みなさん、こんにちは!

今日は、出光興産が徳島県小松島市で稼働開始した、太陽光パネルの角度を自動制御する国内最大級の営農型太陽光発電所について共有します。

出光興産は2026年2月、徳島県小松島市の水田2.8haに、太陽の動きに合わせてパネル角度を自動制御する国内最大級の営農型太陽光発電所(設備容量1,998kW)の稼働を開始しました。

クリーンエナジージャパンが開発した可動式架台と両面受光型パネルを組み合わせたシステムを採用し、水稲の生育期(4~8月)はパネル下の水稲への日射を優先して収量・品質を維持しつつ、両面モジュールの裏面受光で発電量低下を補い、非生育期はパネルへの日射を優先して通年で高い発電量を確保します。

従来の固定式営農型では「農業と発電のトレードオフ」という構造的課題がありましたが、可動式により時期に応じた動的最適化が可能になり、「農業も発電も両方とも高いレベルで維持する」という従来困難だった両立を実現しています。

出光は国内農地約440万ha(うち水田約240万ha)に着目し、農地の約5%活用で現在稼働中の太陽光発電の約2倍に相当する設備容量の導入が可能と試算しています。

「可動式架台+両面受光」が解決する営農型の構造的課題

営農型太陽光発電における最大の課題に対して、出光興産の発電所は技術的な解決策を提示しています。

従来の営農型太陽光発電では、パネルによって日光が遮られることで、作物の収量や品質が低下するという構造的な問題がありました。特に固定式の設備では、発電量を優先すれば農作物への日射が不足し、農業を優先すれば発電効率が落ちるというトレードオフが避けられませんでした。

この「どちらかを取ればどちらかが犠牲になる」という構造的課題こそが、営農型太陽光発電の本格的な普及を阻む大きな要因となっていました。

出光の技術的解決策

発電所の概要

  • 農地面積:2.8ha(280m×100m)
  • 栽培作物:水稲
  • 設備容量:1,998kW
  • 年間発電量:約250万kWh(一般家庭約700世帯の1年分に相当)

採用システム

  • 株式会社クリーンエナジージャパンが開発
  • 可動式架台と両面受光型パネルを組み合わせたシステム
  • 可動式架台と両面受光型の太陽光パネルを組み合わせた営農型太陽光発電としては
    国内最大級(2026年2月時点)
  • 太陽の動きに合わせてパネル角度を自動制御

水稲生育期(主に4~8月)

  • パネル下の水稲への日射を優先
  • 収量・品質の維持に必要な環境を確保
  • 両面モジュールの裏面受光も活用して発電量の低下分を補う

非生育期

  • パネルへの日射を優先する運用に切り替え、通年で高い発電量を確保

この仕組みにより、時期に応じた動的最適化が実現されます。

「動的最適化」の意義

従来:静的なトレードオフ

  • 固定式では、年間を通じて同じ角度
  • 農業か発電か、どちらかを優先

出光:動的最適化

  • 時期に応じて最適な角度に変更
  • 生育期は農業優先、非生育期は発電優先
  • 農業も発電も両方とも高いレベルで維持する

両面受光の補完効果

  • 生育期にパネルを水稲優先の角度にした際の発電量低下を裏面受光で補完
  • これにより、農業を優先しても発電量の大幅な低下を回避

この技術的工夫により、従来は困難だった両立が実現されています。

作業性・安全性の維持

架台の設計

  • 架台の高さは3.8m
  • トラクターなどの農機具が問題なく使用できる作業空間を維持

メリット

  • 作業性・安全性を損なうことなく農業を継続できる
  • 営農継続の実務的な要件を満たす

実証済みの信頼性

  • 千葉県の実証設備で米の収量や品質に問題がないことを確認
  • 監視カメラや全地球測位システム(GPS)も整備

この「実証済み」という事実が、農業従事者の懸念を軽減します。

「農地の5%活用」が示す営農型の巨大なポテンシャル

出光が示した試算は、営農型太陽光発電の潜在的な規模感を明確に示しています。

2040年度に向けた太陽光発電の課題

第7次エネルギー基本計画

  • 2040年度の電源構成における再生可能エネルギー比率を4~5割程度
  • そのうち太陽光発電は23~29%程度を占める主力電源と位置付け

必要な設置面積

  • この実現には、現状の2~3倍にあたる15~20万haの太陽光発電設置面積が必要

しかし課題

  • 大規模な太陽光発電所を新設できる適地は減少している

この「適地不足」という課題に対し、出光は営農型で答えを示しています。

国内農地の膨大なポテンシャル

出光の着目

  • 国内約440万haの農地(うち約240万haが水田)
  • 農地の上部空間を活用する営農型太陽光発電に着目

試算の結果

  • 農地の約5%を活用できれば、日本国内で現在稼働している太陽光発電の設備容量の
    約2倍に相当する発電設備の導入が可能

この数字の意味

  • 15~20万haの設置面積が必要
  • 農地440万haの5%は22万ha
  • 必要量を十分にカバーできる規模

さらなる意義

  • 再エネ拡大とともに国産エネルギーの確保によるエネルギー安全保障の強化にも貢献

この試算は、営農型が「ニッチ市場」ではなく「主力市場」になり得ることを示しています。

BCP時の重要な機能

従来の発想では、太陽光発電の導入にあたり「新たな適地を探す」ことが前提とされてきました。しかし、平地や遊休地といった好条件の用地は年々減少しており、適地不足が顕在化しています。

