年12月にはポーランドの再エネ設備がロシアのハッカー集団によるサイバー攻撃を受けており、再エネ設備のサイバーセキュリティリスクが顕在化しています。

この対比は、防衛施設・重要インフラにおけるエネルギー政策の優先順位を問い直すものです。

トランプ政権の石炭火力推進──「安定供給」を最優先する判断

トランプ政権の石炭火力推進は、防衛施設における電力調達の優先順位を明確に示しています。

国防総省への電力調達指示

大統領令の発令

  • 2026年2月11日、国防総省に対し石炭火力からの電力調達を指示
  • その翌日2月12日には「温室効果ガスの危険性認定」を取り消す大統領令を発令

ホワイトハウスの説明

  • 信頼性の高い電力網は、軍事施設、軍事作戦、防衛産業の生産に電力を供給し、
    アメリカ国民の安全を確保する上で不可欠
  • 混乱が長引けば作戦即応性と国家安全保障が脅かされる

石炭を選ぶ理由

  • 国防総省は、電力を継続的に供給する膨大な石炭資源を戦略的に活用することが急務
  • 風力や太陽光などのいつも発電できない電源は、異常気象の際には信頼性が低く、
    依存する電力網や防衛施設は停電に対して脆弱になる

この説明は、防衛施設にとって最重要なのは温暖化対策ではなく安定供給であるという判断を明確に示しています。

米国の電力需給状況の変化

従来の状況

  • 10年以上成長がみられなかった米国の電力消費量

転換点

  • 生成AIを支えるデータセンターの電力消費増により増加に転じた
  • 将来の電力不足も懸念される状況に

政策の変化

  • 使える発電設備は何でも使う時代になってきた
  • トランプ政権は、老朽化により閉鎖が続いていた石炭火力発電所の閉鎖中止を指示

実際の効果

  • 今冬の寒波では石炭火力が電力消費を支えた地域もあった
  • 減少していた石炭火力の発電量は下げ止まり増加に転じている

この電力需給の逼迫が、石炭火力再評価の背景にあります。

石炭vs天然ガス──価格と供給の安定性

天然ガスの課題

  • シェール革命以降、価格は大きく下落
  • しかし、冬季の需要増の影響に加え国際市場の影響も受ける
  • 2022年のロシアのウクライナ侵攻による天然ガス価格上昇は、
    米国内の発電用天然ガス価格にも及んだ

石炭の優位性

  • 米国の石炭も輸出されているが、輸出市場と国内発電用石炭市場間の関係は薄く
    国際市場の影響をさほど受けない
  • ロシアのウクライナ侵攻を受け、国際市場では石炭価格は一時10倍にも高騰したが、
    国内発電所向けの石炭価格は資機材へのインフレの影響を受け上昇した程度

結論として、価格が安定的に推移する前提であれば、発電用途においては石炭に一定の優位性があると考えられます。発電用石炭の供給量も下げ止まりの傾向にあり、安定供給が可能な状況にあります。

また、輸出市場の大きな伸びも現時点では想定されておらず、需給バランスの観点からも急激な競合激化は起こりにくいと見られます。これらを踏まえると、短中期的には安定性を軸としたエネルギー源として一定の競争力を維持する可能性があります。

この価格・供給の安定性が、防衛施設の電力調達で石炭が選ばれる理由です。

再エネ設備のサイバーセキュリティリスク──盲点だった脆弱性

トランプ政権の石炭火力推進のもう一つの背景は、再エネ設備が抱えるサイバーセキュリティリスクです。

米国での不審な通信機発見

2025年、米国の太陽光発電設備から不審な通信機器が発見され、ニュースとして大きく報じられました。再エネ設備のサイバーセキュリティーに対する懸念が改めて注目を集める出来事となりました。

背景として、太陽光や風力発電設備には、事業者・電力会社・O&M(保守管理)事業者などと接続するための通信機能が標準的に組み込まれています。出力制御、監視、遠隔保守などを行うためには通信は不可欠です。一方で、中国の製造業者が発電設備に通信可能な機器を忍び込ませ、遠隔から発電を遮断する可能性については、以前から指摘されてきました。

再エネ設備は分散型電源であるがゆえに、複数の関係者とネットワーク接続される構造を持っています。そのため、遠隔操作が可能な環境であること自体が、サイバー攻撃や不正アクセスのリスクを高める要因となります。

今後は、機器レベルのセキュリティー確認、通信経路の暗号化、アクセス権限管理の徹底、サプライチェーンの透明性確保といった対策を講じることが、再エネ普及と同時に求められる重要課題となります。

