みなさん、こんにちは!
今日は、東北地方で急増する「系統用蓄電池の空押さえ問題」について共有します。
国の補助金を目当てにした土地転売目的のブローカーが参入し、かつての太陽光バブルを超える開発バブルが発生しています。
資源エネルギー庁は2026年1月から接続検討申込時の土地取得書類提出を要件化し、接続契約申込時には使用権原を証する書類提出を義務化するなど、規律強化に乗り出しました。
出力制御問題の解決には系統用蓄電池が不可欠ですが、投機的参入による「暴走した市場」は、本来必要な場所に蓄電池が設置されないという本末転倒を招きます。制度の健全化が急務となっています。
東北地方で急増する系統用蓄電池の申請
東北地方で系統用蓄電池(蓄電所)の用地申請が急増し、開発バブルの様相を呈しています。
送電網につないで充放電し電力の価格差で稼ぐ系統用蓄電池に対し、国が補助金を整えたことで「投資利回り15〜20%」を見込んだ土地転売目的のブローカーが参入し、東北電力グループは案件をさばききれない状態に追い込まれています。
2025年9月末時点で、全国の系統用蓄電池の状況は以下の通りです。
| 接続検討受付 | 約15,000件・約1億6,361万kW |
| 接続契約申込受付 | 約2,800件・約2,260万kW |
| 接続済 | 111件・約49万kW |
この数字が示すのは、接続検討から実際の接続までの比率がわずか0.7%(件数ベース)、0.3%(容量ベース)であり、99%以上の案件が「系統容量を押さえているだけ」の状態だということです。
しかし、接続検討申込の中には事業化確度の低い案件が多数あり、系統容量の「空押さえ」状態が生じ、真に系統利用を希望する他の蓄電池や再エネ電源等の系統接続を妨げる深刻な懸念があります。
事実上実施不可能な土地での申込も横行
一般送配電事業者によれば、一部の系統用蓄電池事業者からは、以下のような事実上蓄電事業の実施が不可能と思われる土地での接続検討申込も行われています。
- 防災公園などの公共的な土地
- 既に別の建物が建設中の土地
- 住居以外が建設できない土地(第一種低層住居専用地域など)
これらは明らかに事業化の意図がなく、系統接続の権利だけを確保して転売することを目的とした申込と考えられます。
こうした案件が大量に申請されることで、接続検討を行う東北電力グループなどの一般送配電事業者の業務が逼迫し、真に事業化を目指す案件の処理が遅延するという悪循環が生じています。
2026年1月から土地取得要件化など規律強化へ
資源エネルギー庁の「次世代電力系統ワーキンググループ」第5回会合では、蓄電池の系統アクセス手続きの規律強化策について検討が行われ、具体的な対策が決定されました。
接続検討申込時の土地関連書類提出の要件化
2026年1月以降に接続検討の申込及び契約申込を行う全ての系統用蓄電池については、接続検討の申込時に事業用地に関する調査結果や登記簿等の提出を要件化することとしました。
今後は接続検討申込書の記載事項として、蓄電池・発電設備の設置場所における登記簿等の確認結果、所有者名、対応状況等のほか、関連書類の提出が求められます。なお電源種間の公平性の観点から、系統用蓄電池に限らず、接続検討が必要となる全ての新設発電設備も対象となります。
接続契約申込時の使用権原取得の要件化
現行の接続契約申込プロセスでは、申込者は系統接続を行う予定の土地の取得は必須ではなく、事業用地における使用権原の確認は行われていませんでした。これが、系統接続の権利(契約)だけを確保する「空押さえ」増加の一因となっていました。
他方、FIT/FIP制度の再エネ電源については、事業の確度を確認する観点から、認定時において事業用地の使用権原を証する書類の提出が原則求められています。
よって今後は、系統用蓄電池による「空押さえ」を避けるため、接続契約申込の時点で、事業用地における使用権原を証する書類の提出を契約要件として、使用権原の取得が確認できない場合は申込を取り下げ扱いとすることとしました。
土地取得要件化の適用開始時期や対象電源、使用権原を証する書類の提出タイミング等については、引き続き検討予定としています。
新たなビジネスモデルへの対策も検討
他方、自社では蓄電池の設置・運用をせず、先行的に土地を確保したうえで、接続契約申込を行い、土地と系統接続の権利(契約)をセットで他社へ売却する新しいビジネスモデルも現れています。
これ自体は直ちに問題とはなりませんが、蓄電池等が長期間にわたり連系されない場合、実質的に仮押さえと同じ状態となるため、他の事業者の迅速な系統接続の妨げとなるおそれがあります。
資源エネルギー庁では、系統容量確保時の保証金や系統容量開放ルールの強化等を含め、このようなビジネスモデルへの対策の必要性について検討を深める予定としています。土地取得要件化だけでは不十分であり、さらなる制度設計が求められているのです。
「太陽光バブル以上のトラブル」が予見される構造的問題
系統用蓄電池バブルについて、「かつての太陽光バブル以上に土地に絡んだトラブルが増えそう」という指摘は極めて重要です。
太陽光発電所は日当たりが重要な立地条件でしたが、蓄電所は日当たりが関係ありません。むしろ、蓄電池は発熱するため、冷却の観点からは日当たりが悪い方が良いとさえ言われます。
