みなさん、こんにちは!
今日は、UPDATERとDOWAグループが福島県大熊町で開始した「リユース太陽光パネルの発電試験」について共有します。
2027年度から野立て太陽光への支援が廃止される中、使用済み太陽光パネルの大量廃棄問題が浮上しています。本来は発電可能な状態にもかかわらず撤去されたパネルを再利用する循環モデルの構築は、資源の有効活用と廃棄物削減の両面から極めて重要です。
UPDATERとDOWAグループが福島県で開始した発電試験は、回収・検査・選別・再利用・設置までを一体化した循環モデルの実証であり、再エネが「つくる」から「循環させる」へとシフトする転換点を示しています。
福島県大熊町で始まるリユースパネルの発電試験
UPDATERはDOWAエコシステム株式会社および同社子会社の株式会社相双スマートエコカンパニーと協力し、福島県大熊町において、使用済み太陽光パネルを再利用した「リユースPV発電事業」に向けた発電試験において、リユース太陽光パネルと全般的なプロジェクト管理サービスを提供しました。
UPDATERはこれまで、リユースパネルのみを使用した都市型発電所「じりじりリユース発電所(東京・世田谷)」や、日本で使用された太陽光パネルをタンザニアで活用し、現地産業の支援と地域経済の自立を目指す「Pole Solar」事業など、リユース太陽光パネルを活用した取り組みを積極的に展開してきました。
今回、福島県において2018年より金属リサイクルや太陽光パネルリサイクル事業を展開する相双スマートエコカンパニーが掲げる「福島県復興」に向けた県内リサイクルシステム推進の方針に共感し、UPDATERが持つ調達網を通じて、発電試験で使用するリユース太陽光パネルの一部を調達し、提供しました。
興味深いのは、太陽光パネルの一部が、大和ハウス工業が協賛した大阪・関西万博のシャトルバスターミナルで使用されたもので、会期終了後にDOWAエコシステムが撤去・運搬し活用している点です。イベント等で一時的に使用された設備を循環させる新しいモデルとして注目されます。
本来発電可能なパネルが廃棄される構造的課題
再生可能エネルギーの普及が進む一方で、使用済み太陽光パネルの取り扱いは、新たな社会課題として注目されています。
近年、施設の退去や建物用途の変更などに伴い、本来は発電可能な状態を維持しているにもかかわらず、撤去された太陽光パネルが、再利用の機会が十分に確保されないまま廃棄されてしまっています。
こうした課題の背景には、以下のような問題が存在します。
問題1:撤去現場での選別体制の不備
撤去現場での個別診断・選別体制が不十分で、稼働可能なパネルも一括処分されやすい状況があります。
撤去作業の現場では、パネル一枚一枚を検査して発電能力を確認する体制が整っておらず、まとめて産業廃棄物として処理されることが多いのです。
問題2:流通基盤と品質基準の未整備
リユースパネルの流通基盤や品質基準、保管体制が整備途上で、再利用の実態把握やトレーサビリティが確保しづらい状況です。
「リユースパネルは信頼性が低い」という認識が市場に定着してしまい、たとえ発電能力があるパネルでも買い手がつかない悪循環に陥っています。
問題3:制度整備の遅れ
再エネ政策が「新設・導入」を中心に設計されてきた結果、設備の再活用(リユース)に関する制度整備が遅れています。
FIT制度やFIP制度は新規導入を促進する設計になっており、既存設備のリユースや循環利用を促す仕組みが不足しているのです。
太陽光パネルの大量廃棄や不法投棄の懸念が高まる中、3R(Reduce・Reuse・Recycle)を徹底し、資源を最大限に生かし切る循環型の設計思想がこれまで以上に重要です。
2027年支援廃止が加速させる大量廃棄リスク
2027年度から野立て太陽光への支援が廃止されることで、既設発電所の事業継続が困難になるケースが増加する可能性があります。
特にFIT初期(2012〜2015年)の高額買取価格で稼働した発電所は、買取期間終了後の事業性が大きく低下します。FIT価格40円/kWhで採算を見込んでいた事業が、買取期間終了後は市場価格での売電となるため、設備を撤去して土地を他用途に転換する選択が増えるでしょう。
現在、「撤去現場での個別診断・選別体制が不十分で、稼働可能なパネルも一括処分されやすい」現状では、大量のリユース可能なパネルが廃棄される懸念があります。
10年以上稼働している発電所も多くありますが、パネルの残存寿命は十分にあるケースが大半です。太陽光パネルは通常20〜30年の耐用年数があり、10〜15年使用したパネルでもまだ10年以上は発電可能なのです。
リユースパネルの循環モデル構築は、廃棄物削減と資源有効活用の両面から急務となっています。
「準国産エネルギー資源」としてのリユースパネル
特に、リユースパネルの活用には、廃棄物の不正輸出や資源の国外流出を防ぐ効果も期待されており、「準国産」のエネルギー資源として、国内外で賢く循環させていく意義があります。
日本は太陽光パネルの多くを輸入に依存しており、地政学的リスクへの対応という観点からも、国内で一度使用されたパネルを循環させることは戦略的価値があります。新品パネルを輸入するよりも、既に国内にあるリユースパネルを活用する方が、エネルギー安全保障の面でも優れています。
UPDATERが展開する「Pole Solar」事業では、日本のパネルをタンザニアで活用し、現地産業の支援と地域経済の自立を目指しています。この取り組みは、日本発の国際循環モデルとして、リユースパネルの価値を最大化する試みです。