ポーランドへのサイバー攻撃

2025年12月29日から30日にかけて、ポーランドの送電網、熱電供給システム、太陽光および風力発電設備がサイバー攻撃を受けました。電力インフラを広範囲に標的とした攻撃として大きな注目を集めました。

ポーランドの首相である ドナルド・トゥスク は、「個別の再エネ設備が攻撃を受けたことはあるが、複数の再エネ設備に対する大規模な攻撃は初めてだ」と述べています。再エネ設備が集中的に狙われた点が特徴的でした。

ポーランド政府は、攻撃者について ロシア連邦保安庁 傘下のハッカー集団「ベルセルク・ベア」によるものと発表しています。

攻撃自体は撃退され、実害は発生しませんでした。しかし、ポーランドの電力供給の約29%を占める再生可能エネルギー電源が同時に標的となったことで、再エネ設備のサイバーセキュリティ上の脆弱性が改めて浮き彫りになりました。

この事件は、再エネ設備のサイバーセキュリティリスクが理論上の懸念にとどまらず、現実のインフラ脅威として顕在化していることを示す象徴的な事例と言えます。

欧州の対応──中国製設備への警戒

欧州では、再エネ設備のサイバーセキュリティを国家安全保障の観点から捉える動きが強まっています。欧州委員会は、風力発電設備の導入に際してサイバーセキュリティ上のリスクを十分に検討するよう加盟国に指示しました。事実上、中国製設備の導入を慎重に判断すべきだというメッセージと受け止められています。

ドイツでは、中国製設備の導入を予定していた洋上風力事業者が、最終的にドイツ製設備へと切り替える判断を行いました。エネルギーコストだけでなく、供給網リスクや遠隔操作の可能性を含めた安全保障上の観点が意思決定に影響を与えています。

英国でも類似の議論がありました。2016年、英国政府は中国広核集団とフランス電力の共同事業体に、ヒンクリーポイントC原子力発電所の建設を発注しました。しかし、中国側が遠隔操作可能な機器を密かに設置し、将来的に発電を停止させる可能性があるのではないかとの懸念が議論されました。

さらに、2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、強権国家への依存リスクを改めて浮き彫りにしました。その結果、英国政府は今後の原子力事業における中国の参加を白紙にする決断を下しています。

これらの動きは、再エネや原子力といった発電インフラが、単なる経済合理性ではなく、安全保障・サイバーリスクを含めた総合的な視点で評価される時代に入ったことを示しています。

これらの事例は、欧州が中国製設備のリスクを真剣に受け止めていることを示しています。

日本の防衛施設における再エネ推進──「環境優先」の危うさ

日本では、トランプ政権とは正反対のアプローチが取られています。

河野太郎防衛相の指示(2019年12月)

指示の内容

  • 「防衛省・自衛隊における電力の調達に係る防衛大臣の指示」
  • 2020年度から電力調達において再エネ比率を大幅に引き上げる
  • 地元で発電する会社などから優先的に購入
  • 見直し結果を2020年5月末までに報告せよ

目標

  • すべての自衛隊施設で再エネ比率を引き上げ
  • 最終的には再エネ100%を目指す内容

セキュリティリスクへの無理解

  • 当時すでに英国では電力供給を一部とは言え中国に依存するリスクが議論されていた
  • 防衛相は通信装置が組み込まれている再エネ設備に、
    自衛隊のすべての電力供給を依存する危険性を認識していなかった

記事では、防衛相の姿勢に対して疑問が投げかけられています。すなわち、「エネルギーの安定供給よりも温暖化対策を優先させるのは妥当なのか」という問題提起です。

小泉環境相との共同要請(2020年12月)

さらなる推進

  • 2020年12月、規制改革担当相に就任していた河野太郎氏は当時の小泉進次郎環境相と共同で
    国の施設で調達する電力の3割以上を2021年度から再エネに切り替えるよう各省庁に要請

背景

  • 菅義偉元首相は2050年温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指すと2020年10月に表明