これに対して営農型の発想は、「新たな適地」を探すのではなく、既存の農地の上部空間という、これまで十分に活用されてこなかった膨大な空間に着目するものです。つまり、土地利用を水平方向に広げるのではなく、垂直方向へ拡張するという考え方です。

この発想の転換こそが、適地不足という課題を根本から解決する可能性を秘めています。

「発電収益の地代還元」モデルが実現する農業経営の持続性

出光の営農型太陽光発電所は、単なる技術的解決策ではなく、農業と地域社会の課題解決という社会的価値を持っています。

出光の事業モデル

ビジネスモデルの構造

  • 営農者:農地貸与、営農
  • 出光興産:営農者へ地代、発電設備設置、電力需要家へ再エネ電力供給
  • 電力需要家:出光興産へ電力料金

地代還元の仕組み

  • 発電事業で得た収益の一部を地代として営農者に還元
  • 営農者の安定収入の確保と農業経営の持続性向上に貢献

売電先

  • 電力は同社グループの企業などに売電
  • コーポレートPPAのような位置づけ

農業と地域社会の課題解決

現在、農業と地域社会は、高齢化や後継者不足、さらには荒廃農地の増加といった深刻な課題に直面しています。これらは単なる農業経営の問題にとどまらず、地域コミュニティの持続性そのものに関わる構造的な課題です。

こうした状況に対し、出光興産が示すモデルは、多面的な貢献可能性を持っています。

出光モデルの貢献

  • 地代収入により、営農者の安定収入確保
  • 農業経営の持続性向上
  • 高齢化や後継者不足への対応
  • 荒廃農地の活用

実際にコシヒカリを栽培する地元農家の男性は、「最近は高温障害も発生しており、少し陰ができることで、障害も防げるのではないか」と語っています。この声は、営農型太陽光が単なる発電設備ではなく、農業のリスク軽減や品質向上にも寄与し得ることを示しており、その複合的な価値を象徴しています。

高温障害対策としての可能性

出光興産の計画では、将来的にパネルによる適度な遮光がもたらす温度緩和効果を積極的に活用し、近年増加している水稲の高温障害に対する有効性も検証していく方針が示されています。

この方向性は、先日共有された千葉大学の研究結果とも符合します。同研究では、パネル下で栽培された水稲は日中の水温が約2℃低下する「日傘効果」が確認されており、営農型太陽光が作物環境に与える具体的な影響が示されています。

ここから見えてくるのは、「発電」「農業の継続」「気候変動への適応策」という三位一体の価値です。単に電力を生み出すだけでなく、農業経営を支え、さらに高温化という外部リスクへの対応策にもなり得る可能性があります。

気候変動による高温化が進む中で、営農型太陽光は単なる発電設備にとどまらず、気候変動適応インフラとしての価値を持ち得ます。これは、営農型の社会的意義を大きく高める重要な要素だと言えるでしょう。

出光の今後の展開戦略──協業スキームの構築・拡充

出光興産は、この徳島の発電所を起点として、営農型太陽光発電の普及・拡大を本格的に進めようとしています。

今後の方針としては、営農者や農業法人に加え、共同事業としての展開を検討できる自治体・企業・各種団体などと、新たな協業の可能性を広く模索していく考えです。単独事業として完結させるのではなく、地域やパートナーと連携する形での展開を視野に入れている点が特徴です。

そのために、協業スキームの構築および拡充を進めながら、持続可能な事業モデルとして営農型太陽光発電の横展開を図っていく方針です。こうした連携型モデルは、地域実装を加速させる鍵となるでしょう。

この「協業」重視の姿勢は、営農型が単独では成立しにくい事業であることを示しています。

地域共生型モデルの重要性

地域共生型モデルの重要性は、今回の記事サブタイトルにも端的に表れています。「地域共生型モデルで、カーボンニュートラルと持続可能な農業への貢献を同時に実現」という言葉は、単なる発電事業ではなく、地域社会との調和を前提とした取り組みであることを示しています。

