みなさん、こんにちは!
今日は、営農型太陽光発電における「作物選定の科学的知見」について、千葉大学の研究グループによる実地調査結果を共有します。
千葉大学の研究グループが、営農型太陽光発電下での水稲・大豆・サツマイモの生産性を実地調査し、2026年2月に学術誌npj Sustainable Agricultureで発表しました。調査では、パネルの遮光率が27~49%の条件下で各作物の収量変化を測定した結果、水稲は5%減(統計的有意差なし)、大豆は31%減、サツマイモは40%減という結果が出ました。
しかし最も重要な発見は、サツマイモの「あまはづき」はパネル下でも収量低下が見られず、「安納いも」は大幅減収という、品種による遮光耐性の違いです。これは、「どの作物を選ぶか」から「どの品種を選ぶか」へと設計精度を高める必要性を示しています。
さらに、水稲では猛暑年に日中水温が2℃下がる「日傘効果」が確認され、気候変動対応としての営農型の新たな価値が浮き彫りになりました。
千葉大学の研究が明らかにした「品種による遮光耐性の違い」
千葉大学大学院の研究グループは、千葉県の複数の農業法人の協力のもと、2023~2024年に水稲(もち米)、大豆、サツマイモを対象に、太陽光パネル下とパネル外での生育の違いを調査しました。
研究の背景と意義
これまでの課題
- 営農型太陽光発電は土地利用効率が高く、農家の収益向上につながるとして注目
- しかし「どの作物・どの品種を、どのように栽培すれば、パネルの下でも収量が維持できるのか」という具体的な知見が不足
- 特に、日本の農地の大部分を占めるコメ・ダイズ・イモ類を対象にした研究は少なく、作物の種類や品種、栽培方法による違いを比較する研究はなかった
研究の規模
- 2022年度までに日本で累計約5,351件の営農型太陽光設備の農地一時転用許可
- 設備下部農地面積は約1,209haに達する
- 農地の有効活用と再エネ導入の広がりを示している
この研究は、営農型太陽光発電における作物・品種選定を科学的根拠に基づいて行うための初めての体系的な検証です。
作物による収量変化の違い
水稲(もち米)
- 遮光率:パネルが面積の27%を覆う
- 収量変化:5%減少(統計上有意な差はなし)
- 特徴:「一株当たりの穂の数」は減るが、「一穂あたりの籾の数」と「玄米の重量」は増加
- 日中の最高水温が平均で約2℃下がり、2024年の猛暑の悪影響が緩和された可能性
大豆
- 遮光率:パネルが33%を覆う
- 収量変化:31%減少
サツマイモ
- 遮光率:パネルが31%を覆る場合は40%減少、49%を覆る場合はさらに大幅減少
- ただし、調査した農地は地域平均より生育が良好だったため、3割程度の遮光では農地転用許可の「地域の平均的な収量と比較しておおむね2割減収しない」という要件を満たした
この結果は、作物によって遮光への耐性が大きく異なることを明確に示しています。
研究で最も重要な発見は、同じサツマイモでも品種によって遮光耐性が全く異なるという点です。
品種による決定的な違い
パネルが約40%を覆る畑で栽培した有機栽培サツマイモの結果
- 「安納いも」:大きく減収
- 「あまはづき」:パネルの下でも収量を維持(統計的有意差なし)
研究グループの結論
- このことは、適切な品種を選べば発電と食料生産を高いレベルで両立可能であることを
示唆しています
一方で判明したこと
- 除草のタイミング、有機肥料の有無は、パネル下のサツマイモ収量に影響しなかった
この発見は、営農型太陽光発電の設計において、品種選定が決定的に重要であることを科学的に証明しています。
水稲の「意外な強さ」と気候変動対応の可能性
水稲の結果は、営農型太陽光発電の新たな価値を示唆しています。
猛暑年における「日傘効果」
観測された現象
- パネル下の水稲は「一株当たりの穂の数」は減る
- しかし、生育後期に形成される「一穂あたりの籾の数」と「玄米の重量」は増加