このため「太陽光発電所にならなかった遊休地」が標的となっており、防災公園や建設中の土地、住居専用地域など、事実上蓄電事業が不可能な土地での申込も発生しています。言うなれば、太陽光バブルで残った「二次選別地」が今度は蓄電池の対象となっているのです。
さらに、蓄電池コンテナ搬入のための物理的制約も大きな問題です。
- 道路幅(大型トレーラーが通行可能か)
- 地盤強度(重量物を支えられるか)
- 送電線までの距離
- 冷却設備の設置スペース
これらは太陽光パネルとは全く異なる制約であり、太陽光と同じ感覚では開発できません。
この認識不足が、計画地を巡るトラブル増加につながると予見されています。
FITバブルの教訓が活かされていない
「投資利回り15〜20%」という数字は、かつてのFIT初期の高額買取価格と同様、市場原理をねじ曲げた補助金制度の問題を示しています。
FITバブル期には、環境破壊を伴う野放図な開発や、事業化意図のない土地の仮押さえが横行しました。その反省から、2027年度には野立て太陽光への支援廃止、環境アセスメント対象の拡大、環境破壊チェックの義務化といった規制強化が進められています。
しかし、系統用蓄電池では同じ構造的問題が再現されています。補助金による高利回りが投機的参入を招き、空押さえが横行し、真に必要な案件の実現が妨げられる――FITバブルで学んだはずの教訓が、わずか数年で忘れ去られているのです。
出力制御問題の解決には系統用蓄電池が不可欠です。新潟県営メガソーラーのように、最も稼げる4〜5月に出力制御で売電停止となる問題を解決するには、春季の余剰電力を蓄電し、需要が高い時期や出力制御がない時期に放電する仕組みが必要です。
しかし、土地転売目的のブローカーが「投資利回り15〜20%」を狙って参入する現状は、本来必要な場所に蓄電池が設置されないという本末転倒を招きます。技術の健全な普及が阻害されるリスクがあるのです。
データセンター等の大規模需要も系統逼迫の一因
系統容量の逼迫は、蓄電池だけの問題ではありません。AI需要の高まりに伴い、データセンター(DC)や半導体工場等の大規模な電力需要施設の建設計画が急増しており、一般送配電事業者各社に対する特別高圧需要の接続供給契約申込容量(2025年9月末時点)は、全国で約1,992万kWに上ります。
特に九州エリアの申込容量495万kWは、同エリアの2024年度最大需要電力1,703万kWの約29%に相当する規模です。データセンター等の需要家も不確定要素が多い段階で契約申込を行うため、系統容量の「空押さえ」が発生しています。
資源エネルギー庁では、受電地点等の供給条件が整った状態での契約申込を促す仕組みについて、検討を進める予定としています。系統容量の有効活用は、蓄電池だけでなく、電力システム全体の課題となっているのです。
再エネ事業者に求められる冷静な判断
系統用蓄電池の開発バブルは、再エネ事業者として慎重に見極めるべき状況です。
適法性・実現可能性の厳格な確認
2026年1月から土地取得書類や使用権原を証する書類の提出が要件化されるため、案件の適法性と実現可能性を設計段階から厳格に確認する必要があります。
防災公園や建設中の土地など、事実上蓄電事業が不可能な土地での案件は避けるべきです。
技術的制約の正確な把握
蓄電池コンテナ搬入のための道路幅、地盤強度、送電線までの距離、冷却条件など、太陽光とは異なる物理的制約を正確に把握し、実現可能性を判断する必要があります。
現地調査を徹底し、搬入経路や設置条件を確認することが不可欠です。
出力制御対策としての戦略的設置
出力制御が深刻化している地域では、発電所に併設する形で蓄電池を設置することで、出力制御リスクを低減できます。
ブローカー主導の投機的案件ではなく、発電事業者のニーズに基づく戦略的設置を提案すべきです。
規制強化後の市場機会
2026年1月以降、土地取得要件化により投機的案件が淘汰された後、真に必要な蓄電池案件への需要が顕在化する可能性があります。健全な案件に絞って対応できる体制を整えることが重要です。
バブルに踊らされず、本当に必要な場所に適切な技術を提供することが、長期的な事業の持続性につながります。
「暴走した市場」を防ぐための規律強化
系統用蓄電池の開発バブルは、かつての太陽光バブルと同じ構造的問題を抱えています。
国の補助金を背景に「投資利回り15〜20%」を狙った投機的参入が急増し、接続検討15,000件に対し接続済111件という異常な乖離が生じています。99%以上の案件が「系統容量を押さえているだけ」の状態であり、真に必要な蓄電池や再エネ電源の接続を妨げています。
資源エネルギー庁が2026年1月から土地取得要件化、使用権原取得の義務化などの規律強化に乗り出したのは、「暴走した市場」を防ぐための試みです。しかし、土地と系統接続権利をセットで売却する新ビジネスモデルも出現しており、保証金の引き上げや系統容量開放ルールの強化など、さらなる対策が必要とされています。
再エネ事業者として、適法性・実現可能性の厳格確認、技術的制約の正確な把握、投機的案件との差別化、規制強化後の健全な市場機会への対応など、冷静な判断が求められます。
出力制御問題の解決には系統用蓄電池が不可欠です。しかし、投機的参入による「暴走した市場」は、本来必要な場所に蓄電池が設置されないという本末転倒を招きます。
FITバブルの教訓を活かし、技術の健全な普及を促す制度設計と、事業者の自律的な判断が、真に持続可能なエネルギーシステムの構築につながります。