福島での展開が持つ象徴的意味
福島県大熊町でリユースパネル発電試験を開始したことは、象徴的な意味を持ちます。
福島は東日本大震災と原発事故以降、再エネ導入を積極的に進めてきた地域です。二本松営農ソーラーのように「原発に依存しないエネルギー」を追求してきた歴史があり、エネルギーの地産地消という理念を実践してきました。
相双スマートエコカンパニーが「福島県復興」に向けた県内リサイクルシステム推進を掲げる中、リユースパネルの循環モデルは「新しいエネルギーの作り方」だけでなく「持続可能な使い方・循環のさせ方」まで含めた包括的なエネルギーシステムの構築を示しています。
DOWAグループは2018年より福島県で金属リサイクルや太陽光パネルリサイクル事業を展開しており、金属リサイクル技術や環境保全の専門知識を基盤に、廃棄物の適正処理から再資源化、環境修復までをワンストップで支援する総合環境ソリューション企業です。こうした専門技術を持つ企業が福島でリユースモデルを実証することで、全国展開への基盤が整います。
回収から設置までを一体化した循環モデル
UPDATERは本取り組みを皮切りに、回収・検査・選別・再利用・設置までを一体化したリユースパネルの循環モデルを、全国の自治体・企業との連携を通じて展開していきます。
この一体化モデルの重要性は、各プロセスが断絶していた従来の問題を解決する点にあります。
従来の問題
- 撤去業者は廃棄処理だけを担当し、リユース可能性を検討しない
- 検査・選別する専門事業者が少なく、体制が整っていない
- リユースパネルの流通市場が未成熟で、買い手と売り手がつながらない
- 品質保証やトレーサビリティが不明確で、購入者が不安を感じる
一体化モデルの解決策
- 回収時点でリユース可能性を評価
- 専門的な検査・選別により品質を担保
- 流通プラットフォームで需給をマッチング
- 設置までをワンストップで提供し、トレーサビリティを確保
さらに、国内でのリユース市場形成と品質基準整備を推進するとともに、アフリカ・タンザニアの未電化地域に太陽光発電を導入する事業「Pole Solar」との連携により、日本発の国際循環モデルの確立も目指しています。
再エネ事業者にとっての新しい事業機会
リユースパネルの循環モデルは、再エネ事業者にとって新しい事業機会を示唆しています。
撤去案件でのリユースパネル選別・買取サービス
2027年度以降、野立て太陽光の撤去案件が増加する中、単なる廃棄処理ではなく「稼働可能なパネルを選別してリユース市場に供給する」サービスを提供できれば、撤去費用の低減と資源有効活用を両立できます。
発電所オーナーにとっては廃棄コストの削減になり、社会的にも資源の有効活用につながります。
リユースパネルを活用した低コスト提案
屋根置き市場では初期投資コストが重要な判断要素となるため、新品パネルよりも安価なリユースパネルを適切な品質保証と共に提供できれば、コスト重視の顧客層を開拓できます。
特に、予算制約が厳しい中小企業や、試験的に太陽光発電を導入したい顧客には魅力的な選択肢となります。
流通事業者との連携による分業モデル
UPDATERやDOWAグループのようなリユースパネル流通事業者と連携し、回収・検査・選別までを専門事業者に委託し、設計・施工に専念する分業モデルが効率的です。
それぞれの専門性を活かした役割分担により、サービス品質と効率の両立が可能になります。
品質管理・保証体制の構築による差別化
「リユースパネルは信頼性が低い」という認識を払拭するには、検査基準の明確化、性能保証、トレーサビリティの確保が不可欠です。これらを整備できれば競争優位性となります。
例えば、「発電能力80%以上保証」「5年間の性能保証」「製造履歴・使用履歴の開示」といった具体的な品質基準を示すことで、顧客の不安を解消できます。
地域内循環モデルへの参画
相双スマートエコカンパニーが県内リサイクルシステムを推進する中、福島県内を拠点とする事業者も地域内循環に貢献できる立場にあります。
地域で発生したパネルを地域で循環させることで、輸送コストの削減と地域経済への貢献を両立できます。
再エネが「循環させる」時代へ
リユース太陽光パネルの循環モデルは、再エネが「つくる」から「循環させる」へとシフトする転換点を示しています。
2027年度の野立て支援廃止により、既設発電所の撤去が増加する中、本来は発電可能なパネルが大量廃棄されるリスクが顕在化しています。10年以上稼働したパネルでも、残存寿命は十分にあり、適切な検査・選別を経れば再び発電用途として活用できます。
UPDATERとDOWAグループが福島県で開始した発電試験は、回収・検査・選別・再利用・設置までを一体化した循環モデルの実証であり、「準国産エネルギー資源」として国内外で賢く循環させる新しいエネルギーシステムの構築を目指しています。
再エネ事業者にとって、撤去案件でのリユースパネル選別・買取、低コスト提案、流通事業者との連携、品質管理体制の構築など、リユース循環モデルへの参画が新しい事業機会となります。
特に福島県での取り組みは、原発事故後のエネルギー転換を進めてきた地域において、「持続可能な使い方・循環のさせ方」まで含めた包括的なエネルギーシステムの構築という象徴的意味を持ちます。
再エネの大量導入時代には、新規導入だけでなく、既存設備の有効活用と循環利用が不可欠です。2027年という転換点を前に、リユースパネルの循環モデルが社会に定着するかどうかが、真に持続可能な再エネシステムを構築できるかの試金石となるでしょう。