事業の方向性としても、「地域と共生した本事業の普及・拡大を図る」と明確に掲げられています。これは、収益性や発電量だけでなく、地域農業の持続性、住民の理解、雇用や土地活用といった観点を含めた包括的な価値創出を目指す姿勢を意味します。

営農型太陽光は、農地という地域資源の上に成り立つ事業です。だからこそ、「地域共生」という視点を欠いたままでは継続的な発展は望めません。

技術の標準化と横展開

可動式架台と両面受光パネルの組み合わせは、国内最大級の規模で実現されました。この技術パッケージは、発電効率と農業配慮を両立させるモデルとして整理されつつあり、今後は他地域への横展開が期待されます。標準化が進めば、設計・施工・許認可対応の効率化にもつながります。

また、千葉県での実証に加え、徳島県での本格稼働というステップを踏むことで、営農環境や発電実績に関するデータが着実に蓄積されています。実証データの積み重ねは、金融機関や自治体、営農者に対する説明力を高め、事業の信頼性を強化します。

EPC事業者としての4つの戦略的対応

出光の営農型太陽光発電所は、EPC事業者にとって技術的・事業的な重要な示唆を提供しています。

01

可動式架台+両面受光パネルの技術検証と導入検討

この技術導入により、営農型の適用範囲を大きく広げることができます。

従来の限界

  • 固定式営農型では作物選択の制約や収量低下が課題

技術的解決

  • 可動式架台+両面受光パネルにより時期に応じた動的最適化が可能
  • 農業も発電も両方とも高いレベルで維持

提案内容

  • 固定式と可動式の比較
  • 発電量と農業収量の両立シミュレーション
  • 初期投資の差と長期的なメリット

ターゲット

  • 水田地帯(特に東北・北関東・北陸)
  • 後継者不足に悩む農業従事者
  • 耕作放棄地の活用を検討する自治体
02

「発電収益の地代還元」モデルの標準化

この経済モデルの明示により、地権者の意思決定を促進できます。

出光のビジネスモデル

  • 発電事業で得た収益の一部を地代として営農者に還元
  • 営農者の安定収入確保と農業経営の持続性向上

訴求ポイント

  • 高齢化や後継者不足に悩む農業従事者にとって、安定収入は大きな訴求ポイント
  • 農業を続けながら、追加収入を得られる
03

「農地の5%活用」を前提とした地域開拓戦略

この地域開拓戦略により、営農型の面的展開を実現できます。

出光の試算

  • 農地の約5%活用で現在稼働中の太陽光発電の約2倍の設備容量が導入可能

市場の大きさ

  • 営農型が「ニッチ市場」ではなく「主力市場」になり得ることを示す

公益性の訴求

  • 地域脱炭素や農業経営支援という公益性
  • 自治体の支援を得やすくなる
  • 補助金や制度支援の活用

ターゲット地域

  • 耕作放棄地が多い地域
  • 農業従事者の高齢化が進む地域
  • 水田地帯
  • 自治体が脱炭素に積極的な地域
04

高温障害対策としての営農型の価値訴求

この価値訴求により、農業従事者だけでなく地域社会全体の支持を得られる可能性があります。

出光の計画

  • 将来的にパネル遮光による温度緩和効果を活用
  • 水稲の高温障害対策の有効性を検証

千葉大学研究との整合性

  • パネル下の水稲は日中水温が2℃下がる日傘効果
  • 出光の計画と符合

三位一体の価値訴求

  • 発電 + 農業継続 + 気候変動適応策

ターゲット

  • 高温障害が顕在化している地域
  • 夏季の高温化が進む地域
  • 気候変動リスクを懸念する農業従事者

出光興産が徳島県小松島市で稼働開始した営農型太陽光発電所は、可動式架台+両面受光パネルにより時期に応じた動的最適化を実現し、「農業も発電も両方とも高いレベルで維持する」という従来困難だった両立を可能にしています。

水稲生育期(4~8月)はパネル下の水稲への日射を優先して収量・品質を維持しつつ、両面モジュールの裏面受光で発電量低下を補い、非生育期はパネルへの日射を優先して通年で高い発電量を確保します。架台高さ3.8mでトラクター等農機具の使用に支障なく、千葉県の実証設備で米の収量・品質に問題がないことを確認済みです。

出光は国内農地約440万ha(うち水田約240万ha)の約5%活用で現在稼働中の太陽光発電の約2倍に相当する設備容量の導入が可能と試算し、営農型が「ニッチ市場」ではなく「主力市場」になり得ることを示しています。

発電収益の一部を地代として営農者に還元することで、安定収入確保と農業経営の持続性向上に貢献し、高齢化・後継者不足・荒廃農地増加という課題解決を後押しします。将来的にはパネル遮光による温度緩和効果を活用した水稲の高温障害対策の有効性も検証予定で、「発電+農業継続+気候変動適応策」という三位一体の価値を持ち得ます。