- これは、生育後期の夏の環境が水稲にとって良かったことを示唆
気象データの分析結果
- 日中の最高水温は平均で約2℃下がっていた
- 2024年の猛暑の悪影響が、パネルが「日傘」となることで緩和された可能性
気候変動対応としての営農型
この発見の意味
- 遮光が必ずしもマイナスではない
- 気候変動が進む中で、営農型が水稲生産のリスクヘッジ手段として機能する可能性
今後の展望
- 夏季高温化が進む東北・北関東エリアで、営農型が「発電+農業継続+高温対策」を同時実現
- 高温障害対策として営農型の「日傘効果」を訴求できる可能性
研究グループも指摘するように、「作物収量は地域や年度によって大きく変動するため、営農型太陽光発電に適した栽培体系を確立するためには、より多地域・長期で検証を続ける必要があります」が、この初期的な知見は営農型の新たな価値軸を示しています。
「どの作物を選ぶか」から「どの品種を選ぶか」へ
今回の研究で最も重要なのは、同じサツマイモでも品種によって遮光耐性が全く異なるという点です。
従来の営農型設計の限界
これまでの判断基準
- 「水稲」「大豆」「イモ類」といった作物カテゴリーでの判断が中心
- 「イモ類なら営農型でも大丈夫」という大雑把な設計
この限界
- 同じイモ類でも、「あまはづき」は収量維持、「安納いも」は大幅減収
- 作物カテゴリーだけでは、実際の営農継続性を保証できない
品種レベルでの適性評価の必要性
農地転用許可の要件
- 地域の平均的な収量と比較しておおむね2割減収しない
- この要件をクリアするには、単に「イモ類ならOK」ではなく、
「この品種なら遮光率○%まで対応可」という具体的なデータが必要
設計精度の向上
- 品種レベルでの適性評価が、設計段階で求められる
- 遮光率に応じた収量変化を定量的に予測できることが、事業リスクの低減につながる
地権者・農業従事者との協議
- 「この品種なら○%の遮光でも収量維持が期待できる」という科学的根拠
- 信頼構築に大きく寄与
品種データベース構築の重要性
今後必要な取り組み
- 遮光率別・品種別の収量データベース構築
- 地域特性(気候、土壌)に応じた品種適性の評価
- 多地域・長期での検証データの蓄積
EPC事業者の役割
- 実際に稼働している営農型案件の収量データを蓄積
- 地域特性に応じた最適な作物・品種の提案ノウハウを構築
- 設計段階から農学的知見を取り込む体制
品種データベースの構築は、営農型太陽光発電の設計精度を飛躍的に向上させる鍵となります。
EPC事業者としての3つの戦略的対応
千葉大学の研究成果は、EPC事業者の営農型太陽光発電事業に具体的な行動指針を提示します。
品種データベースの構築と提案精度の向上
品種レベルの提案精度は、営農型案件の成否を分ける決定的な要素となります。
科学的根拠に基づく提案
- 千葉大学の研究のような科学的データを活用
- 遮光率別・品種別の収量変化を定量的に提示
- 「この品種なら遮光率○%でも収量維持が期待できる」という具体的な提案
農地転用許可の確実性向上
- 「地域平均比2割減収以内」という要件をクリアするための品種選定
- 事前に品種適性を見極めた上でパネル配置・遮光率を設計
- 事業認可リスクの低減
地権者・農業従事者との信頼構築
- 「なんとなくイモ類なら大丈夫」ではなく、科学的根拠を示す
- 農業試験場、大学農学部、JA営農指導員との連携
- 専門性の高い提案による差別化
具体的な体制
- 臼杵市のショウガ事例(日陰を好む作物)、千葉大学のサツマイモ品種データなど、
既存の科学的知見を統合 - 地域ごとの気候・土壌データと組み合わせたデータベース構築
- 実地調査データの継続的な蓄積
気候変動対応としての営農型の価値訴求
気候変動対応という新たな価値軸は、営農型太陽光発電の社会的意義を高めるものです。
水稲の「日傘効果」の活用
- 猛暑年に日中水温が2℃下がる
- 生育後期の環境改善により、「一穂あたりの籾の数」と「玄米の重量」が増加