記事では、両氏が環境面を過度に重視し、安定供給や価格、さらには安全保障への配慮が不十分だったのではないかと指摘しています。

この日本の政策は、トランプ政権の「安定供給最優先」と180度異なります。

中国依存リスク──太陽光パネル製造の80~85%を支配

再エネ設備の中国依存は、地政学リスクそのものです。

圧倒的なシェア

太陽光パネル製造

  • 中国は2025年の世界の太陽光パネル製造の80%から85%のシェアを持つ
  • 原料であるポリシリコン製造の8割以上のシェアを持つ

この支配的地位が、サイバーセキュリティリスクの源泉となっています。

ロシア侵攻後の認識変化

教訓

  • 2022年のロシアのウクライナ侵攻以降、強権国家にエネルギーや原材料を
    依存するリスクを回避するため、主要国は自給率向上と脱ロシアを課題にした

新たなリスク

  • 原子力と再エネ導入が求められたが、再エネ設備の原材料を中国に依存するリスクが浮上

対応

  • 日米欧は連携し、再エネ設備の原料となる重要鉱物の共同での開発、加工を進めている
  • 道はまだ遠いが常に地政学のリスクを意識し行動することが求められる

この中国依存リスクは、単なる経済問題ではなく、国家安全保障の問題です。

EPC事業者としての3つの戦略的対応

トランプ政権の石炭火力推進と日本の再エネ推進政策の対比は、EPC事業者に複雑な課題を提示しています。

01

防衛・重要インフラ案件での
「安定供給+再エネ」提案の標準化

この標準提案により、環境と安全保障の両立を実現できます。

防衛施設の特性

  • 防衛施設や重要インフラ施設にとって最重要なのは安定供給
  • 「異常気象時・災害時にも電力供給を維持できる」ことが必須

EPC事業者の対応

  • 太陽光発電導入提案において「再エネ導入」だけでなく
    「安定供給確保」を同時に実現する設計が不可欠

具体的な提案内容

  • 蓄電池併設:太陽光発電の変動を吸収
  • バックアップ電源(ディーゼル発電機等)の確保
  • マイクログリッド化によるBCP対策

ターゲット

  • 防衛施設(自衛隊基地等)
  • 重要インフラ(警察、消防、病院、データセンター等)
  • 公共施設
02

「経済安全保障対応」を差別化要素とした提案

この差別化により、価格以外の競争優位性を確立できます。

政治的背景

  • 高市政権下で経済安全保障が重視される
  • 重要インフラへの太陽光発電導入においては調達先の地政学リスク評価が求められる

サイバーセキュリティリスクの訴求

  • 中国製設備には通信機能による遠隔操作のリスク
  • 2025年に米国で不審な通信機発見
  • 2025年12月にポーランドでサイバー攻撃

具体的な提案内容

  • 中国依存度の低いサプライチェーン構築
  • 国産パネル・インド製パネルの優先使用
  • 通信機能のセキュリティ認証取得
  • サプライチェーンの透明性確保

ターゲット

  • 防衛関連施設
  • 公共事業(特に重要インフラ)
  • 経済安全保障を重視する企業
03

顧客の業種・施設特性に応じた提案の使い分け

この柔軟な提案により、多様な顧客ニーズに対応できます。

重要な認識

  • すべての顧客が防衛施設や重要インフラではない
  • 一般企業の工場・倉庫・商業施設などではコスト重視の提案が依然として有効

顧客ヒアリングの重要性

  • 提案前に顧客の優先順位を確認
  • 「コスト」「安全保障」「環境」のうち何を最重視するかをヒアリング

パターンA:コスト最優先

  • 対象:一般企業(製造業、物流、商業施設等)
  • 提案:中国製設備を含む最もコストパフォーマンスの高い提案
  • 訴求ポイント:初期投資削減、投資回収期間短縮、電気代削減

パターンB:安全保障・セキュリティ重視

  • 対象:防衛施設、重要インフラ、公共施設
  • 提案:日本製・欧州製・インド製設備を中心とした提案
  • 訴求ポイント:経済安全保障対応、サイバーセキュリティ、安定供給

パターンC:バランス型

  • 対象:大手企業、上場企業、ESG重視企業
  • 提案:経済性と安全保障のバランス
  • 訴求ポイント:ESG対応、サプライチェーン透明性、ブランド価値

トランプ政権の国防総省への石炭火力電力調達指示は、防衛施設にとって最重要なのは温暖化対策ではなく安定供給であり、再エネ設備にはサイバーセキュリティリスクがあるという認識に基づいています。

2025年に米国の太陽光発電設備から不審な通信機が発見され、2025年12月にはポーランドの再エネ設備がロシアのハッカー集団によるサイバー攻撃を受けており、理論的リスクが現実の脅威となっています。

一方、日本では2019年12月に河野太郎防衛相(当時)が自衛隊施設の再エネ100%を目指す指示を出しており、安定供給よりも環境を優先する姿勢に疑問が呈されています。

中国は世界の太陽光パネル製造の80~85%、ポリシリコン製造の8割以上のシェアを持ち、再エネ設備への依存は中国依存リスクそのものです。ロシアのウクライナ侵攻後、欧州では中国製設備を慎重に検討する動きが加速しています。

エネルギー政策で重要なのは「安定供給、価格、環境」の3つですが、防衛施設・重要インフラにおいては、安定供給が最優先であるという認識が求められます。