- 高温障害対策としての営農型という新たな価値軸
ターゲット地域
- 東北・北関東エリアなど、夏季高温化が進む水稲生産地
- 気候変動による高温リスクを抱える地域
提案内容
- 「発電+農業継続+高温対策」の三位一体
- 気候変動リスクヘッジとしての営農型
- 将来的な高温化を見据えた長期的な農業継続性の確保
地域農業関係者との連携
- JA、農業委員会、農業試験場などと協議
- 水稲生産における営農型の「日傘効果」の価値を共有
- 気候変動対応という観点からの営農型推進
長期的な収量データの蓄積体制と地域適応
長期的なデータ蓄積は、営農型太陽光発電における真の専門性を構築する基盤となります。
研究グループの指摘
- 作物収量は地域や年度によって大きく変動するため、
営農型太陽光発電に適した栽培体系を確立するためには、
より多地域・長期で検証を続ける必要があります
EPC事業者の取り組み
- 実際に稼働している営農型案件の収量データを体系的に蓄積
- 年度変動、気象条件との相関分析
- 地域特性(気候、土壌、標高など)に応じた適性評価
データ蓄積の方法
- 農業従事者との協力関係構築
- 定期的な収量調査の実施
- 気象データとの統合分析
活用方法
- 新規案件での品種選定精度向上
- 遮光率設計の最適化
- 地域ごとのベストプラクティス確立
競争優位性の構築
- 独自の収量データベースを持つことで、他社との差別化
- 「この地域・この条件なら、この品種がベスト」という具体的な提案
- 科学的根拠に基づく設計ノウハウ
営農型太陽光発電の「科学的設計」時代へ
千葉大学の研究は、営農型太陽光発電が「経験則」から「科学的設計」へと進化する転換点を示しています。
従来の営農型設計
経験則に基づく設計
- 「水稲なら大丈夫」「イモ類なら問題ない」
- 遮光率は「とりあえず30%以下」
- 品種は「地域で一般的なもの」
この限界
- 実際には品種によって遮光耐性が大きく異なる
- 地域や年度による変動を予測できない
- 農地転用許可の要件を満たせないリスク
科学的設計への転換
品種レベルでの適性評価
- 遮光率別・品種別の収量データに基づく設計
- 「あまはづき」のように遮光耐性の高い品種の選定
- 農地転用許可要件の確実なクリア
気候変動への適応
- 水稲の「日傘効果」など、新たな価値の発見
- 高温障害対策としての営農型
- 将来的な気候変動を見据えた設計
長期的な検証
- 多地域・長期での収量データ蓄積
- 地域特性に応じた最適化
- 継続的な改善サイクル
EPC事業者に求められる変化
従来の役割
- 太陽光パネルの設置
- 発電効率の最大化
新しい役割
- 農学的知見を取り込んだ設計
- 品種選定から栽培方法まで提案
- 農業と発電の真の両立を実現する専門家
必要な体制
- 農業試験場、大学農学部との連携
- JA営農指導員との協力関係
- 実地調査データの蓄積システム
競争優位性
- 科学的根拠に基づく提案力
- 地域特性に応じた最適化ノウハウ
- 長期的な農業継続性の保証
営農型太陽光発電は、発電事業者の片手間ではなく、農学と工学の融合が求められる専門分野へと進化しています。
千葉大学の研究が示したのは、「どの品種を選ぶか」が営農型太陽光発電の成否を分けるという明確な事実です。
水稲は遮光率27%でも収量がほぼ維持され、猛暑年には「日傘効果」が確認されました。一方、サツマイモでは「あまはづき」は収量維持、「安納いも」は大幅減収と、品種による遮光耐性の違いが決定的です。
EPC事業者にとって、これは品種データベースの構築、気候変動対応としての価値訴求、長期的な収量データ蓄積という3つの戦略的対応を求めています。
営農型太陽光発電は、「経験則」から「科学的設計」へと進化し、農学と工学の融合が求められる専門分野となっています。臼杵市のショウガ事例が示した「作物特性に基づく設計」に加えて、今回の研究は「品種レベルでの精密設計」の重要性を科学的に証明しました。
